牛乳・乳製品


(1) 生乳生産

 低迷していた生産はようやく増産に
 
・ 63年度、平成元年度と高い伸びを記録した生乳生産の伸び率は、平成2年に入
 り次第に鈍化し、8月以降11月まで前年同月を下回って推移した。その後、伸び
 率(前年同月比)はプラスに転じ、月を追って上昇しているものの、依然低水準
 にとどまっている(2月100.6%)(図1)。

  これを、北海道、都府県別にみてみると、生産動向に大きな違いがみられ、ま
 た、その格差は拡大する傾向にある。北海道の生乳生産の伸びは2年10月にプラ
 スに転じた後、毎月上昇し、3年2月には103.4%と大きな伸びとなった。一方、
 都府県は、2年7月以降、9月を除いて前年水準を下回っており、2月も前年同月比
 99.0%にとどまった。

・ これを季節調整値でみると、都府県の生産は、8月を境に回復に転じているも
 のの、回復の足取りは重く、10月以降おおむね横ばいで維持している。一方、6
 月以降ほぼ横ばいで推移してきた北海道の生乳生産は10月に入って上昇に転じ、
 3年2月には年間生産量316万トンの水準に達した。

  この結果、全国ベースの生乳生産量は、8月以降着実に回復しており、3年2月
 は前月に比べ若干の増加にとどまったものの、2年春のピーク時に近い水準にま
 で回復している(図2、3)。

・ 乳用めす牛のと畜頭数は、2年7月に前年同月水準に回復した後、3年1月までは
 2年9月を除いて毎月前年同月水準を上回って推移してきたが、3年2月には5ヵ月
 振りに前年水準を下回った(2月前年同月比98.1%)。

  一方、格付結果から、と畜された乳用めす牛の内訳をみると、63年度には約45
 %を占めていた未経産牛の割合は、最近では30%程度となり(3年2月29.5%)、
 逆に、経産牛の割合は、55%から70%程度と大きく上昇している(3年2月70.5%)
 (巻末統計参照)。

(2) 飲用牛乳等の需給

 暖冬等から需要は堅調な伸びへ

・ 平成元年12月以降、低い伸びにとどまっていた飲用等向け処理量の伸びは、5
 月以降再び高い伸びを示しており、3年2月も前年同月比3.1%の増加となった(図5)。

・ これを季節調整値でみると、2年5月から8月にかけて順調に伸びた1日当たり飲
 用等向け処理量は、9月以降減少ないし横ばい傾向で推移している(図6)。

・ 飲用牛乳の生産は、2年5月以降大幅な伸びを示し、10月は前年同月比6.5%増
 を記録したが、その後伸び率は鈍化の傾向にあり、3年2月は前年同月比2.5%増
 となった。(図7)。季節調整値でみると、飲用等向け処理量と同様、8月以降お
 おむね横ばいで推移している。

  その内訳をみると、牛乳の伸び率は3年1月に3.9%増と比較的高い伸びを示し
 たものの、2月には1.9%増と落ち着いた動きを示した。季節調整値でみると最近
 は横ばいで推移しているものとみられる。加工乳は前年同月比6.6%増と高い伸
 びを維持しているが、季節調整値でみると2年末は減少もしくは横ばいで推移し
 ている(図8)。

  これまで高い伸びを示してきた醗酵乳の生産は7月以降伸び悩んでおり、3年2
 月も前年同月97.4%と再び前年水準を割り込んだ(図7)。

  一方、乳飲料の生産は、6月以降高い伸びを記録した後も、比較的高い伸びを
 続けており、3年2月は前年同月比6.5%増と大きな伸びを示した(図7)。

(3) 乳製品の需給、価格動向

 飲用需要の回復に伴い生産は急減、事業団はバター・脱脂粉乳を輸入・放出 

・ 2年5月以降の飲用需要の高い伸びと生乳生産の伸び悩みに伴い乳製品向け生乳
 処理量の伸びは5月に大きく鈍化したのに続き、6月にはほぼ2年ぶりに前年同月
 を下回り、夏から秋口にかけては前年同月を10%近く下回った。その後、低落率
 は徐々に縮小しており3年2月は前年同月を3.3%下回るにとどまった(図5)。

  1日当たり処理量の季節調整値は、8月を境に回復に転じ、12月まで順調な回復
 をみせたが、3年1、2月は伸びが鈍化した(図9)。

  これに伴い、6月以降バター、脱脂粉乳の生産量は、前年同月を下回っている
 が、減少率(前年同月比)は縮小の傾向にある(3年2月前年同月比、バター92.1
 %、脱脂粉乳97.6%)(図10、11)。

  バター及び脱脂粉乳生産の季節調整値は、1日当たり乳製品向け処理量とおお
 むね同様の動きを示し、夏を境に回復に転じており、3年1、2月に回復のペース
 は鈍化したものの、バターは年間生産量換算76千トン、脱脂粉乳で183千トンの
 水準まで回復している(図12、13)。バター生産の回復が遅れているのは、2年5
 月以降、クリームの生産が急速に増大しているためと考えられる(図14)。

  こうした乳製品の需給動向を反映して、バターの卸売価格は10月以降、脱脂粉
 乳も9月以降上昇に転じ、3年2月には、バターは1,147円/kg、脱脂粉乳13,540円
 /25kgと上昇した(図10、11)。このような状況にあって、畜産振興事業団は、
 平成2年度中に、バター計7,500トン、脱脂粉乳5,000トンの輸入手当を行うとと
 もにバター計6,000トン、脱脂粉乳3,962トンを放出した。また、平成3年度に入
 って、4月10日にバター2,000トン、脱脂粉乳11,991トンの輸入手当を行うととも
 に4月11日にバター1,027トン、脱脂粉乳1,456トンを放出した。

輸入手当(買入れ入札)

 平成 2年 9月12日 バター   2,992トン
     11月 1日 バター   1,008トン
     12月27日 バター   2,000トン
          脱脂粉乳  4,000トン

 平成 3年 2月 5日 バター   1,500トン
          脱脂粉乳  1,000トン
      4月10日 バター   2,000トン
          脱脂粉乳  11,991トン

放出(売渡し入札)
 平成 2年11月 6日 バター  2,342トン
     11月21日 バター   549トン
     12月26日 バター  1,109トン

 平成 3年 2月 7日 バター   895トン
          脱脂粉乳  2,163トン
      2月15日 バター   1,105トン
          脱脂粉乳  1,799トン
      4月11日 バター   1,027トン    
          脱脂粉乳  1,456トン

(4) 平成2年牛乳生産費

 生産費は、1.1%減、収益性は改善

 平成2年の生乳100kg当たり(乳脂率3.5%換算)生産費(調査期間平成元年7月1
日〜2年6月30日)は、規模拡大、副産物である子牛価格の上昇、1頭当たり乳量増
等により、6,985円と前年に比べ81円(1.1%)減少した。

 生産費の費目構成(物財費に労働費を加えた費用合計に対する各費目の割合)は、
飼料費が52.2%、労働費が27.0%を占め、これら2費目で79.2%となっている。

 搾乳牛1頭当たりの収益性は、1頭当たり乳量の増加により粗収益(3.2%増)が
増えたのに対し、1頭当たり生産費の増はわずかにとどまったことから、1頭当たり
所得は312千円と前年に比べ3.3%増加した。


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