(1) 消費 堅調な伸びもやや鈍化 ・ 牛肉の消費は安定的に増加している。特に62年度は10%近い水準で増加した。 63年度も約68万トンで10%近い伸びとなった。 ・ 平成元年度に入って輸入を含む推定出回り量でみると元.4〜2.2月期で前年 同期比2.8%増とやや伸びは鈍化している。同期間では12月は、前年並みにとどま ったが1月は、やや回復に転じ2月は前年がマイナスであったこともあり前年同期 比9.5%増とかなり増加した。 ・ 他方、輸入は、9月以降平成2年1月にかけて急速に伸びが鈍化していたが2月は 前年水準が低かったこともあり、前年同月比大幅増(79.7%増)となり、4〜2月 期で前年同期比28.3%増の331千トンとなった。 ・ 4月以降急速に増大した牛肉在庫量は、10月末をピークにその後減少傾向にあ り、2月末も前月を下回る109千トンとなった。また通関済のものを含めた在庫は ほぼ前月並みとなっている。 ・ なお、推定出回り量の伸びの鈍化の主因は、国内生産の減少に伴うもので、輸 入牛肉に限ってみれば、元.4〜2.2月期でみても前年同期比14.9%増と依然高 い水準にある(国内産は、5.6%減。巻末資料参照)。 ・ 牛肉消費の5割強を占める家計消費は、63年度後半以降はわずかに前年水準を 下回って推移していたが、昨年の8月以降は前年水準をかなり上回って推移して いる。 ・ 加工仕向け量は、62、63年度と極めて高い伸びを示し、平成元年度も高い伸び となっている。 (2) 生産 乳牛のと畜減もあって、前年度を下回る ・ 生産は需要の増加に対応して増加を続けてきたが近年その伸びが次第に鈍化し、 平成元年度に入って前年水準を下回って推移している(4〜2月期4.7%減)。 ・ 種類別には、61〜63年度にかけては肉専用種が減少した分を乳用種が補い、全 体では前年度に比しわずかに増加するという形で推移した。 ・ 平成元年度に入って、和牛が回復に転じた一方、乳用種は雌牛の大幅と畜減も あって、かなりの減少となっている。 ・ なお、61〜63年度にかけて、和牛めすの大幅なと畜減が続いたことから、自家 保留が進み、昨年8月の肉用種のめす飼養頭数は、前年同月比3%増の1,055千頭、 2〜7月にかけての子牛生産頭数は前年同期比4%増となった。また乳用種も2%増 で全国の肉用牛の総計も2%増の2,723千頭となっている(巻末資料参照)。 ・ 8月以降も、去勢和牛のと畜は、前年同期をかなり上回っている(8〜2月前年 同期比5.1%増)のに対して、めす和牛のと畜の伸びはやや低い(同2.7%増)こ とから、めす牛の保留がわずかながら進んでいることとみられる。 (3) 輸入 引き続き増加 ・ 日米・日豪牛肉交渉により、輸入割当量を63年度以降平成2年度まで毎年6万ト ンずつ増加させるとともに、平成3年度からの輸入割当制度の撤廃を合意されて いる。
表2 牛肉輸入割当量の推移
昭和57年度 | 135千トン |
58 | 141 |
59 | 150 |
60 | 159 |
61 | 168 |
62 | 214 |
63 | 274 |
平成元年度 | 334 |
2年度 | |
一般枠 | 167(上期) |
特別枠 | 30(年度) |
・ 輸入割当量は、63年度27万4千トン、平成元年度は日米・日豪の輸入割当合意 数量と同量の33万4千トン、平成2年度の特別枠は3万トン、上期一般枠について は16万7千トンが割り当てられた。 ・ 輸入実績は、平成元年度に入って、4〜2月期で前年同期比28%増の331千トン となっている。 ・ 畜産振興事業団は輸入牛肉のおおむね8割を取り扱っており、平成元年度及び2 年度上期の事業団への輸入割当数量は、元年度278.1千トン及び2年度上期150.3 千トンでそのうち平成元年度4月から平成2年3月までに305.9千トンの買入れ(前 年同期比32.3%増)、295.9千トンの売渡し(前年同期比21.6%増)を行った。 3月売渡し分 ・ 事業団の3月の売渡総数量は、前月比で22.4%増の29,070トン(前年同月比43. 6%増)となった。部位別では、前月に比べ「かた」「ロイン」「リブ・ばら」 及び「もも」が大幅に増加し、特に「もも」は前月比154.8%増となった反面 「バルク」は、大幅減となった。 新SBSの品目別受渡し実績 平成元年度下期の新SBSの受渡し実績は、総数量77,942.6トンであり、63年度 下期の数量より35.9%(20,581.6トン)増加した。 なお、元年度上期との比較では、9.6%(6,857.6トン)の増加であった。 品目別の受渡し数量の動向を見ると
63年度下期 平成元年度下期 | ||
枝 肉 | 9.6% → 18.6% | 9.0ポイント増加 |
ロイン | 14.6% → 8.8% | 5.8ポイント減少 |
バルク | 9.7% → 7.5% | 2.2ポイント減少 |
か た | 28.3% → 20.4% | 7.9ポイント減少 |
も も | 13.8% → 20.1% | 6.3ポイント増加 |
リブ・ばら | 22.8% → 21.0% | 1.8ポイント減少 |
フルセット | 1.0% → 2.9% | 1.9ポイント増加 |
冷蔵品 | 23.1% → 42.8% | 19.7ポイント増加 |
冷凍品 | 76.9% → 57.2% | 19.7ポイント減少 |
となっている。 特徴的な動向は、 @ 「枝肉」が大幅に増加 A あまり需要が無いと言われていた「もも」も大幅に増加 B 需要が強いと言われた「ロイン」はかなり減少 C 「かた」も大幅に減少 D 冷蔵品が大幅に増加、となっている。 平成2年1月号の「畜産の情報」で述べたように、輸入牛肉の出回量が多くなって くれば特定品目に集中する事はなく、いずれナチュラルフォールに近い比率に落ち 着くものと思われる。 (詳細は、資料編の「新SBSの品目別受渡実績(平成元年度下期累計)」を参照) (4) 価格動向 @国産牛肉卸売価格 輸入増にもかかわらず安定した推移 ・ 63年度から改訂された枝肉取引規格により価格安定対象牛肉(「B−2・B−3」 規格)についてみると、63年度はおおむね安定価格帯の中心価格と安定上位価格 の間で強含みで推移した。 ・ 平成元年度に入っても安定上位価格付近で堅調に推移している。 ・ 種類別、にみると乳雄を除いてやや強含み、格付別にみると最も低価格の乳雌 のC1を除いてやや強含みで推移している A輸入牛肉卸売価格 総じて弱含み傾向 ・ 市場せり状況をみると以下のとおり 4月売渡し ・ 4月の上場数量は、前月より1,700減の7,000トンとした。せり結果は、6,903ト ンで94.1%の落札率となった。 部位別の落札率は、「NO116スクエアカットチャック」、「NO121Bショートプ レート(1)」、「チャックアンドブレード」、「カウミート」及び「エージドビ ーフフルセット」が全量落札となり、「NO189フルテンダーロイン」91.9%、「112Aリブ アイロールリップオン」90.8%、及び「NO180ストリップロイン」81.9%の落札 率となった。 東京食肉市場のせり結果は、全量落札し、一方、価格の動きは、各品目とも前 月より値を上げたが、特に「NO116スクエアカットチャック」及び「チャックア ンドプレード」は、大幅な値上がりとなった(巻末資料参照)。 輸入牛肉の市況(仲間相場) 事業団調査による2月28日及び3月15日の輸入牛肉の市況の状況は、前年同月比で は、ロイン系を除き値下がりをしており、大部分のものか約10%、中には30%近く 値下がりを示した品目もあった。 また、前月比では、若干の品目を除き値下がりをしており、特に冷蔵品が10%を 上回る値上がりを示した。
表7 輸入牛肉の市況(畜産振興事業団調べ)
産地 |
品 目 | 2 月 28 日 | 3 月 15 日 | |||||
価 格 円/kg |
比 率(%) | 価 格 円/kg |
比 率(%) | |||||
前月比 | 前年 同月比 |
前月比 | 前年 同月比 |
|||||
北米産 | 冷凍品 | NO112A リブアイロールリップオン |
2,255 | 94.0 | 100.6 | 2,185 | 93.4 | 96.8 |
NO116 スクエアカットチャック |
836 | 100.1 | 94.9 | 845 | 101.6 | 97.6 | ||
NO121B ショートプレート |
726 | 98.6 | 70.7 | 722 | 98.6 | 73.8 | ||
NO180 ストリップロイン |
1,803 | 99.3 | 88.2 | 1,785 | 98.3 | 88.8 | ||
NO189 テンダーロイン |
2,410 | 98.0 | 100.5 | 2,361 | 98.3 | 98.7 | ||
チャックリブ | 1,589 | 100.7 | 83.7 | 1,570 | 98.3 | 87.5 | ||
オセアニア産 | 冷凍品 | チャック & ブレード | 808 | 102.3 | 79.8 | 792 | 97.8 | 78.1 |
フルブリスケット | 825 | 97.5 | 91.5 | 807 | 96.9 | 87.1 | ||
ポイントエンドブリスケット | 878 | 98.3 | 99.2 | 866 | 99.0 | 93.7 | ||
ナーベルエンドブリスケット | 834 | 97.4 | 93.4 | 810 | 97.9 | 88.6 | ||
キューブロール | 2,012 | 95.9 | 99.0 | 1,956 | 94.9 | 97.3 | ||
ストリップロイン | 1,563 | 98.4 | 93.4 | 1,508 | 95.5 | 89.2 | ||
テンダーロイン | 2,807 | 99.3 | 105.1 | 2,890 | 98.8 | 111.8 | ||
トップサイド | 1,134 | 93.6 | 96.0 | 1,086 | 92.5 | 94.5 | ||
カウミート | 719 | 98.8 | 82.1 | 700 | 95.5 | 79.8 | ||
エージドビーフフルセット | 1,164 | 92.3 | 90.4 | 1,129 | 93.8 | 87.5 | ||
冷蔵品 | キューブロール | 2,184 | 94.3 | 77.6 | 2,016 | 88.9 | 71.1 | |
トップサイド | 1,499 | 96.0 | 94.8 | 1,338 | 85.9 | 86.5 | ||
フルセット | 1,392 | 95.5 | 89.2 | 1,307 | 89.8 | 80.3 |
注:価格は、単純平均である。消費税額分は含まない。 B小売価格 国産牛肉は横ばい、輸入牛肉はかなりの低下後横ばい ・ 平成元年度に入って4月に消費税の導入もあって若干上昇しその後ほぼ横ばい で推移している。
C子牛価格 依然高水準 ・ 和子牛は、60〜63年度にかけて上昇し、平成元年度も前年水準を上回り、和め すは、12月、去勢和子牛は1月に過去の最高価格を示したものの2月は、いずれも 5万円弱の値下がりとなった。 ・ 乳用雄子牛は、自由化決定後の63年7月から11月頃までにかけてやや弱含みで 推移したが、その後反転して強含みで推移し、平成2年2月は、過去最高値であっ た1月をわずかに下回る234千円となった。また、生後7日程度のヌレ子の農家販 売価格も平成2年2月は、129千円で、前年同月を2割強上回っている。 ・ なお、子牛価格は肥育経営の収益性に強く影響される一方、子牛の生産頭数が 増加すると低下する傾向にあり、これらの今後の動向が注目される。
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