バター、脱脂粉乳の介入買い入れの実施期間を延長(EU)
域内市場依然低迷
乳製品の国際価格は、昨秋からの世界的不況の影響などを受け急落し、EUの乳製品市場も低迷した。これに対し欧州委員会では 2009年1月にバターの民間在庫補助(PSA)の前倒し実施や輸出補助金再開で対応してきたが、3月から開始された介入買い入れの状況を見ると、固定単価での買い入れは、開始直後に限度数量(バター:30千トン、脱脂粉乳:109千トン)に達し、バターは3月19日から、脱脂粉乳は4月23日から入札制度による買い入れに移行しており、買入数量は7月9日現在、累計でそれぞれ81千トン、203千トンと限度数量を大きく上回っており、依然低迷状態が続いている。
市場回復の兆しがなかなか見られない中、生産者を取り巻く情勢も厳しい状況が続いており、5月以降、ドイツ、フランスの生産者を中心とする団体による大規模デモが行われ、既に決定されたクォータ制度廃止の見直しなどを要求していた。
これに対してフィッシャー・ボエル委員(農業、農村担当)は、5月25日に開催された農相理事会後にクォータ制度の廃止の見直しについては行わないと明言する一方、長期化する市場低迷に対し、PSAや介入買い入れの対象期間の延長による対応を示唆し、欧州委員会において検討されていた。
介入買い入れの実施期間、来年の2月末まで延長へ
こうした中、同委員会は、バター、脱脂粉乳の介入買い入れの実施期間を現行の8月31日までから2010年2月末までに延長する案を農相理事会に提出し、7月13日に開催された同理事会において採択、この案を欧州議会に提出することとなった。なお、同委員会は、欧州議会の正式な採択まで空白期間(次回開催予定は9月)を生じさせないよう、共通市場制度(Common Market Organisation:CMO)に関する理事会規則(EC1234/2007)の緊急条項に基づき対応するとしている。
また、同理事会では、乳製品市場の低迷が深刻なことから、これを軽減させるための対応策を検討するべきとの意見が出され、次回欧州議会が開催されるまでにこれを検討することとしている。
バターの民間在庫補助の対象期間の延長も検討
さらに欧州委員会は、7月10日、バターのPSAの対象期間について、現行の8月15日までから2010年2月末までに延長する案の検討に入ったことを公表している。これは委員会規則により規定されていることから比較的簡単な手続きで変更することができ、2〜3週間で提案できるとしている。
【小林 奈穂美 平成21年7月14日発】
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