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米国農務省、来年のトウモロコシ作付見通しに早くも言及


2007年度のトウモロコシ生産量をわずかに上方修正

 米国農務省(USDA)は10月12日、2007/08年度(2007年9月〜2008年8月)の主要農産物需給予測(月
次)を公表した。これによると、過去最高水準が見込まれるトウモロコシ生産量は、1エーカー当たりの収量
が前月推計値よりわずかに引き下げられたものの(前月比1.1ブッシェル減の154.7ブッシェル)、作付面積が
前月より70万エーカー引き上げられたことにより、133.18億ブッシェル(前月比1,000万ブッシェル増、前年
度比26%増)とわずかに上方修正された。

 また、トウモロコシ需要を見ると、飼料など向けが前月より1.5億ブッシェル下方修正(前年度比2%増の
57億ブッシェル)されたほか、エタノール原料向けが、最近のエタノール価格の下落などによるエタノール工
場の稼働率の低下により、前月に引き続き1億ブッシェル引き下げられた(同51%増の32億ブッシェル)。一
方、輸出向けは、諸外国における穀物供給のひっ迫を理由に、前月より1億ブッシェル引き上げられ(同11%
増の24億ブッシェル)、需要量全体では、126.40億ブッシェル(前月比1.5億ブッシェル減、前年度比13%増)
に下方修正された。
 
  これにより、2008年8月末のトウモロコシ在庫量は、本年8月末の水準を7億ブッシェル上回る19.97億ブ
ッシェルになるものと見込まれている。



主要畜産団体、米議会に対し穀物ベースのRFS引き上げに反対する書簡を送付

 一方、アメリカ食肉協会(AMI)、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)、全国鶏肉協議会(NCC)、
全国食肉協会(NMA)など米国の畜産7団体は10月12日、米上下両院の指導者に対し、上院のエネルギー法
案に盛り込まれたトウモロコシなど穀物由来の再生可能燃料使用基準(RFS)の引き上げに反対する書簡を
送付した。

 これは、本年6月に可決された上院エネルギー法案において、現行のRFSの引き上げが定められる中(現
行の2012年までに年間75億ガロンを、実質的に2015年までに年間150億ガロンへ引き上げ)、原油価格の急騰
などを受け、早ければ年内にも、上下両院で調整された包括エネルギー法案が議論される可能性が出てきたた
めである。
 
  この書簡の中で、畜産団体は、再生可能燃料産業は既に急速な発展を遂げているとして、現行のRFSの引
き上げに強く反対している。また、セルロース系エタノールなどの商業流通の推進を支持するとし、仮に、議
会がRFSを拡大するならば、引き上げ分はすべて非穀物ベースの燃料によってのみ賄われることを明確にす
べきであるとしている。さらに、業界関係者の多くは、最近の記録的高水準の小麦価格により、2008年のトウ
モロコシの作付面積は減少するものと予測しているとし、トウモロコシ供給が、食料・飼料・燃料用向け需要
を十分に満たせない場合には、現行のRFSを一時的に引き下げるべきであるとしている。



来年の主要農作物の作付見通しに例年よりも早いタイミングで言及

 このような中、USDAのコリンズ首席エコノミストは10月17日、米下院農業委員会の公聴会において、2008
年度(2008年9月〜2009年8月)の主要農作物の需給見通しに言及した。USDAは例年、主要農作物の中期
見通しについて、年明けの2月頃に公表しており、今回の公表は極めて異例のタイミングと言える。
 
  この公聴会において、同エコノミストは、2008年のトウモロコシ作付面積は、本年に比べて6〜8%減少(約
8,700万エーカー)する一方、大豆は10%程度(約7,000万エーカー)、小麦は5〜7%(約6,400万エーカー)
それぞれ増加するとの見通しを示している。また、その要因として、@小麦・大豆価格がここ数カ月間、上昇傾
向にあるのに対し、トウモロコシ価格は、2007年度の記録的な生産見込みにより伸び悩んでいること、A作付け
ローテーションが、トウモロコシの連作を避けるため、大豆にとって有利であること、B期限切れを迎えるCR
P(休耕)契約地の多くが、小麦の主要生産州にあること―などを挙げている。
 
  現在、米国では、@本年度におけるトウモロコシの記録的な生産増、Aエタノール生産拡大の減速による需要
の伸び悩み、B需要の減速による在庫量の増加―などが見込まれている状況にあり、本年度のトウモロコシ供給
については、確保されるものとの見通しが主流である。そのような中、今後の作付動向に加え、RFSなどエタ
ノール政策の動向にも注目が集まっている。




【ワシントン駐在員 唐澤 哲也 平成19年10月25日発】



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