★ 事業団便り


出資会社経営者研修会開催される


 11月9日、10日の両日、当事業団が出資している株式会社の役職員を対象に経営
者研修会を開催しました。

 食肉センター、乳業会社等33社の方々の参加を得、牛肉の輸入自由化後1年半を
経過したなかで、我が国畜産、特に、牛肉を中心に自由化後の流通業界の動き、今
後の経済見通しについて、その専門分野でご活躍されておられる先生方から講演し
ていただきましたので、その概要を紹介させていただきます。

1 まず、牛肉に関する最近の情勢について、農林水産省食肉鶏卵課長小畑勝裕氏
 から講演していただきました。

  氏は、食肉鶏卵課長に就任されるまで、林野庁の木材流通課長として木材の需
 給・流通行政を担当されていましたが、木材の種類と価格がピンからキリまであ
 り、牛肉と非常によく似ていることから、現在の牛肉の置かれた立場を輸入自由
 化後30年以上経過した木材と対比し、「肉質の高品質化だけでは、需要に限界が
 あり、一般品との価格プレミアムもいつまで保持できるか疑問である。一般品を
 どのように作るかが問題となっているのではないか、その意味で最近のチラシに
 『国産牛』という広告を見かけることが多く、この傾向を大切に注視する必要が
 ある。そのための課題として、@産地において加工度を高め、最終商品に近づけ、
 A量的拡大、Bカット規格をどうするか、C売れ残り部分肉を業務用としてどの
 ように消費するか等がある。また、食肉センターは、生産、加工、販売の一貫し
 た機能を有し、経済的感覚をもった企業型経営体に改革すべきである」と見解を
 示されました。

2 次に、牛肉輸入自由化後の流通業界の動きについて、潟Cトーヨーカ堂畜産部
 総括マネージャー熊崎弘氏に講演していただきました。

  氏は、「食肉販売実態は、豚肉、鶏肉で利益を上げており、牛肉は目玉商品と
 なっている。牛肉は、最近、和牛、国産牛、輸入牛が同一土俵で比較できるよう
 になり、今後とも、牛肉需要は、安定的に伸びる中で買手市場が続き、消費者の
 選択が働くようになる。現在、“和牛は高いから美味しい”から“美味しいから
 高いのは仕方がない”と評価基準が変化している。国産牛は、汎用性のある“切
 落し”が需要の中心となっている。

  消費者は、やわらかい国産牛を購入したいが、まだ価格が高いとの声も強く、
 消費者が今後どういう選択をするかによるが、輸入牛肉は、国産牛の不足部分の
 補完品として取扱われることとなるのではないか、また、専業主婦が増え、消費
 形態が変化してきているが、量販店は、客層のニーズの変化に応えていないとい
 う厳しい見方があり、今後品ぞろえの幅と売れる商品の絞り込みが課題となって
 いる。そのため、生産・流通・販売の連携が必要となっている」と問題認識を示
 されました。
 
  また、食肉センターに求められているものとして、「量販店には、加工技術の
 蓄積がないため、商品に高度加工を行い、付加価値をつけるべきであること、ま
 た、量販店を選定して、加工販売し、産地を売り込む時期にきている」とされま
 した。

3 最後に、日本経済新聞社編集局次長兼経済部長であり、また、財政制度審議会
 委員及び金融制度調査会専門委員の公職に就任されている堀川健次郎氏から不況
 の分析、景気回復の見通し、景気回復後の日本経済の3項目に分けて平易な言葉
 でわかりやすく講演していただきました。

  この中で、氏は、「今回の不況は、従来の在庫原因(好景気→生産増→生産が
 需要より大→在庫べらし(不況))による通常の循環景気ではなく、金融不況、
 心理的不況、構造不況が原因となっている。戦後、不況に遭っていない自動車、
 コンピューター、金融、百貨店等の業種の不況で、いわゆる素人不況であるので
 不況時の対応に慣れていない。従来であれば、輸出で対処できたが、現在は、貿
 易摩擦のため輸出には、限度がある。また、バブル崩壊による落差が大きすぎる
 ため、経営者は戸惑っている」と現状を分析されました。

  次いで経済の回復の見方について、「@経済統計上(在庫減少、生産増加)か
 らみたマクロの転換点は年内にくる。A企業収益の上向くミクロの転換点は、来
 年4月頃と見込まれ、経済の回復感が出る。Bバブルの後始末が完了する時期は、
 早ければ来年後半からか。しかし、業種によっては、回復が遅れることになるの
 ではないか」と見通され、最後に、「回復後の日本経済は、@労働力問題、A環
 境問題、B国際社会の付合い(輸出抑制等)、C労働時間の短縮(1,800時間/
 年)が課題となり、一方、@ロシア、中国に市場経済が導入されること、A21世
 紀の発展はアジアであること等が、新しい経済成長のきっかけとなるのではない
 か」と結び、講演を終えられました。

  2日間の短い研修でしたが、出席された食肉センター等の経営者の方々にとり
 まして、当研修会が少しでもお役に立つことができれば幸いです。

(助成部 安田 邦雄)


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