この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。 |
(北海道 川田 武)
浜頓別町のAさんは、放牧用草種のペレニアルライグラスで集約放牧を実施し、 季節繁殖を組合せた収益性の高い経営を実現している。 Aさんの経営規模は、労働力2人で牧草52.5ha、経産牛37.3ha、出荷乳量308.4t である。放牧地は21.7haあり、ペレニアルライグラス主体の草地でホワイトクロー バーを混播している。牧区を28に区切り、1頭当たり利用面積は子牛0.11ha、育成 牛0.31ha、経産牛0.67haになる。年間利用回数は10回以上、滞牧日数は経産牛の昼 夜放牧で0.5日、子牛や育成牛は2.5〜3.3日である。また、乳牛の分娩は63年以降 1〜3月までに集中 (79%) させ、5月までには終わる。 乳牛の発育をみると、当才時はホル協の発育曲線の下限値を下回るが、2才時で 平均値に達している。初産時の泌乳成績は、305日間の乳量成績で7,378sと産乳量 が高い。 経産牛が放牧草から摂取する乾物量、TDN量は粗飼料中の35%程度になっている。 自給粗飼料の生産費コストも非常に安い。TDN1s当たりコストは濃厚飼料に比べ 60%くらいで生産されている。
経産牛の飼料給与量 (kg/頭)
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自給飼料の生産コスト (円/1kg)
注:TDN(可消化養分総量)は、 飼料の成分中消化吸収され る部分の総量をいう。 |
牛乳1s当たりコストは全道水準よりかなり低く、収益性も高い。基幹従業者は 夫婦2人で、1人当たり年間労働時間は1,800時間程度である。 このように、放牧により「ゆとり」「豊かさ」「夢」のある酪農経営を実現させ ている。