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酪農ブームが続く中、酪農家の経営意識が改善(豪州)

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高水準の国際乳製品価格を背景に酪農家の経営意識は大幅に改善

 デイリー・オーストラリア(DA)は6月3日、2008年版の酪農の現状および見通しに関する報告書を公表した。これによると、豪州の酪農は大幅な生産コストの上昇、不安定な天候、乳牛飼養頭数規模の縮小といったマイナス要因があるものの、高水準の乳製品国際価格を背景として市場環境がかつてないほど良好な状況にあり、当面この状況を維持すると見ている。また、こういった状況を背景として、豪州酪農家の経営意識が大幅に改善している。

 DAが千戸の酪農家を対象に行った意識調査(2008年2月〜3月実施)によると、78%の酪農家が将来の酪農経営に楽観的であると回答しており、2007年の54%から24ポイント増と大幅に改善した。これは、2006/07年度と比較して2007/08年度の農家所得が大幅に改善したためであり、2004年の調査開始後で最も高い数値となった。地域別では、干ばつの影響が少なく、飼料価格高騰の影響の少なかったタスマニア州で92%と最も高く、このほか、ビクトリア州西部(82%)やクイーンズランド州南東部(81%)において数値が高い。

 ただし、酪農経営にとっては、今後も気象条件、飼料など生産資材の確保および生産コストの上昇などが懸念材料となるとしている。

生乳生産量は、中期的に緩やかな増加を予測

 豪州の酪農家では、75%以上がこの12ヵ月間で干ばつの影響を受けており、こういった酪農家では特に飼料穀物への依存を高めるなどの対策を講じている。2007/08年度は、特に干ばつの影響により飼料確保が困難となり、飼料穀物への依存が高まった。このため、47%の酪農家が自家飼料不足に伴い、購入飼料のみに依存する時期があったと回答している。

 2007/08年度の生乳生産量はこういった気象条件の下、乳牛飼養頭数の減少や上期の飼料不足および飼料価格高騰の影響により、前年度比5%減の910万キロリットルと予測している。

 2008/09年度については、搾乳牛の更新率が低いものの、気象条件が平年並みに戻った場合、搾乳牛のとう汰頭数が減少するため、搾乳牛頭数は2〜3%増加するとみている。DAでは、2008/09年度の生乳生産量は910〜930万キロリットルと1%前後増加すると予測している。

 また、酪農家の意識調査によると、今後3年間(2007/08〜2010/11年度)で生乳生産量を増加すると回答した酪農家が全体の58%(生乳生産量の62%)、現状維持が30%、規模縮小が3%となり、将来的に増産意欲が強い結果となった。地域別では、酪農の主産地であるビクトリア州北部で71%、このほかタスマニア州で68%と増産意欲が強い。しかしながら、3年後の2010/11年度の生乳生産量は、気象条件などが平年並みに戻った場合でも950〜990キロリットルと緩やかな増加とどまると予測している。

国内市場における牛乳・乳製品販売額は前年度比7%増と引き続き増加

 国内における牛乳・乳製品市場は、販売量および販売額ともに引き続き増加基調にある。しかしながら、2007年4月から2008年3月までの12ヵ月間の販売量は、特に2007年の第4四半期以降、小売価格の大幅な上昇を反映して増加率が鈍化した。品目別では、牛乳やバターは引き続き増加したものの、チーズやヨーグルトなどでわずかに減少した。

 販売額については、小売価格の引き上げを反映して前年同期比7%増となった。品目別では、小売価格の引き上げ幅の大きいチーズやデイリー・スプレッドにおいて増加率が低かったが、牛乳については引き続き販売額が増加している。特に牛乳についてはプライペート・ブランドの販売比率が高まっており、小売店では、今後、チーズやヨーグルトなどの製品でもプライベート・ブランドの比率を高めていくこととしている。

 豪州全体の生乳生産量が伸び悩む中、海外および国内の牛乳・乳製品需要が依然強く、当面、豪州国内における生乳需給のひっ迫が続くとみている。
【井田 俊二 平成20年6月10日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:井上)
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