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輸出検査手数料負担をめぐり業界団体が異論(豪州)

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2009年7月から輸出業者の輸出検査手数料負担が増加する予定

 豪州の食肉関係をはじめとする業界団体は、2009年7月から予定されている農畜産物などの輸出検査手数料負担の増額について、その見直しを要請している。豪州では、豪州検疫検査局(AQIS)が農畜産物などの輸出に際し検査や証明書発行などに係る業務を行っているが、その手数料として輸出業者が60%、政府が残り40%を負担している。現在、連邦政府が中心となって新たな検疫制度の導入を検討しているが、新制度下では輸出検査手数料が引き上げられるとともに輸出業者がその全額を負担することとなっており、輸出業者の負担額は現行の2倍以上になるとみられている。

食肉業界団体が輸出検査手数料負担の見直しに異論

 食肉処理業団体である豪州食肉産業協議会(AMIC)は、(1)豪州の食肉生産は、その70%が輸出される輸出依存型産業であり、業界に関係する雇用者は5万人にも及ぶこと、(2)輸出検査手数料負担の見直しに伴うコスト増加分は食肉生産者に転嫁され、その結果、食肉生産の減少や雇用の削減につながる恐れがあること、(3)食肉をめぐる輸出環境が厳しい状況下において、手数料負担の引上げは容認できる状況にないこと、(4)手数料負担の引き上げを一時的に凍結し、まずは現行検査制度の効率性を検証する必要があること、などを指摘している。なお、この検査手数料の見直しにより農産物を含めた業界全体の負担額は4千万豪ドル(28億円:1豪ドル=70円)増加し、このうち食肉業界では全体の8割に相当する3,200万豪ドル(22憶4千万円)を負担するとしている。

 こういった動きは、他の業界にも広がっている。穀物業界では、輸出検査手数料負担の見直しに伴う増加分が穀物生産者に転嫁されること、また、現在、好調な穀物輸出に悪影響を及ぼす可能性があるとして、政府による費用負担の継続を求めている。またオーガニック農業団体は、AQISが実施している現行の検査プログラムを徹底的に見直し、その効率化を図ることが先決であると指摘している。

豪州検疫体制の抜本的な改革の一環

 今回の輸出検疫手数料負担の見直しは、豪州における抜本的な検疫体制再編の一つとして位置付けられている。

 現在、連邦政府が進めている検疫体制の見直しは、2007年に豪州で発生し多額の損失をもたらした馬インフルエンザに端を発している。2008年6月に政府が公表したレポートでは、馬インフルエンザが発生した要因の一つとして、AQISによる現行の検疫体制の不備などが指摘された。また、2008年12月に政府が公表したレポートでは、豪州における検疫制度を強化するため現行制度の抜本的な見直しを行うこととし、AQISおよびバイオセキュリティ・オーストラリアなどが行っている業務を統合した新たな組織の創設、新たなバイオセキュリティー制度を確立するための新法の整備などを柱とした84項目の勧告がなされた。政府はこういった対策費用として、年間2億6千万豪ドル(182億円)の予算措置を講じることとした。

 輸出検疫手数料負担の見直しは、この勧告の一つとして掲げられている。ここでは、検査手数料の全額受益者負担、2009年7月からの実施、現行の検査手数料体系見直しのための事前協議の実施などが示されている。

 こうした中、連邦政府のバーク農相は、AQISへの輸出検査手数料についてはまだ決定しておらず、業界関係者と引き続き協議を行っている状況にあると述べるにとどまっている。
【井田 俊二 平成21年4月3日発】
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