アマゾン川を利用した穀物輸出（ブラジル）

　ブラジルの耕種作物生産は、マットグロッソ州など中西部（セラード地域）を中心に増産が進んでいるところであるが、中西部産のトウモロコシや大豆を、南部（ウルグアイ国境部）および南東部（大西洋沿岸部）の養鶏地帯や大西洋岸の輸出港など需要地まで輸送する距離は、1千キロメートルを超える。しかし、鉄道インフラの整備が進んでいないため、トラック輸送に頼らざるを得ない現状である。中西部から南部および南東部への輸送ルートは以下のように分けられる。

（1） 国道BR364号線でサンパウロ州に入り南東部へ通じるルート
（2） マットグロッソ州アルトタクアリ市まで道路輸送、ここから鉄道を利用して南東部へ通じるルート
（3） 国道BR163号線とほかの道路と結んで南部へ通じるルート

　このような中で、輸送コストを軽減するために、アマゾン地帯の水路を利用した北部ルートの輸送（（4）、（5））が始まり、注目されている。

　3月から5月までの収穫期の国道は、穀物を輸送するトレーラーで渋滞。1台約40〜50トンの穀物を運搬するため、舗装道路にすぐ穴が開いてしまう。

　北部ルートの1つは、マットグロッソ州産のトウモロコシや大豆を国道BR364号でロンドニア州ポルトベーニョ港までが陸路、同港よりマデイラ川を約1,100キロメートル下りアマゾン川本流にあるイタコアティアラ港、同港から大西洋沿岸のマカパ港を通過しオランダロッテルダムへ輸送するものである。

　アマゾナス州政府、アンドレマジグループ（ブラジル最大の大豆生産者、2008年度の大豆作付面積14万ヘクタール、生産量46万トン）などの出資によるアマゾン川上流マデイラ川の水路を利用した経路を利用することにより、従来のサントス港およびパラナグア港までの道路輸送ルートと比較して輸送距離を短縮し、コストを低減させている。

　ポルトベーニョ港からの輸出は、アンドレマジグループ傘下のヘルマサ社が行っている。穀物の輸送量は年間250万トン（大豆210万トン、トウモロコシ40万トン）となっている。また復路は肥料や農薬などの農業資材を運んでいる。現時点で港湾機能の輸送能力が上限まで達していることから、2年後に年間750万トンの輸送能力を持つ港を竣工するため、20キロメートルほど下流に新たな港の建設工事が進められている。

　ポルトベーニョ港はアマゾン川の支流であるため、大型輸送船は入港できない。そこでポルトベーニョ港はマットグロッソ州北西部を中心とする穀物集積に機能を特化しており、本流に位置するイタコアティアラの搾油工場で大豆油の生産を行っている。なお生産された大豆油は多くはブラジル国内の北部で消費される。一方、大豆油かすは、トウモロコシなどとともに配合飼料として調製され、欧州へ輸出されている。

　繁忙期には、港に1日当たり40トントラック270台が入場。5分間で1台の荷を降ろす。

　イタコアティアラ港までの片道1,100千キロメートルを下り2.5〜3日、上り5日で往復。

　ヘルマサ社の隣に桟橋を持つカジュー社は、食肉などを含めた日用品をトラックのコンテナのまま北部の中心地マナウスなどへ輸送。食肉は国内北部の消費向け。

　一方、国道BR163号線を軸にサンタレン市まで陸送するもう一つの北部ルートについて見ると、国道BR163号線は、クイアバ市からパラ州内アマゾン川本流のサンタレン市までの約1,800キロメートルのうち約1,000千キロメートルは未舗装であることから、舗装が計画されている。米国カーギル社は、輸送コストの軽減（マットグロッソ州北部からサントス港への距離は約2,000キロメートルあるが、サンタレン港への距離は約1,200キロメートル）とパラナグア港やサントス港の混雑の緩和などを目的に、サンタレン港に集積ターミナルを整備したが国道BR163号線の舗装が遅れていることから、当初期待されたほどの機能を発揮していないといわれている。