欧州委、飼料の安定輸入の障害となっていたGMO三種類を承認
結論が持ち越された10月19日の農相理事会から2週間足らずで承認へ
欧州委員会は、その微量の混入により、累計で20万トンを超える飼料原料(大豆類)の輸入が差し止めとなっていた遺伝子組み換え作物(GMO)について、域内での栽培を除く、食品、飼料原料などとしての使用について10月30日付けで承認した旨官報掲載した。既報(注1) のとおり、三種類のGMOの承認(注2) については、10月19日の農相理事会の場において結論が先送りされたため、欧州委員会に検討の場を移すこととされ、その対応が注目されていたが、農相理事会の開催から2週間足らずで承認手続きが完了したこととなる。この結果、これらの三種類のGMOについては、域内で食用、飼料用などとしての使用が認められるため、飼料原料の輸入の際に混入が認められたとしても、問題なく輸入できることになる。
これらのGMOについては、いずれも欧州食品安全機関(EFSA)により肯定的なリスク評価結果が公表されていたことから、科学的な根拠には問題がなかったところであるが、このような異例のスピード承認となった背景には、一刻も早くこれらのGMOの混入による輸入差し止めという事態を解消し、域外からの飼料用植物性たんぱく質の安定輸入を図りたいという欧州委員会側の強い意志が読み取れる。
現行のゼロ許容量政策による生産者の追加負担は半年間で10億ユーロ規模との試算も
先般GMOについて意見交換を行ったある生産者団体の試算によれば、輸入される飼料原料中に域内で承認されていないGMOの混入を一切認めない現行のゼロ許容量政策による域内生産者の追加的な負担は、今後半年間で約10億ユーロ(約1350億円、1ユーロ=135円)に上ると見込まれている。これは、先月欧州委員会より発表された2億8千万ユーロ(約378億円)の酪農に係る追加対策(注3)の約4倍の規模に相当するものであり、その影響の大きさがうかがえる。この団体は、EUのゼロ許容量政策により、域内生産者が割高な飼料原料を使用せざるを得ず、結果として域外の生産者との国際市場における競争において不利益を被っているという認識の下、関係機関と連携し、ゼロ許容量政策の見直しについて引き続き欧州委員会に働きかけを行っていく方針とみられるが、ゼロ許容量政策の見直しは、個別のGMOの承認よりもはるかにハードルが高いと考えられ、事態が進展するとしても相当な時間を要するとみられる。
(注1): ボエル委員、各国農相に輸入飼料原料中の未承認GM作物混入に現実的対応を求める(EU)
(注2): MON89034、MON88017および59122xNK603(欧州委員会ウェブサイト参照)
(注3): ボエル委員が新たに2億8千万ユーロの財源を酪農対策に用意する旨表明(EU)
【前間 聡 平成21年11月18日発】
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