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欧州委、2007/08年度生乳供給量を公表

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超過国は前年度同様、7カ国

 欧州委員会は10月13日、2007/08年度(2007年4月〜2008年3月)のEU27カ国(以下、「EU27」)の生乳供給量の速報値を公表した。これによると、生乳生産割当枠(クオータ)に対する生乳供給量は、7カ国で122万1,957トン超過し、これに伴う課徴金は3億4,007万ユーロ(462億4,952万円:1ユーロ=136円)となる。

 EUでは、生乳市場の需給バランスを保つことを目的としてクオータ制度を導入している。クオータには生産者が乳業者へ出荷する「出荷クオータ」と、生産者が消費者向けに直接販売する「直接クオータ」があり、加盟国はそれぞれ定められたクオータを超過した場合、ペナルティーとして課徴金が課されることとなっている。なお、2007/08年度の課徴金単価は、1トン超過につき278.3ユーロ(約3万8千円)となっている。

出荷クオータ、超過量の約5割がイタリア

 出荷クオータを見ると、EU27のクオータ割当を受けた生産者は約105万人、クオータに対する生乳
供給量は約1億3,963万トンとなり、EU全体ではクオータ合計を約223万5千トン下回る結果となっている。ただし、国別には7カ国(オーストリア、キプロス、アイルランド、イタリア、ドイツ、ルクセンブルク、オランダ)でそれぞれクオータを超過しており、その合計は約121万7千トンとなっている。

 最も超過量が多い国は、クオータ超過の常連となっているイタリアで、超過分の5割を占める約57万7千トンの超過となり、また、超過率は前年度(6.0%)とほぼ同率の5.6%の超過となっている。続いてキプロスが3.9%の超過、オーストリアが3.2%の超過となっており、残りの4カ国についてはそれぞれ1%前後の超過となっている。なお、前年度超過国であったデンマークは全量使用となっている。

 そのほかの加盟国の使用状況を見ると、2007/08年度からクオータ制度を実施したブルガリア、ルーマニアは未使用率がかなり高く、それぞれ14.9%、30.3%となっている。また、エストニア、ギリシャ、ラトビア、リトアニア、ハンガリー、マルタ、スロベニア、スロバキア、フィンランド、スウェーデン、英国の11カ国でも未使用率が5%以上となっている。

 未使用クオータ約345万トンのうち、その2割を占める英国(約76万8千トン)は、前年度の1.6倍と前年度に引き続き未使用分が拡大している。

直接クオータは3カ国が超過

 直接クオータを見ると、EU27のクオータ割当を受けた生産者は約52万7千人で、その8割をルーマニア(43万7千人)が占めている。クオータに対する生乳供給量は約343万5千トンとなり、クオータ合計を約62万9千トン下回る結果となっている。ただし、国別では3カ国(キプロス、ルクセンブルグ、オランダ)でそれぞれクオータを超過しており、その合計は4,673トンとなっている。
国別クォータ超過量

生乳クオータ制度廃止にかかる移行措置

 既に公表されている欧州委員会のCAPの中間検証作業である「ヘルスチェック」の原案において、生乳クオータ制度は2015年3月31日をもって廃止となっている。欧州委員会は、この廃止に向けた「ソフトランディング」の方法として「生乳クオータ枠の緩やかな拡大」が適切とし、2009/10年度から2013/14年度の間、クオータ枠を毎年1%増加する案を提出しており、11月または12月の農相理事会での合意を目指すこととなっている。
【小林 奈穂美 平成20年10月16日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:井上)
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