牛肉


(1) 消費

 やや鈍化から堅調な伸びへ

・ 牛肉の消費(推定出回り量)は、元年度には前年度比2.4%増と伸びが鈍化し
 たものの、2年度に入り、再び高い伸びを示しており、3年2月は、前年同月比8.9
 %増と引き続き好調に推移している。この結果、4〜2月でみた場合、前年同期比
 9.9%増と前年水準を大きく上回っている(図15)。

・ 牛肉消費の約5割を占める家計消費は、63年度後半以降はわずかに前年水準を
 下回って推移していたが、元年の8月以降おおむね前年水準を上回り堅調に推移
 している(3年1月105.1%、4〜1月102.7%)(図16)。

・ 加工仕向け量は、2年1月以降ハンバーガーパティ等の生産が落ち込んでいるこ
 とから前年を下回って推移しており(4〜1月86.9%)、3年1月も対前年同月比86
 .9%と大きく落ち込んだ(図16)。

(2) 生産

 低水準にあった生産は、回復へ

・ 生産は元年度に入って以降前年を下回って推移してきたが、2年7月以降おおむ
 ね前年水準を上回っており(3年2月前年同月比101.1%)、本年度に入って着実
 に回復している(図17)。
  
・ 種類別にみると、2年度に入って、和牛のと畜頭数は去勢和牛を中心に前年水
 準を大きく上回って推移しており(3年2月前年同月比106.5%、4〜1月前年同期
 比108.0%)、一方、乳牛のと畜頭数は、10月以降毎月前年を上回ってきたが、3
 年2月には、肥育おす牛、めす牛ともに前年同月を下回った(前年同月比、肥育
 おす牛98.9%、めす牛98.1%)(図18)。

(3) 平成2年肥育牛生産費

 @去勢和牛

 粗収益は増加したものの、もと畜費の上昇等により所得は減少

・ 平成2年(調査期間平成元年8月〜2年7月)の去勢和牛(去勢若令肥育)生体10
 0kg当たりの第2次生産費は、労働時間の短縮により労働費は減少したものの、も
 と畜費と飼料費が上昇したため、前年比8.4%増の120千円となった。

・ 生産費の費目構成(物財費に労働費を加えた費用合計に対する各費目の割合)
 をみてみると、もと畜費が58.2%、飼料費が26.0%、労働費が9.9%を占め、こ
 れら3費目で94.1%に達している。

・ 肥育牛1頭当たり所得は、粗収益が増加(4.5%)したものの、もと畜費の上昇
 等により物財費が増大したため、前年に比べ27千円(13.3%)減少し、178千円
 となった。

 A乳おす

 生産費は上昇したものの、粗収益の増加により、収益性は改善

・ 乳用おす肥育牛生体100kg当たりの第2次生産費は、飼料費及びもと畜費が上昇
 したため、前年に比べ4.0%増加し、68千円となった。

・ 生産費の費目構成をみてみると、もと畜費が49.4%、飼料費が36.3%、労働費
 が7.2%となっており、これら3費目で92.9%を占めている。

・ 肥育牛1頭当たり所得は、生産費の増加にもかかわらず、粗収益は前年に比べ
 27千円(5.0%)増加したため、2.7%増加し、99千円となった。

(4) 輸入

 一時停滞していた輸入も回復へ

・ 日米・日豪合意に即して2年度までの輸入枠が発表されており2年度については、
 一般枠36万4千トン、特別涌く万トン、計39万4千トンが割当てられた(表1)。
表1 牛肉輸入割当量の推移
昭和57年度 135千トン
58 141
59 150
60 159
61 168
62 214
63 274
平成元年度 334
2年度 394
一般枠 364
特別枠 30
・ 輸入実績は、2年度に入って前半はおおむね前年水準を下回っていたものの、
 10月以降は前年を大きく上回って推移しており(3年2月前年同月比122.4%)、
 4〜3年2月でみても対前年同期比106.1%と前年水準を上回っている(図19)。

  牛肉の3年2月の推定期末在庫は、120千トンと前月に比べ約1,300トン増加した。
 その内訳をみると、畜産振興事業団在庫は前月に比べ約1,000トン、民間在庫は
 約150トンいずれも減少した(図20)。なお、畜産振興事業団の品目別在庫は巻
 末資料に掲げるとおりである。

畜産振興事業団の売買状況 

・ 平成3年度からの牛肉の輸入数量制限の撤廃に伴い、事業団の牛肉輸入業務は2
 年度をもって終了した。

・ 2年度に、事業団に割り当てられた輸入牛肉の数量は、327,600トンであるが、
 平成2年12月末までに全量買入れ契約を完了し、年度末までにすべて買い入れた。

・ 平成2年度における買入数量は、319,939トン、売渡数量は、290,469トンであ
 った。

・ その結果、平成2年度末の在庫量は、56,357トンとなった。

3月売渡し分
・ 事業団の3月売渡総数量は、前月比13.8%増の24,698トン(前年同月比15%減)
 となった。

  部位別では、前月に比べほとんどの部位で増加し、減少したのは「バルク」
 (12.1%減)のみであった。

(5) 価格動向 
 
 @国産牛枝肉卸売価格 
 2月に入って弱含みへ 

・ 価格安定対象牛肉(「B−2・B−3」規格)についてみると、2年7月、8月と価
 格は安定上位価格を突破し、9月以降も安定上位価格付近で堅調に推移してきた。
 その後、2月に入って卸売価格は弱含みとなり、中心価格付近(1,168円/kg)ま
 で低下したものの、3月に入ってからは再び持ち直している(図21)。

・ 格付別にみると、2月は、これまで堅調に推移してきた和牛のA5やA4の高級品
 が値を下げ、乳雄のB2、乳雌のC1等の低級品も弱含みに推移してきたことから
 (図22)、和牛、乳牛いずれも平均価格を下げている(図23)。

・ 国内の仲間相場は、このような卸売相場の動きを反映して推移してきている
 (図24)。

 A輸入牛肉卸売価格 
 総じて弱含み傾向 

・ 市場せり状況をみると以下のとおり 
  4月の上場数量は、6,000トンとし、うち一斉せり売り上場数量は、4,951トン
 とした。(残りの数量は月末のせり売りに上場される。)

  せり結果は、3,825トンで77.3%の落札率となった。

  品目別に落札率を見ると、「フルブリスケット」90.5%及び「チャック&ブレ
 ード」90.3%と落札率が高かったのに対し、他の品目は落札率が低く、特に「No.
 189フルテンダーロイン」36.6%及び「No.180ストリップロイン」42.3%及び
 「No.112Aリブアイロール」46.5%が低かった。

  東京食肉市場の一斉せり結果は、全量落札品目は、「チャックロール」だけで
 あった。
 
  その他の品目の落札率は「エージドビーフフルセット」96.8%と高たったが、
 他の品目は低く、「No.180ストリップロイン」は全量不落、「No.189フルテンダ
 ーロイン」3.6%、「No.112Aリブアイロール」21.3%及び「No.114ショルダーク
 ロッド」27.7%と特に低かった。

  一方、価格の動きは、前月に比べ値を上げたのは、「No.114ショルダークロッ
 ド」だけであった。

輸入牛肉の市況(仲間相場) 

 事業団調査による2月28日及び3月15日の輸入牛肉の市況の状況は、前年同期比で
は、大部分の品目が値下がりしており、中には20%近く値下がりを示した品目もあ
った。

 また、前月比でも、若干の品目を除き値下がりを示した。

 なお、主要部位の価格の動向は図25のとおりである。
 輸入牛肉の市況(畜産振興事業団調べ) 

産地

品   目 2 月 28 日 3 月 15 日
価 格
円/kg
比   率(%) 価 格
円/kg
比   率(%)
前月
同期比
前年
同月比
前月
同期比
前年
同月比
北米産 冷凍品 No.112A 
リブアイロールリップオン
2,163 98.4 95.9 2,137 97.2 100.5
No.116 
スクエアカットチャック
850 100.2 101.7 822 96.8 93.7
No.121B
ショートプレート
706 103.1 97.2 686 96.2 93.2
No.180 
ストリップロイン
1,789 96.3 99.2 1,749 95.4 98.5
No.189 
テンダーロイン
2,329 99.9 96.6 2,270 94.7 97.6
チャックリブ 1,226 104.0 77.2 1,172 98.7 76.0
オセアニア産 冷凍品 チャック & ブレード 716 98.2 88.6 715 99.6 84.6
フルブリスケット 678 103.5 82.2 610 89.6 74.6
ポイントエンドブリスケット 741 103.1 84.4 667 90.4 77.3
ナーベルエンドブリスケット 626 103.5 75.1 575 94.0 72.1
キューブロール 1,615 96.5 80.3 1,644 101.6 86.0
ストリップロイン 1,542 106.5 98.7 1,502 98.3 100.2
テンダーロイン 2,628 98.5 93.6 2,647 98.8 91.9
トップサイド 895 98.7 78.9 878 98.1 82.2
カウミート 673 98.8 93.6 669 99.7 93.8
エージドビーフフルセット 1,022 100.1 87.8 1,038 101.5 93.4
冷蔵品 キューブロール 1,871 97.4 85.7 2,051 103.3 102.4
トップサイド 932 97.8 62.2 919 94.5 74.2
フルセット 1,060 102.3 76.1 1,055 90.2 87.4
注:価格は、単純平均である。消費税額分は含まない。

 B小売価格
 国産牛肉、輸入牛肉ともおおむね横ばい

・ 国産牛肉は、2年秋に若干低下したものの、3年に入って再び2年夏の水準にま
 で戻している(3年3月390円/100kg)。

  輸入牛肉は、2年夏に一時弱含みとなったものの、おおむね横ばいで推移して
 いる(図26)。

 C子牛価格
 一時の低迷から回復した後やや弱含みへ

・ 和子牛価格は、和めすは元年12月、和去勢は2年1月に過去最高価格を記録した
 後、昨年3月にかけて5〜6万円の低落をみせ、その後、短角種の出荷が集中した
 10月を除き横ばいから回復基調で推移してきた。3年1月に入り、価格は弱含みに
 転じ、2月は和めすは418千円、和去勢雄は494千円に低下したものの、依然とし
 て保証基準価格を大きく上回る水準にある(図27)。なお、主要市場の価格動向
 は図28のとおりとなっている。

・ 乳用雄子牛は、2年1月に、235千円と過去最高値を記録した。その後次第に価
 格を下げ、8月には188千円となった後、横ばいで推移している(3年2月184千円)。

  また、生後7日程度のヌレ子の農家販売価格も6月以降急落し、8月には74千円
 となったが、9月以降持ち直している(3年2月78千円)(図29)。

・ なお、子牛価格は肥育経営の収益性に強く影響される一方、子牛の生産頭数が
 増加すると低下する傾向にあり、今後の枝肉価格の動向、乳雄子牛の供給動向等
 を注視する必要があろう。

(6) 平成2年和子牛生産費
  
 生産費は上昇(1.3%)したものの、粗収益の増加により収益性は上昇 

・ 平成2年和子牛生産費調査(調査期間平成元年8月〜2年7月)によれば、和子牛
 1頭当たり第2次生産費は、飼料費の増加等により前年比1.3%増の422千円となっ
 た。

・ 生産費の費目構成(物財費に労働費を加えた費用合計に対する各費目の割合)
 をみると、飼料費が44.0%、労働費が29.0%、めす牛償却費が11.2%を占め、こ
 れらの費目で全体の84.2%を占めている。

・ 繁殖めす和牛1頭当たりの所得は、物財費が上昇したものの、粗収益も増大し
 た(13千円増)ことから、前年に比べ6千円増加し、225千円となった。

(7) 平成2年乳用おす育成牛生産費
  
 生産費は237千円、所得は37千円 

・ 平成2年から本格実施された乳用おす育成牛生産費調査によれば、平成2年(調
 査期間平成元年8月〜2年7月)の乳用おす育成牛1頭当たりの第2次生産費は、237
 千円であった。
  
  その費目構成(物財費に労働費を加えた費用合計に対する費目の割合)をみる
 と、もと畜費が62.2%、飼料費が24.1%、労働費が6.5%であり、これら3費目で
 全体の92.8%を占めている。

  乳用おす育成牛1頭当たりの粗収益は263千円、所得は37千円であった。


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