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牛肉加工品輸出の現状(アルゼンチン)

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金額で見ると、日本は7番目の輸出国

 国家動植物衛生機構(SENASA)によると、アルゼンチンの牛肉加工品輸出(製品重量ベース)は、数量では2004年以降減少傾向にあり、金額ではおおむね1億ドル(約91億円、1ドル=91円)〜1億5000万ドル(137億円)の間で推移している。国別では冷凍食品用などを中心に米国やイギリス、オランダ、イタリアなどに輸出されている。なお、この上位4カ国で輸出量全体の70%前後を占めている。2008年の輸出は、数量で前年比9.9%減の約3万5000トン、金額で同21.5%増の約1億3500万ドル(123億円)となった。

 日本向けについては、主に冷凍食品などの業務用として輸出されており、数量では上位20カ国にも入らないものの、金額では近年増加傾向にある。2008年の輸出金額は、同13.3%増の377万6000ドル(約3億4000万円)、2000年〜2008年の合計で7番目の輸出国(1664万ドル、15億1000万円)となった。
輸出数量
輸出金額
日本向け輸出金額
資料はいずれもSENASA

最大手牛肉パッカーは、日本との長期取引を希望

 近年の牛肉加工品の輸出状況などについて、アルゼンチン最大のパッカーで、煮沸牛肉の対日輸出認定工場であるJBSアルゼンチン社(旧米国資本のSwift社、2005年にJBS社が買収)のロサリオ工場の担当者に対し聞き取りしたところ、以下のとおりであった。なお、同工場は、1日当たり1400頭のと畜処理を行っており、牛肉加工品の製造能力は1日当たり200トン以上、輸出向けが70%以上となっている。

1 近年の輸出数量の減少傾向の理由などについて

 「主に2点の理由が挙げられる。1点目は、近年の政府の牛肉輸出管理の強化により、輸出許可書の発行に時間を要したこと、2点目はロシア向け生鮮牛肉輸出の増加により、従来であれば加工用に向けられる牛肉が減少したことから、加工用牛肉のコストが上がったことである。また、昨年の国際金融危機の影響もある。今後の輸出については、アルゼンチンはブラジルとは反対に人口が減少傾向にあるため、輸出割合が上昇し、また、牛肉の品質も良いことから輸出量が増加するとみられる。」

2 今後の輸出戦略について

 「現在は米国などにタコス用やスープ用の加工牛肉などを輸出しているが、今後はシンガポールやフィリピンなどアジア諸国やロシア向けの輸出に力を入れていきたい。
 日本向けについては、以前日系商社を通して牛丼用のバラ肉やタンなどを輸出していたが、JBS社買収後の人事異動やコストの面で採算が取れなくなったことから、現在は残念ながら行っていない。輸送コストなどでやはり豪州産などにはかなわない。また、加工品の輸出を行うに当たっては、生鮮肉に比べ国、取引先ごとに独自の品質が求められることから時間を要する。しかも、日本から求められる品質基準は非常に高く、対応しづらい一面がある。
正直、日本の消費者がどのようなものを求めているか分からない。しかし、当然のことながら、日本との取引は、非常に利益のあるものであることを認識しているので、機会があれば再び取り組んで長期的な取引を希望している。」

3 依然として規模拡大が進むJBS社の企業買収による経営などの影響について

 「JBS社傘下となったことで一部の経営幹部がブラジル人になったこと以外は、旧Swift社時代とほとんど変わらない。
JBSグループの経営は、基本的に支社(工場)ごとの独立採算制である。今般のブラジル本社とベルチン社の経営統合による影響についても、米国では両社が競合しなくて済むという利点はあるが、アルゼンチン支社にはほとんど影響はないだろう。」(海外駐在員情報:JBS社と第三位の牛肉パッカーが経営統合へ(ブラジル)参照)


 2009年1月〜8月の輸出については、金融危機の影響が緩和し、イギリスやイタリア向けなどが増加したことから、数量で前年同期比41%増の2万4000トン、金額で同41%増の8800万ドル(80億円)となった。日本向けについては、数量で同7.4%減の137トンとなったものの、金額では同1.5%増の240万8000ドル(約2億2000万円)と上位5番目となった。今のところ、アルゼンチンの牛肉供給はおおむね順調に行われており、8月に国家農牧取引監督機構(ONCCA)による輸出許可日数が5日以内に短縮されるなど政府の牛肉輸出管理が緩和されたことから、今後の輸出も増加することが見込まれる。
【石井 清栄 平成21年10月2日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:藤原)
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