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降雨不足は肉用子牛生産にも影響(アルゼンチン)

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繁殖メス牛飼養地域に著しい降雨不足

 アルゼンチンのブエノスアイレス州東南部の例年の年間降雨量は約1,000ミリメートルであるが、2008年は約500〜800ミリメートルと大幅に減少し、降雨不足が著しい。

 同地域は水はけが悪いため高地を除き湿地帯を形成することが多く、アルファルファなど栄養分に富んだ牧草の栽培には適さない。このため土地が肥よくで年間を通して良質な牧草が豊富に生産される肥育牛向け牧草地ではなく、繁殖メス牛向けの牧草地として利用されている。国家動植物衛生機構(SENASA)が発表する牛口蹄疫ワクチン接種結果から見るとアルゼンチンの経産牛のうち約13%が同地域で飼養されているとみられる。

肉用子牛生産に大きな影響

 アルゼンチンで一般的とされる季節繁殖サイクルを図に示す。
 (肉用子牛生産については 5の(1)肉牛子牛生産を参照願いたい)
季節繁殖サイクル
 2月に国立農牧技術院(INTA)で聞き取り調査を実施したところ、「例年では、10月〜1月はスプリングフラッシュ(牧草が急速に成長する春の時期)が見られるが、今年はこの期間の降雨が不足したため、1月までは牧草地は一面黄色だった。飼料不足は繁殖メス牛のボディーコンディション(太り具合からみた栄養状態)に影響し、例年に比べてやせぎみの繁殖メス牛が多くなり、受胎率が低下している。」とのことであった。

 このような状況から国立農牧技術院(INTA)は、繁殖経営に対し、

(1)親子放牧の期間を3カ月程度までに短縮すること
(2)親子放牧を行わずに親子分離して放牧すること
(3)繁殖メス牛に発情ホルモンを投与すること

 などにより繁殖メス牛の受胎率を改善するよう指導を行った。しかしながら、これらの方法は、いずれも従前より生産コストがかかるため、多くの小規模繁殖経営(おおよそ牛飼養頭数500頭以下の経営)は、雨を待つのみという姿勢である。このためINTAは、2009年の肉用子牛生産について同地域では20〜25%減るのではないかと悲観的な予測している。

 なお、このような降雨不足を背景に、連邦歳入庁(AFIP)は2009年1月29日、粗収益が前年度に比べ50%以下になった農業経営に対し、2009年の所得税、固定資産税の納付期限を2010年2月1日まで1年間延期することを公表した。しかし、この措置に対する生産者団体の評価は低く、引き続き大豆の輸出税引き下げを要請している。

 ブエノスアイレス州東南部は、農地の約85%が主に繁殖メス牛向けの牧草地であり、大豆やトウモロコシなどの耕地面積の割合は約15%といわれている。今回の降雨不足による受胎率の低下より、2010年には、弱齢去勢牛の牛肉を中心に牛肉生産量が減少することが懸念される。
繁殖めす牛と子牛の放牧
【松本 隆志 平成21年2月25日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:藤原)
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