畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2009年 > JBS社とマルフリグ社の2極化が進む食肉パッカー(ブラジル)

JBS社とマルフリグ社の2極化が進む食肉パッカー(ブラジル)

印刷ページ

マルフリグ社も規模拡大を加速化

 JBS社は、9月にベルチン社(牛肉パッカー国内第3位)と経営統合するとともに、ピルグリム・プライド社(米国鶏肉パッカー最大手)を買収した(海外駐在員情報:JBS社と第三位の牛肉パッカーが経営統合へ(ブラジル)参照)。一方でマルフリグ社(国内第2位)も食肉処理能力拡大の動きを加速させるなど、ブラジル国内における市場寡占化はますます進展の様相を呈している。

 マルフリグ社は、9月に鶏肉パッカーのセアラ社の買収に続き、牛肉パッカーのメルコスル社およびマルジェン社から計12の食肉処理施設を借り上げることを決定した。これにより、国内の1日当たりの牛のと畜能力は1万3,550頭から2万2,350頭へと飛躍的に増加し、国内と畜頭数の約11%を占めると推定される。さらに、卸売グループのマルチンス社と5年間の業務提携を結び、これらの食肉流通の確保を狙うとともに、流通分野におけるコスト削減を図る計画もあるようだ。最近3年間でマルフリグ社が買収した企業数は36社とも言われており、これは実に月当たり1社の割合で食肉関連会社を買収していることとなる。

皮革生産部門でも経営統合の波

 国内の皮革会社は主に乗用車や高級家具向けに製品を輸出しているが、国際金融危機の影響で輸出が激減する中、この分野においてもJBS社およびマルフリグ社の規模拡大が進展してきている。JBS社は皮革業界最大手のBMZ社と業務提携を行うことにより、先に経営統合したベルチン社の処理能力と合わせ皮革生産能力は1日当たり4万2,400枚となった。一方、マルフリグ社の皮革生産能力はわずか同1,500枚にすぎなかったため、アルゼンチン、メキシコ、米国、ドイツ、南アフリカ、香港および中国に皮革生産工場を有し皮革生産能力が同7,000枚となるウルグアイのゼンダイ・グループの株式を51%取得した

鶏肉処理部門では中国市場も視野

 また、JBS社によるピルグリム社およびマルフリグ社によるセアラ社のそれぞれの買収は、今後、世界最大の鶏肉消費国になると予想される中国市場へのアクセスに関し非常に有利になると考えられる。このため、現時点でブラジルは中国市場への大型供給国ではないが、近い将来最大の鶏肉供給国となるポテンシャルは十分にある。また最近の中国による米国産鶏肉製品のダンピング調査開始の発表やブラジルの鶏肉処理施設に対して中国向け冷凍鶏肉輸出の許可を与えた動きは、今後、ブラジルが中国市場を展開するに当たりさらに有利に働くと業界では予想している。ブラジル鶏肉輸出企業協会会長のコメントとして「ブラジルにおける動物たんぱく分野のコングロマリットの出現は、国内食肉産業部門全体に恩恵を与えると同時に新規市場の獲得にも寄与する。」と伝えられている。

中小企業や財政困難な食肉パッカーの今後の動向に注目

 このような2大企業による経営統合の動きを前に、ミネルバ社など中小企業食肉パッカーの存在は小さなものとなり、結果として吸収合併を通じた成長への道を選ばざるを得なくなると専門家は予測する。また、1日当たり9,300頭のと畜能力、日産1万枚の牛革生産能力を有しながらも経営難を理由に現在会社更生法の適用の申請中であるインディペンデンシア社についても、今後どのような動きを見せるか大きく注目されるところである。
JBS社とマルフリグ社が所有する食肉処理工場などの分布表
【星野 和久 平成21年10月14日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:藤原)
Tel:03-3583-9805