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と畜時のアニマルウェルフェア向上に係る新規則について農相理事会が政治的に合意(EU)

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2013年1月1日の新規則施行により現行指令(93/119/EC)は廃止に

 欧州委員会は6月22日に開催された農相理事会において、食肉処理場におけると畜時のアニマルウェルフェア向上に係る新規則について政治的合意に達した旨発表した。この新規則は、現行の「と畜時における家畜の保護に関するEU指令(93/119/EC)」の内容を基本的に踏襲しているものの、と畜時におけるさらなるアニマルウェルフェア向上のため、以下の点をはじめとする拡充・強化がなされている。
  • 科学的な評価に基づき認可された手法を用いてと畜前に気絶処理(スタニング)を実施すること
  • スタニングの有効性について日常的な監視(モニタリング)を実施すること
  • 十分な訓練を受け、認定を受けた者のみがと畜業務に携わること
  • 食肉処理場の設計においてアニマルウェルフェアに配慮すること
  • 各々の食肉処理場においてアニマルウェルフェアの責任者を指名し、アニマルウェルフェア確保のための標準業務手順書(SOP: Standard Operating Procedure)を整備・導入すること
 この新規則は、この秋にも予定されている正式な採択手続を経て、2013年1月1日に施行されることとなっており、これに伴い、現行指令(93/119/EC)は廃止されることとなる。

新規則の施行によりEU全域において統一したルールが同時に適用されることに

 現行のEU指令に代わり新規則が施行される理由は、EU27カ国において統一したルールの同時適用を図るためと説明されている。EU指令の場合は、各加盟国において国内法が制定され初めて執行されることとなるため、国内法の違いによる加盟国間の不均衡や国内法制定の遅れがしばしば問題となるが、EU規則は各加盟国で直接適用されるため、統一したルールを同時に適用することが可能となるからである。

伝染性疾病発生時の殺処分についても説明責任を求める内容に

 この新規則は、食肉処理場でのと畜以外に、口蹄疫などの伝染性疾病発生時にまん延防止措置として実施される家畜の殺処分についても、処分実施後1年以内に家畜衛生当局に殺処分を実施した理由、処分した家畜の頭羽数、採用された処分方法などを記載した報告書を作成・公表することにより、説明責任を果たすことを求めている。

 また、この新規則が防疫措置の障害とならないよう、公衆衛生または家畜衛生に影響するおそれがある場合には、規則の適用除外を可能とする条項も設けられているが、報告書の作成・公表手続を通じ、防疫措置の最適化が進むものと考えられる。

(欧州委プレスリリース)
【前間 聡 平成21年6月25日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:井上)
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