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南米の農畜産業をめぐる情勢(2009年10月)

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(アルゼンチン)

牛のと畜頭数は過去20年で最高も、今後は減少へ

 アルゼンチン牛肉・牛肉副産物産業および取引会議所(CICCRA)のレポートによると、2009年1月〜8月の牛のと畜頭数は、1100万頭に達したと推定され、過去20年で最高の記録となった。CICCRAは、この要因として、(1)リオネグロ州など一部地域の干ばつの影響、(2)パンパ地域での大豆栽培面積の拡大による牧草の減少や、牛肉業界への政府の過剰介入による肉牛経営の収益性悪化から、繁殖めす牛のと畜が行われていることが大きいとみている。この結果、今後は牛肉供給量が減少し、2010年には牛肉価格の上昇が見込まれている。ドミンゲス農牧漁業相もこの見通しに懸念を表明し、同省では、現在短・中期的対策を策定中である。

鶏卵需要が増加

 アルゼンチン採卵鶏会議所(CAPIA)が発表したレポートによると、今後数年間に鶏卵の国内消費、輸出とも増加が見込まれている。アルゼンチンの1人当たりの鶏卵消費量は、2002年には126個であったが、2009年には210個になると予測されている。

2009年のバイオディーゼル生産量は、25%増加の見込み

 アルゼンチン再生可能エネルギー協会(CADER)によると、大豆油を原料とするバイオディーゼルの2009年の生産量は、前年比25%増の120万トンに達すると見込んでいる。また、2010年についても、1月以降ガソリンへの混合が義務付けられるため、生産は増加するとみられている。関係者によると、アルゼンチンはドイツ、米国、フランス、ブラジルに次ぐ世界第5位のバイオディーゼル生産国である。

中国、大豆50万トン弱を買い付け

 現地流通業者によると、世界最大の大豆輸入国の中国は、米国が収穫前に低温かつ多雨という悪天候に見舞われたことを踏まえ、来年4月以降の輸入量を確保するため、アルゼンチン産大豆を50万トン弱(船積みベース)買い付けた。買付価格は1トン当たり220ドル(19,800円:1ドル=90円)前後とのことである。

(ブラジル)

2010年は、鶏肉輸出第1位から転落の可能性

 ブラジル鶏肉輸出協会(ABEF)は、2010年の鶏肉輸出について、自国の輸出量の10%減少が見込まれることや、米国やアルゼンチンの輸出増加などにより、2004年から維持してきた鶏肉輸出世界第1位の座から転落する可能性があることを明らかにした。年内の輸出についても、為替や国際金融危機の影響を依然として受けていることから、減少すると予測している。

サジア社とペルジゴン社の海外事業統合が承認

 経済擁護管理審議会(CADE:ブラジル国内市場の独占を規制する機関)は、サジア社とペルジゴン社の海外事業部門の統合を承認した(合併後の社名はブラジルフーズ社)。今回の決定により、新会社は、両社の輸出取引および海外市場におけるマーケティング、物流などの活動を統合することができる。しかし、国内事業部門の統合は審査が継続していることから、審査が終了するまでの間の管理、生産、販売は、引き続き各社で運営される。

ブラジル最大のアルコール・バイオエネルギ−企業が誕生へ

 ブラジルの大手コングロマリット、オーデブレヒト社の砂糖・アルコール部門企業であるEHT Bionergia社と投資ファンドが経営する同部門企業であるBrenco社は10月8日、生産施設と経営を統合する約束書に署名したことを発表した。これにより、アルコール生産とバイオエネルギー分野でブラジル最大の企業が誕生することになるとみられている。詳細は発表されていないが、合併が確定することになれば、新会社は年間3700万トンのサトウキビを圧搾することになり、2013/14年度には30億リットルのアルコールを生産すると予想されている。

(チリ)

豚肉業界、外需に強い期待感

 豚肉業界では、輸出価格が上昇傾向にあり、世界経済回復の兆しが一部に見られると明るい見通しを立てている。チリ養豚生産者協会(ASPROCER)のミゲール オバジェ会長は、「ヨーロッパや韓国では価格が上昇傾向を示しており、国際的に経済は回復の兆しを見せていることが感じられる。ただし、日本への輸出は低調であり、こうしたことからも日本の経済回復は遅れているとみている。日本経済が本格的な回復基調に乗るのは2010年下半期までずれ込むのではないかと思われる。」と述べた。
ブラジル鶏肉、チリ豚肉 2009年9月の需給
【石井 清栄 平成21年11月20日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:藤原)
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