牛肉


(1) 消費
 やや鈍化から堅調な伸びへ

・ 牛肉の消費は62、63年度の2ヵ年連続して10%近い伸びを示したものの、元年
 度は国産牛肉の生産(供給)が減少したこともあり約70万トン(前年度比2.4%
 増)とその伸びはやや鈍化した。

・ 年明け以降、推定出回り量は再び高い伸びを示しており、2年上期(4〜9月)
 は前年同期比10.3%増となった。

  9月に入って、推定出回り量の伸び率は鈍化しているものの、引き続き前年水
 準を上回って推移している(前年同月比2.1%増)(図11)。

・ 牛肉の消費構造は、最大の消費部門である家計消費の割合が50年には69.5%で
 あったものが元年には50.2%にまで減少する一方、加工仕向の割合は着実に拡大
 元年には15.1%に達した。また、その他の業務用需要等については、50年の17.3
 %から元年には34.7%へと顕著な伸びを示している(図12)。

・ 加工仕向け量は、62、63年度と極めて高い伸びを示し、元年度も前半は高い伸
 びを続けたが、ハンバーガーパティ等の生産が落ち込んでいることから1月以降
 前年を下回って推移している(8月、前年同月比17.8%減)(図13)。

(2) 生産
 乳牛のと畜減もあって低水準にあった生産は、回復基調へ

・ 生産は元年度に入って以降前年を下回って推移してきたが、7、8月は前年水準
 を上回り、9月も前年同月比99.7%とほぼ前年並であったことから引き続き回復
 基調にあるものとみられる(図14)。

・ 種類別には、61〜63年度にかけては肉専用種が減少した分を乳用種が補う形で
 推移してきたが、元年度は和牛が回復に転じたものの、乳用種は雌牛の大幅と畜
 減もあって、国内生産はかなりの減少となった。

  2年度に入って、和牛のと畜頭数は前年水準を大きく上回っているものの(4〜
 9月、前年同期比めす和牛3.2%増、去勢和牛10.2%増)、伸び率はめす和牛を中
 心に鈍化している。(9月前年同月比、めす和牛0.7%増、去勢和牛7.4%増)。
 一方、乳牛は依然として前年水準を下回る水準にあるものの(4〜9月前年同期比
 肥育おす牛4.1%減、めす牛5.2%減)、7、8月の乳用めす牛のと畜頭数が前年を
 上回るなど、減少率は縮小しており、乳牛からの枝肉生産は回復傾向にあるもの
 とみられる。(図15)。

・ 2年8月現在の肉用牛の飼養頭数は、2,726千頭(前年比101.4%)であり、その
 内訳は肉用種1,673千頭(前年比101.6%)、乳用種1,053千頭(前年比101.1%)
 であった(農林水産省「肉用牛の飼養動向」)。

(3) 輸入
 一時停滞していた輸入も回復へ

・ 日米・日豪牛肉交渉の結果、輸入割当量を63年度以降2年度まで毎年6万トンず
 つ増加させるとともに、平成3年度には輸入割当制度を撤廃することが合意され
 ている(表2)。
表2 牛肉輸入割当量の推移
昭和57年度 135千トン
58 141
59 150
60 159
61 168
62 214
63 274
平成元年度 334
2年度 394
一般枠 364
特別枠 30
・ 既に、日本・日豪合意に即して2年度までの輸入枠が発表されており2年度につ
 いては、一般枠36万4千トン特別枠3万トン、計39万4千トンが割当てられること
 となった。

・ 輸入実績は、輸入割当量の増大に伴い年々増加してきた。2年度に入って7、8
 月は比較的高水準の輸入が行われたものの、2年度上期(4〜9月)は対前年同期
 比8.2%減と前年水準をかなり下回って推移している(図16)。

  牛肉の9月の推定期末在庫は、前月に比べ出回り量、輸入量共に4,000トン程度
 減し、国内生産はほぼ前月と同水準であったことから、111千トンとほぼ前月と
 同水準であったが、うち、民間在庫は約5,400トン減少した(図17、巻末資料参
 照)。

畜産振興事業団の売買状況 

・ 畜産振興事業団は輸入牛肉のおおむね8割を取り扱っており、元年度及び2年度
 の事業団への輸入割当数量は、元年度278.1千トン及び2年度327.6千トンでその
 うち元年度には305.9千トンの買入れ(前年同期比32.3%増)、295.9千トンの売
 渡し(前年同期比21.6%増)を行った。

10月売渡し分
・ 事業団の10月売渡総数量は、前月比1.3%減の22,255トン(前年同月比11.3%
 減)となった。

  部位別では、前月に比べ「バルク」30.0%、「フルセット」22.0%、「枝肉」
 21.3%及び「もも」14.0%増となった反面、「リブ・ばら」は24%の大幅減とな
 った。

(4) 価格動向  
 @国産牛枝肉卸売価格 
 7月以降堅調に推移 
・ 価格安定対象牛肉(「B−2・B−3」規格)についてみると、3月以降弱含みと
 なり、6月までは中心価格と安定上位価格の中間付近で推移したが、7月、8月と
 価格は安定上位価格を突破し、9月以降も安定上位価格付近で堅調に推移してい
 る(図18)。

・ 格付別にみると、和牛はA5やA4の高級品が引き続き堅調に推移し、乳雄はB2の
 価格が7月から回復に転じたことから今年の3月以降広がってきたB2、B3の価格差
 は縮小の傾向にあり、これに伴って乳雄の平均価格も7月以降回復している(図
 19、20)。乳雌については、C1の価格は依然弱含みにあり、乳雌平均価格は弱含
 みで推移している(図19、20)。

・ 国内の仲間相場は、このような卸売相場の動きを反映して推移してきている
 (図21)。

 A輸入牛肉卸売価格 
 総じて弱含み傾向 
・ 市場せり状況をみると以下のとおり 
  11月の上場数量は、前月より約2,000トン増の8,643トンとし、また、本月は上
 場品目を1品目(No.116Aチャックロール)増やし、14品目とした。

  せり結果は、7,059トンで81.7%の落札率となった。

  品目別に落札率をみると、今回は全量落札はなく、「エージドビーフ・フルセ
 ット」97.8%、「No.121Bショートプレート(1)」96.3%、「No.189フルテンダー
 ロイン」92.7%、「フルブリスケット」91.7%及び「チャック&ブレード」91.0
 %と落札率は高かったのに対し、「シックフランク」44.0%、「No.112リブアイ
 ロール」52.4%、「No.180ストリップロイン」54.6%及び「No.116スクウェアカ
 ットチャック」59.8%の落札率が低かった。

  東京食肉市場のせり結果は、全量落札品目は、「No.189フルテンダーロイン」
 及び「エージドビーフ・フルセット」の2品目で、落札率の高かったのは、「No.
 116Aチャックロール」98.0%及び「No.121Bショートプレート(1)」95.0%であっ
 た。

  反面、「No.114ショルダークロッド」48.3%、「カウミート」47.1%、「No.
 116スクエアカットチャック」36.9%及び「シックフランク」6.4%と落札が低か
 った。

  一方、価格の動きは、前月に比べ全品目が値を下げた。

輸入牛肉の市況(仲間相場) 
 事業団調査による9月30日及び10月15日の輸入牛肉の市況の状況は、前年同月比
では、北米産及びオセアニア産のロイン系、オセアニア産のチャック&ブレード及
びエージド・ビーフフルセットを除き値下がりをしており、大部分のものが約10%、
中には20%近く値下がりを示した品目もあった。

 また、前月比では、全体的に前月並みか値上がりしたが、北米産の「チャックリ
ブ」、オセアニア産の「ポイントエンドブリスケット」及びロイン系の値下がりが
大きかった。

 なお、主要部位の価格の動向は図22のとおりである。
表3 輸入牛肉の市況(畜産振興事業団調べ) 

産地

品   目 8 月 31 日 9 月 15 日
価 格
円/kg
比   率(%) 価 格
円/kg
比   率(%)
前月
同期比
前年
同月比
前月
同期比
前年
同月比
北米産 冷凍品 NO112A 
リブアイロールリップオン
2,178 100.7 103.9 2,166 99.7 102.5
NO116 
スクエアカットチャック
877 101.9 99.8 858 98.2 100.0
NO121B
ショートプレート
673 99.9 89.4 679 101.8 89.7
NO180 
ストリップロイン
1,838 102.0 101.8 1,825 99.8 102.4
NO189 
テンダーロイン
2,486 100.7 111.3 2,467 99.2 110.4
チャックリブ 1,291 97.7 81.2 1,266 95.1 80.4
オセアニア産 冷凍品 チャック & ブレード 860 111.3 113.9 813 102.9 108.8
フルブリスケット 661 100.5 78.5 657 102.2 78.6
ポイントエンドブリスケット 716 98.9 82.5 688 95.7 80.6
ナーベルエンドブリスケット 602 100.2 73.1 600 101.9 72.5
キューブロール 2,157 98.0 122.0 1,969 89.9 111.2
ストリップロイン 1,688 96.5 114.4 1,733 98.7 116.1
テンダーロイン 3,104 95.1 115.2 3,117 98.8 118.7
トップサイド 949 105.2 85.8 986 106.8 87.3
カウミート 724 103.7 96.4 722 101.3 99.7
エージドビーフフルセット 1,147 104.5 101.1 1,155 102.7 101.8
冷蔵品 キューブロール 2,253 101.4 91.6 2,138 93.9 87.6
トップサイド 1,379 108.3 97.0 1,354 98.8 97.4
フルセット 1,342 111.4 98.5 1,328 104.2 96.9
注:価格は、単純平均である。消費税額分は含まない。

 B小売価格
 国産牛肉は弱含み、輸入牛肉も横ばいないし低下
・ 国産牛肉は、年明け以降、堅調に推移してきたが、8月、9月と2ヵ月連続して
 低下した後、10月は前月と同水準で推移している。

  輸入牛肉は、元年後半に入って弱含みで推移した後、年明け以降、若干上昇し
 た。その後、夏場に入り一時弱含みとなったものの、おおむね横ばいで推移して
 いる(図23)。

 C子牛価格
 水準は高いものの弱含みへ
・ 和子牛価格は、和めすは元年12月に484千円、去勢子牛は2年1月に563千円と過
 去最高価格を記録した後、本年3月にかけて5〜6万円の低落をみせた。その後、
 和去勢価格は若干回復の動きを示し、(9月522千円/頭)、和めす価格も9月は
 前月を上回った(9月429千円/頭)(図24)。

・ 乳用雄子牛は、自由化決定後の63年7月から11月頃までにかけてやや弱含みで
 推移したが、その後反転し、2年1月には、235千円と過去最高値を記録した。そ
 の後次第に価格を下げ、8月には188千円となったものの、9月には189千円と若干
 持ち直した。また、生後7日程度のヌレ子の農家販売価格も6月以降急落し、8月
 には74千円となったが、9月には75千円と持ち直した(図22)。 

・ なお、子牛価格は肥育経営の収益性に強く影響される一方、子牛の生産頭数が
 増加すると低下する傾向にあり、今後の枝肉価格の動向、乳雄子牛の供給動向等
 を注視する必要があろう。

・ 10月23日、平成2年度第二四半期の指定肉用子牛の平均売買価格が次のとおり
 告示され、全品種とも保証基準価格を上回り、その結果、生産者補給金の交付に
 は至らなかった。

黒毛和種及び褐毛和種
 463.0千円(2年度保証基準価格 304千円)
その他肉専用種
 214.2千円(     〃    214千円)
乳  用  種
 187.0千円(     〃    165千円)


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