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今後10年のアグリビジネスは堅調に発展(ブラジル)

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1 ブラジル農務省による農畜産物等の需給予測

 ブラジル農務省戦略管理室(AGE/MAPA)は、アグロビジネスの今後の発展方向を示すため、国内外の関係機関のデータ、自らの過去32年間のデータの分析および2007/2008年(7月〜6月)の農畜産物などの生産実績を基に、2018/2019年の農畜産物の需給予測を公表した。

 これによると、今後予測される国内外の市場拡大の動きは、農畜産業の生産力と技術力に加え、豊富な天然資源を有するブラジルにあっては非常に有利な状況と判断され、今後の同国のアグリビジネスは堅調に推移すると予測された。特に10年後に成長が期待できる主な農畜産物としては、トウモロコシ、大豆、小麦、食肉、生乳、砂糖が挙げられ、これらに関連したアグリビジネスの成長は大きな潜在能力を有していると報告された。

2 穀物、食肉など主要な食料生産はダイナミックに成長

 2007/08年から2018/19年にかけて、穀物(大豆、トウモロコシ、小麦等)について、生産量は13970万トンから17980万トンに28.7%増加、作付面積は4525万ヘクタールから5454万ヘクタールに20.5%増加、消費量は10570万トンから12735万トンに20.4%増加、輸出量は3730万トンから5936万トンに59.1%増加すると見込まれた。また、同期における食肉(牛肉、豚肉、鶏肉)については、生産量は2461万トンから3720万トンに51.1%増加、消費量は1800万トンから2420万トンに34.4%増加、輸出量は664万トンから1234万トンに85.8%増加すると見込まれ、いずれも大幅な増加が予測された。

【主な農畜産物の予測概要(2018/19年)】

トウモロコシ

 マットグロッソ州、パラナ州における農地の拡大および生産性の向上が大きく見込まれたことが要因となり、生産量は7325万トン(対2007/2008年比(以下同じ)25.0%増)と予測された。

大豆および大豆製品

 生産量は8091万トン(34.7%増)と予測された。農業開発の余地がある地域(中西部から北東部)では土地開発が進み、農地拡大の余地がない地域(南東部と南部)では従来の作物の代替作物として生産が進められることから、作付面積は約500万ヘクタール増加し約2650万ヘクタール(24.3%増)が見込まれた。
 また、大豆製品の生産量は、大豆かすが3343万トン(34.0%増)、大豆油が840万トン(36.5%増)と予測された。

小麦

 消費量(1225万トン(19.5%増))は依然、生産量(788万トン(45.7%増))を大きく上回っており、引き続き世界で最も小麦を輸入する国の一つとなるであろう。

食肉

 生産量は鶏肉が1744万トン(56.7%増)、牛肉が1551万トン(49.4%増)、豚肉が425万トン(36.9%増)と予測され、増加率では鶏肉生産が最も著しいと見込まれた。

生乳

 生産量は368億リットル(34.6%増)と予測され、大きく増加する可能性が見込まれた。

砂糖

 生産量は4733万トン(44.4%増)と予測され、世界の砂糖価格を左右する国の一つとなるであろう。

エタノール

 生産量は590億リットル(168.2%増)、消費量は500億リットル(177.8%増)と予測された。フレックス燃料タイプの自動車の販売割合は、2008年は29.6%であるが、2017年は73%に拡大すると予測されることから、エタノールの生産量および消費量は今後飛躍的に成長することが見込まれた。
表1 主な農畜産物の生産予測
表2 主な農畜産物の作付け予測
表3 主な農畜産物の消費予測

3 世界の農畜産物貿易にも大きく影響

 2008年は国際金融危機の中にあったにもかかわらず、農畜産業は堅調に拡大発展を遂げ、牛肉、鶏肉、エタノール、砂糖の輸出は世界一となり、世界の貿易のリーダーとしての地位を強固にしつつある。2018/19年の輸出量は軒並み50%以上の増加率が予測されており、2018年のブラジルからの農畜産物の輸出が世界の貿易に占める割合は、大豆40.0%、鶏肉89.7%、牛肉60.6%、砂糖74.3%、大豆油73.5%と見込まれており、ブラジルはますます大きな影響を持つ国の一つとなると見込まれた。
表4 主な農畜産物の輸出予測
表5 主な農畜産物の輸出が世界に占めると予測される割合

4 生産と消費を結びつけるインフラ整備が重要な課題

 今回の予測からは、今後のブラジルの農畜産業の堅調な発展と同国政府の意気込みが感じられた。これらを確固たるものとするためのキーワードとして作付面積の拡大と生産性の向上が示されていたが、近年の成長実績からすると国際的にも競争力を十分つけてきていることから、順調に進むものと思われる。一方で、農地の拡大が中西部の新興農業地帯に集中し、穀物の保管設備がいまだ整備されていない地域もあることから、収穫後の穀物が露天に積み上げられているともいわれている。また、これら中西部から国内消費地や船積み輸出港までの交通アクセスが悪く、さらに港湾の設備なども未整備な箇所が多く存在することから、今後は、効率よく保管・運搬するためのインフラ整備が課題となるであろう。また、気候変動、貿易障壁の強化、為替レートの影響など、国際協調の中で対処していかなければならない課題も多くあるため、今後、どのような成長を遂げていくのか、引き続き注目していきたい。
【星野 和久 平成21年12月14日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:藤原)
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