消費動向・・・堅調な伸びもやや鈍化 ・ 牛肉の消費は安定的に増加。特に62年度は10%近い水準で増加。63年度も約68 万トンで10%近い伸びとなった。 ・ 平成元年度に入って輸入を含む推定出回り量でみると輸入は高いテンポで増大 しているものの、全体としての消費の伸びが鈍化しているとみられ、4月以降、 牛肉の在庫は、急速なテンポで拡大しており、9月末では毎月の生産と輸入を合 わせた供給量の2ヵ月分程度の118千トンに達しているが、対前年比でみると、今 年度初めて伸び率が下向を示した(表4)。また、通関済み在庫も同様な傾向と なった。通関前の在庫は、対前年比では6月をピークとし減少傾向となっている (巻末資料参照)。 ・ なお、推定出回り量の伸びの鈍化の主因は、国内生産の減少に伴うもので、輸 入牛肉に限ってみれば、本年4〜9月期でみても前年同期比13.5%増と依然高い水 準にある(国内産は、6.6%減)。 表4 牛肉需給
年度年月 | 推定期首在庫 | 生産量 | 輸入量 | 推定期末在庫 | 推定出回り量 | |||||
数量 (トン) |
前年比(%) | 数量 (トン) |
前年比(%) | 数量 (トン) |
前年比(%) | 数量 (トン) |
前年比(%) | 数量 (トン) |
前年比(%) | |
61 62 63 |
57,952 67,771 63,692 |
108.8 116.9 94.0 |
393,693 397,555 398,392 |
101.2 101.0 100.2 |
187,871 223,606 285,416 |
119.1 119.0 127.6 |
67,771 63,692 66、546 |
116.9 94.0 104.5 |
571,745 625,240 680,955 |
105.5 109.4 108.9 |
63. 9 10 11 12 元. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 4〜9 |
60,211 66,401 75,054 76,265 69,919 73,759 67,632 66,546 79,946 91,137 99,475 107,519 114,746 - |
91.8 102.4 113.8 101.7 92.7 94.0 93.6 104.5 124.5 136.2 144.6 165.5 190.6 - |
33,202 34,471 37,097 41,784 28,798 29,858 33,384 31,202 30,664 28,851 31,177 30,803 31,091 183,787 |
100.3 98.6 103.0 97.6 101.3 94.8 103.5 94.9 99.6 96.3 96.0 91.3 93.6 95.2 |
28,474 31,275 28,951 25,905 23,239 12,368 27,548 32,710 35,646 33,950 31,451 35,261 30,160 119,179 |
176.0 148.8 98.2 98.7 119.3 96.6 244.3 144.3 152.3 140.6 173.0 183.1 105.9 146.3 |
66,401 75,054 76,265 69,919 73,759 67,632 66,546 79,946 91,137 99,475 107,519 114,746 117,282 - |
102.4 113.8 101.7 92.7 94.0 93.6 104.5 124.5 136.2 144.6 165.5 190.6 176.7 - |
55,486 57,093 64,837 74,036 48,197 48,352 62,018 50,512 55,119 54,464 54,585 58,837 58,715 332,230 |
111.0 104.0 114.7 108.0 107.3 95.8 119.0 91.8 107.0 104.4 100.2 101.9 105.8 101.8 |
資料:農林水産省「食肉流通統計」、大蔵省「日本貿易月表」、推定在庫量(通関済み+国内生産)は事業団調べ。 注:1)出回り量=推定期首在庫+生産量+輸入量-推定期末在庫 2)数量は部分肉ベース ・ 牛肉消費の5割強を占める家計消費は、牛肉価格が安定的に推移してきたこと等 から62年度まで増加傾向で推移したが、63年度以降、月によって変動があるもの の、おおむね横ばいとなっている。 ・ 加工仕向け量は、62、63年度と極めて高い伸びを示し、本年度に入っても依然 高い伸びを続けている。 生 産・・・乳牛のと殺減もあって、前年度を下回る ・ 生産は需要の増加に対応して増加を続けてきたが近年その伸びが次第に鈍化し、 平成元年度に入って前年水準を下回って推移している(表4)。 ・ 種類別には、61〜63年度にかけては肉専用種が減少してた分を乳用種が補い、 全体では前年度に比しわずかに増加するという形で推移した。 ・ 平成元年度に入って和牛が回復に転じた一方、乳用種は雌牛の大幅と殺減もあ って、かなりの減少となっている。 ・ なお、61〜63年度にかけて、和牛は、おすを上回るめすの大幅なと殺減が続い たことから、自家保留が進み、本年8月の肉用種のめす飼養頭数は、前年同月比3 %増の1,055千頭、2〜7月にかけての子牛生産頭数は前年同期比4%増となった。 また乳用種も2%増で全国の肉用牛の総計も2%増の2,723千頭となった(巻末統計 資料参照)。 輸 入・・・引き続き増加 ・ 日米・日豪牛肉交渉により、輸入割当量を63年度以降平成2年度まで毎年6万ト ンずつ増加させるとともに、平成3年度からの輸入割当制度の撤廃を合意された。 ・ 63年度の輸入割当量は、27万4千トン(表5)。 ・ 平成元年度は日米・日豪の輸入割当合意数量と同量の33万4千トン。 ・ 平成元年度に入って、4〜9月期の輸入実績は、前年同月比46%増の199千トン となっている。 ・ 畜産振興事業団は輸入牛肉のおおむね8割を取り扱っている。 9月売渡し分 事業団の9月売渡総数量は、前年同期比135%の24,215トンとなった。部位別売 渡量を対前月でみると、全売渡数量が12%減ったにもかかわらず、「ロイン」及 び「もも」が約10%伸びたのに対し、「バルク」は約40%減の3,271トンと大幅な 減となった。 10月売渡し分 事業団の10月売渡総数量は、年末需要に向かっていることもあって前月比104 %の25,099トン(前年同月比148%)となった。部位別では、「フルセット」「枝 肉」及び「バルク」が前月比に比べ約10%〜50%増の伸びに対し、「ロイン」 「もも」及び「リブばら」は約15〜25%の減少となった(巻末資料参照)。 表5 牛肉輸入割当量の推移 (単位:千トン)
年 度 | 昭和57 | 58 | 59 | 60 | 61 | 62 | 63 | 平成 元年度 |
牛肉輸入 割当量 |
135,000 | 141,000 | 150,000 | 159,000 | 168,000 | 214,000 | 274,000 | 334,000 |
価格動向 国産牛肉卸売価格・・・輸入増にもかかわらず安定した推移 ・ 63年度から改定された枝肉取引規格により価格安定対象牛肉(「B−2・B−3」 規格)についてみると、漸次低下傾向をたどっているが、63年度は概ね安定価格 帯の中心価格と安定上位価格の間で強含みで推移した。 ・ 平成元年度に入っても同様の傾向で推移している。 輸入牛肉卸売価格・・・総じて弱含み傾向 ・ 市場せり状況をみると以下のとおり 11月売渡し 11月の上場数量は、年末の需要期から、前月より、1,500トン増の10,500トン とした。せり結果は、9,065トンで86.3%の落札率となった。部位別の落札率は、 「NO121Bショートプレート」及び「エージドビーフフルセット」が100%であっ たが、「チャックアンドブレード」及び「カウミート」は、約75%であった。ロ イン系は約7%であったが、落札率は徐々に上向いて来ている。 東京食肉市場のせり結果は、今月も「NO180ストリップロイン」は全量不落で あったが、「NO112Aリブアイロールリップオン」は100%の落札率であった。ま た、「NO116スクエアカットチャック」、「チャックアンドブレード」及び「カ ウミート」は、今年度に入り、初めて不落が生じた。 一方、価格の動きは、前月より値下りした(巻末資料参照)。 輸入牛肉の市況(仲間相場) 前年対比では、ほぼ全品目とも値下がりをしており、その値下り幅を大部分の ものが、10〜20%、中には30%を上回る値下がりを示したものもある。 (分割図及び部位名は巻末資料参照) 畜産事業団調査による9月30日及び10月15日の輸入牛肉の市況の状況は、前月 同期からみて北米産にあっては、「NO112Aリブアイロールリップオン」及び「NO 121Bショートプレート」が、オセアニア産にあっては、「リップサイド」「スト リップロイン」及び冷蔵品「フルセット」が若干上向き傾向を示している。 表6 輸入牛肉の市況(畜産振興事業団調べ)
産地 |
品 目 | 9 月 30 日 | 10 月 15 日 | |||||
価 格 円/kg |
比 率(%) | 価 格 円/kg |
比 率(%) | |||||
対前月同期比 | 対前年同期比 | 対前月同期比 | 対前年同期比 | |||||
北米産 | 冷凍品 | NO112A リブアイロールリップオン |
2,096 | 100.9 | 90.2 | 2,113 | 102.6 | 91.4 |
NO116 スクエアカットチャック |
879 | 94.8 | 89.4 | 858 | 96.6 | 65.5 | ||
NO121B ショートプレート |
753 | 100.7 | 97.4 | 768 | 102.4 | 82.8 | ||
NO180 ストリップロイン |
1,806 | 98.9 | 77.6 | 1,783 | 98.9 | 80.0 | ||
NO189 フルテンダーロイン |
2,234 | 97.0 | 91.0 | 2,234 | 100.4 | 91.5 | ||
チャックリブ | 1,589 | 99.9 | 84.9 | 1,575 | 99.4 | 90.3 | ||
オセアニア産 | 冷凍品 | チャック & ブレード | 755 | 101.3 | 78.8 | 747 | 99.5 | 71.1 |
フルブリスケット | 842 | 95.2 | 93.6 | 836 | 96.9 | 83.2 | ||
ポイントエンドブリスケット | 868 | 95.5 | 87.8 | 854 | 97.8 | 80.3 | ||
ナーベルエンドブリスケット | 823 | 96.8 | 97.6 | 828 | 99.8 | 86.2 | ||
キューブロール | 1,768 | 96.7 | 72.8 | 1,771 | 97.8 | 74.7 | ||
ストリップロイン | 1,475 | 94.8 | 70.1 | 1,493 | 100.3 | 77.8 | ||
テンダーロイン | 2,694 | 98.0 | 93.1 | 2,626 | 96.9 | 90.6 | ||
トップサイド | 1,106 | 99.8 | 99.3 | 1,129 | 101.7 | 93.6 | ||
カウミート | 751 | 102.2 | 73.6 | 724 | 98.4 | 69.0 | ||
エージドビーフフルセット | 1,135 | 97.0 | 87.5 | 1,135 | 99.1 | 84.6 | ||
冷蔵品 | キューブローン | 2,459 | 100.1 | 86.2 | 2,442 | 98.8 | 91.4 | |
トップサイド | 1,422 | 97.1 | 83.2 | 1,390 | 93.9 | 84.4 | ||
フルセット | 1,362 | 99.9 | 84.6 | 1,371 | 101.3 | 86.1 |
注:価格は、単純平均である。消費税額分は含まない。 小売価格・・・国産牛肉は横ばい、輸入牛肉はかなりの低下後横ばい ・ 平成元年度に入って4月に消費税の導入もあって若干上昇しその後ほぼ横ばい で推移している。 子牛価格・・・依然高水準 ・ 和子牛は、60〜62年度にかけて上昇し、63年度においてもじり高傾向で推移し たが、平成元年1月をピークにやや低下した。しかし、7月以降は再び上昇気味に ある(表7)。 表7 子牛の取引頭数・価格
年度年月 |
和 め す | 和 去 勢 | 乳用雄子牛 | |||||||
取引頭数 | 価 格 | 取引頭数 | 価 格 | 価 格 | ||||||
(頭) | 前年比(%) | (千円 /頭) |
前年比(%) | (頭) | 前年比(%) | (千円 /頭) |
前年比(%) | (千円 /頭) |
前年比(%) | |
58 59 60 61 62 63 |
76,156 77,227 68,845 66,018 64,437 67,264 |
112.4 101.4 89.1 95.9 97.6 104.4 |
211.1 209.3 256.4 315.6 374.9 414.3 |
80.3 99.1 122.5 123.1 118.8 110.5 |
86,559 86,964 80,574 77,357 77,958 80,044 |
104.5 100.5 92.7 96.0 100.8 102.7 |
246.3 258.2 306.5 368.1 437.4 483.0 |
93.6 104.8 118.7 120.1 118.8 110.4 |
149.2 149.0 158.2 180.3 202.5 205.5 |
100.4 99.9 106.2 114.0 112.3 101.5 |
63. 9 10 11 12 元. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 4〜9 |
5,552 4,619 5,087 5,372 5,370 5,346 7,726 5,733 7,122 5,502 6,243 3,650 5,651 33,901 |
15.1 90.6 107.0 108.9 101.8 104.6 104.2 98.6 97.1 103.1 100.3 104.8 101.8 100.5 |
422.9 401.0 421.5 438.7 456.3 438.9 442.0 424.0 422.3 403.5 435.3 425.7 457.6 428.0 |
107.3 103.6 107.7 111.3 117.0 116.0 113.9 110.0 105.0 102.4 113.8 112.8 108.2 108.6 |
6,779 5,543 5,804 6,477 6,754 6,400 9,109 6,992 8,694 6,238 7,596 4,282 7,189 40,991 |
115.2 89.4 102.5 105.3 98.7 98.4 103.9 104.1 99.6 104.4 100.7 101.6 106.0 102.6 |
494.9 482.1 499.5 508.4 521.8 499.9 509.9 501.3 498.4 483.0 506.8 505.6 529.3 504.1 |
109.8 105.1 109.0 112.2 111.7 111.8 111.4 108.8 104.5 105.1 112.0 112.1 107.0 108.2 |
201.7 202.3 198.9 201.7 202.3 205.1 208.2 223.8 226.7 227.3 226.3 224.5 226.7 235.9 |
100.8 97.9 93.7 94.5 95.9 97.6 99.8 106.3 107.4 106.9 109.0 109.8 111.2 108.6 |
資料:農林水産省「子牛取引情報」、「農村物価指数」 和子牛価格は、全国肉用牛価格安定基金協会調べ。 注:平成元年4月以降は消費税額分を含む。
・ 乳用雄子牛は、自由化決定後の7月から11月頃までにかけてやや弱含みで推移 したが、その後反転して強含みで推移している。 ・ なお、子牛価格は肥育経営の収益性に強く影響される一方、子牛の生産頭数が 増加すると低下する傾向にあり、これらの今後の動向が注目される。
元のページに戻る