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欧州委員会が「EU動物衛生戦略」のアクションプランを採択

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 欧州委員会は9月10日、約1年前に採択された2007年から2013年までの動物衛生に関する中期計画である「EU動物衛生戦略(The EU Animal Health Strategy)」について、項目ごと明記したアクションプランを採択した。
 このアクションプランは、
(1) EUの関与の優先順位付けの再評価(動物疾病のカテゴリー分け)
(2) EUの動物衛生対策の体系の再検討
(3) 予防、サーベイランスおよび危機管理
(4) 科学、改革および研究
の4本の柱から構成されており、その内容は以下のとおりとなっている。
アクションプランの内容

BSE対策の見直しやOIEへのEUとしての加盟を想定

 この中で注目すべき動きとしてまず挙げられるのが、「動物疾病のカテゴリー分け」である。現在の動物疾病の優先順位付けを再評価することで、現在講じられているBSE対策の見直しが進められるのは確実とみられる。近い将来、BSE対策に投入されている財政的・人的資源を見直し、ブルータングや高病原性鳥インフルエンザなどの新興/再興の動物疾病に対する対策に再配分する提案が示されるとみられる。

 また、「EU動物衛生法(法案提出)」の中で、国際獣疫事務局(OIE)やCodex Alimentariusで設定される国際基準との調和を進める一方で、現在のOIEの規則では認められていない「OIEへのEUとしての加盟」を明確に打ち出している点も注目される。現在OIEへの加盟は原則国のみとされ、EUとしての加盟は認められていないが、Codex AlimentariusではEUとしての加盟が認められていることから、同様の対応をOIEに求める模様である。OIEへの加盟に関する規則の改正は「全会一致」が必要であるため、そのハードルは極めて高いと考えられるが、EUのOIEの議論の場での更なる発言力強化を意図したものと考えられる。すなわち、EUとしての意見が十分考慮された国際基準を設定し、国際基準と域内のルールの一致を図るという意志の表われとみることができよう。

 さらに、実現可能性の検討から始めるとされているものの、電子耳標による牛の個体識別の制度化にも言及されている。新たに生ずる費用を誰が負担するのか、2004年5月以降にEUに加盟した新規加盟国においても制度化が可能かどうかといった課題に対処していく必要があるが、近年ブルータングや牛結核病で生体牛の移動による国境を越えた伝播が確認されており、当該制度導入による動物衛生対策の強化という利点と前述の課題とのバランスをどのように図っていくかが注目される。

3年後の2011年に中間レビューを実施

 これらアクションプランの内容については、3年後の2011年に実施される中間レビューで必要に応じて優先順位付けの見直しなどの修正を経て、「EU動物衛生戦略」の終期である2013年まで実施されることとされている。
【前間 聡 平成20年9月18日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:井上)
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