(1) 生乳生産 伸び率は2ヵ月連続して前年水準を下回る ・ 63年度、平成元年度と高い伸びを記録した生乳生産は、平成2年に入り伸び率 は次第に鈍化し、8月には、62年10月以来2年10ヵ月振りに前年同月を下回った (前年同月比99.2%)。 9月は、北海道の伸び率が引き続き前年同月を下回ったが(99.3%)、都府県 が前年同月を上回った(100.3%)ため減少幅は縮小したものの(前年同月比99. 9%)、前月に引き続き前年同月を下回った(図1)。 これを季節調整値でみると、9月の1日当たり生産量は、北海道は8月を下回っ たものの、都府県は前月を上回ったことにより、全国の生産量は平成2年3月以来 初めて上昇に転じた(図2)。 ・ 乳用めす牛のと畜頭数は近年、前年を大きく下回って推移してきたが、元年夏 を境に減少割合(前年同月比)は着実に縮小している(前年同月比9月94.8%)。 一方、格付結果から、と畜された乳用めす牛の内訳をみると、63年度には約45 %を占めていた未経産牛の割合は、最近では約30%を下回り(9月26.9%)、逆 に、経産牛の割合は、55%から70%を上回る水準へと大きく上昇している(9月 73.1%)(巻末統計参照)。 以上のことから、未経産牛のと畜は減少(若雌の保留は進展)しているものの、 経産牛のと畜が進んでおり、乳群の構成も若令化が進展しているものとみられる。 (2) 飲用牛乳等の需給 好天に恵まれ需要の伸びは鈍化から再び高い伸びへ ・ 平成元年12月以降、低い伸びにとどまっていた飲用等向け処理量の伸びは、5 月以降再び高い伸びを示し始め、9月は8月ほどではないが前年同月比2.6%の増 加となった(図4)。 これを季節調整値でみると、5月から8月にかけて順調に伸びた1日当たり飲用 等向け処理量は、9月に入って5ヵ月振りに前月を下回ったものの、依然として1 4,000トンを上回る水準で推移している(図5)。 ・ 飲用牛乳の生産は、元年12月以降低い伸びにとどまっていたが、2年5月以降大 幅な伸びを示し、9月も対前年同月比2.0%増と引き続き増大した(図6)。 その内訳をみると、5月以降高い伸びを示した牛乳の伸び率は前年同月比1.4% 増と鈍化したものの、加工乳は引き続き高い伸び(9月前年同月比5.8%増)を維 持している(図7)。 これまで高い伸びを示してきた醗酵乳の生産は7月に前年同月水準を下回って 以来伸び悩んでいる(9月前年同月比96.3%)。 一方、これまで低調に推移していた乳飲料の生産は、6月以降高い伸びを記録 し、9月に入っても前年同月比11.7%増と引き続き増加している(図6)。 (3) 乳製品の需給、価格動向 飲用需要の回復に伴い生産は急減、事業団はバターを輸入・放出 ・ 63年度以降から元年度前半にかけてひっ迫した乳製品の需給は、畜産振興事業 団によるバター、脱脂粉乳の輸入・放出、国内生乳生産の増加、更には元年12月 以降飲用需要の伸びが鈍化したことによる乳製品の生産増等により、均衡に向か い、元年度末のバター、脱脂粉乳の在庫はほぼ適正水準の範囲におさまった(表 1)。 ・ しかし、2年度に入り、5月以降の飲用需要の高い伸びと生乳生産の伸び悩みに 伴い乳製品向け生乳処理量の伸びは5月に大きく鈍化したのに続き、6月には1.9 %減と63年6月以来ほぼ2年ぶりに前年同月を下回り、7月以降前年同月を大きく 下回って推移している(9月対前年同月比6.3%減)(図4)。 これに伴いバター、脱脂粉乳の生産量は、6月以降前年同月を下回り、9月は、 バター17.7%減、脱脂粉乳10.5%減となった(図8、9)。 この結果、バターの生産水準(季節調整値)は、近年最も生産が減少した62、 63年の水準を下回るに至った(図10)。 こうした乳製品の需給動向を反映して、バターの卸売価格は5月から、脱脂粉 乳は7月からおおむね横ばいで推移している(9月、バター1,127円/kg、脱脂粉 乳13,452円/25kg)。このような状況にあって、畜産振興事業団は、9月に2,992 トン、11月に1,008トンのバターの輸入手当を行い、11月6日、2,342トンを放出 した。
表1 乳製品の在庫(各年度末) (単位:千トン、ヵ月)
\ |
区分 | バ タ ー | 脱脂粉乳 | ||||
年度 | \ |
民 間 | 事業団 | 計 | 民 間 | 事業団 | 計 |
55 |
16(3.1) 7(1.3) 12(2.1) 17(2.8) 20(3.3) 30(4.6) 29(4.4) 12(1.8) 16(2.2) 17(2.3) |
12(2.3) 12(2.1) 3(0.5) 1(0.2) 0 0 0 0 0 0 |
28(5.4) 19(3.4) 15(2.6) 18(2.9) 20(3.3) 30(4.6) 29(4.4) 12(1.8) 16(2.2) 17(2.3) |
31(3.3) 16(1.5) 24(2.0) 23(1.9) 22(1.5) 32(2.3) 36(2.5) 13(0.9) 18(1.2) 33(2.2) |
44(4.7) 44(4.2) 22(1.9) 9(0.7) 8(0.6) 8(0.6) 7(0.5) 7(0.5) 4(0.3) 0 |
75(8.0) 59(5.7) 45(3.8) 32(2.6) 30(2.1) 40(2.8) 44(3.0) 20(1.4) 23(1.5) 33(2.2) |
資料:農林水産省畜産局調べ
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