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豪州農業資源経済局が農業観測会議 2010を開催

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 豪州農業資源経済局(ABARE)は3月2日〜3日、「Outlook 2010(農業観測会議2010)」を開催し、世界の経済状況を踏まえ、同国の農業生産、輸出などに関する短期および2014/15年度までの中期見通しを公表した。このうち、同国の主要産業である牛肉産業および酪農乳業の見通しについて報告する。

牛肉産業:2014/15年度に向けて牛肉生産量、輸出量ともに回復を期待

〜2014/15年度には、牛肉輸出量は100万トンに達すると予測〜

 2009/10年度(7月〜6月)の牛肉生産量は、前年度比4%減の206万トンと見込まれている。これは、上半期に肉牛主要生産地である東部において、気象条件に恵まれたことによりと畜頭数が前年同期比6%減となったこと、また、北部において2009年末から2010年初頭にかけて降雨に恵まれ、牛群の保留が進んだことによる。

 また、中期的には、良好な気候が続き、景気回復に伴って主要輸出先の牛肉需要が回復するとすれば、牛飼養頭数は緩やかに増加し、2014/15年度には2790万頭に達するとしており、牛肉生産量も217万トンまで増加すると予測している。
牛肉生産量の見通し
 2009/10年度の牛肉輸出量については、前年度比8%減の89万トンと見込まれている。主要輸出先について見ると、日本向けは同6%減の34万トン、米国向けは前年度の輸出増加の反動により同15%減の24万トン、韓国向けは大幅に減少した前年度に比べ同4%増の12万トンとしている。

 また、中期的には、日本、韓国向けについては、両国において米国産との競争が激化し、豪州産のシェア低下が見込まれるものの、景気回復による牛肉需要増により、輸出量は大きく減少することはないとしている。むしろ日本向けについては、2010/11年度以降回復し、2014/15年度には38万トンまで増加すると期待されている。米国向けについては、豪ドル高および南米産との競合が見込まれるものの、米国での牛群の再構築が進めば、2014/15年度には30万トンまで増加すると予測している。そのほかの市場については、2014/15年度には21万トンの輸出が見込まれるが、各市場において、輸入牛肉間の競合が予想される。生体牛および牛肉の重要な輸出先であるインドネシアについては、地理的には豪州が有利であるものの、低コスト生産が可能なブラジルと競合すると見られる。また、ロシアについても、南米産との競合が予想されるため、輸出量はかなり緩やかな増加にとどまると見込まれる。一方、過去5年間で145%輸出が伸びた中東諸国向けについては、牛肉需要は少ないものの、2009/10年度の輸出量は2万トンと見込まれ、今後の輸出市場としての重要性は大きくなると見ている。
国別牛肉輸出量の見通し

酪農乳業:生乳生産量は、記録的低水準が見込まれる2009/10年度から徐々に回復する見込み

〜乳製品生産は高付加価値商品であるチーズや全粉乳へシフト〜

 2009/10年度の生乳生産量は、1997/98年度以来最低となる、前年度比5%減の893万キロリットルと見込まれている。これは、加工原料用の生乳生産が多いヴィクトリア(VIC)州およびタスマニア州の減産によるところが大きい。特にかんがい用水に大きく依存するVIC州北部地域では、2009年上半期(1月〜6月)に、低乳価に対応するため乳牛のとう汰および購入飼料の利用削減などを実施したことが主な減産要因となっている。

 一方、中期的な生乳生産見通しとしては、気候、かんがい用水の利用可能量、飼料価格などさまざまな要因が影響するが、2010/11年度以降、乳牛飼養頭数の回復とともに、生産量は徐々に増加し、2014/15年度には970万キロリットルに達するとしている。
生乳生産量の見通し
 2009/10年度の主要乳製品生産量については、おおむね減少すると見込んでいる。これは、生乳生産量が減少する一方で、国内飲用乳消費は増加し、加工原料用の生乳が減少するためである。また、輸出量については、ロシアなどからの需要が見込まれるバターを除き、減少するとしている。

 今後、乳製品の生産は、高付加価値商品であるチーズや全粉乳にシフトすると予想され、2011/12年度以降、それらの生産、輸出量はともに増加すると見込まれる。その結果、バター、脱脂粉乳の生産、輸出は減少するとしている。なお、2009/10年度の乳製品輸出額については、輸出量および輸出単価の低迷から19億豪ドル(約1539億円)と減少するが、2010/11年度については前年度比7%増の20億豪ドル(約1620億円)と見込んでいる。

 また、中期的見通しとしては、低水準の国際乳製品価格が継続すると見込まれることから、輸出額は2014/15年度まで同水準で推移すると予測している。
乳製品の生産量、輸出量、輸出額の見通し
【杉若 知子 平成22年3月11日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:井上)
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