◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

ここまでやれる放牧酪農

(北海道 川田 武)


 浜頓別町のAさんは、放牧用草種のペレニアルライグラスで集約放牧を実施し、
季節繁殖を組合せた収益性の高い経営を実現している。

 Aさんの経営規模は、労働力2人で牧草52.5ha、経産牛37.3ha、出荷乳量308.4t
である。放牧地は21.7haあり、ペレニアルライグラス主体の草地でホワイトクロー
バーを混播している。牧区を28に区切り、1頭当たり利用面積は子牛0.11ha、育成
牛0.31ha、経産牛0.67haになる。年間利用回数は10回以上、滞牧日数は経産牛の昼
夜放牧で0.5日、子牛や育成牛は2.5〜3.3日である。また、乳牛の分娩は63年以降
1〜3月までに集中 (79%) させ、5月までには終わる。

 乳牛の発育をみると、当才時はホル協の発育曲線の下限値を下回るが、2才時で
平均値に達している。初産時の泌乳成績は、305日間の乳量成績で7,378sと産乳量
が高い。

 経産牛が放牧草から摂取する乾物量、TDN量は粗飼料中の35%程度になっている。
自給粗飼料の生産費コストも非常に安い。TDN1s当たりコストは濃厚飼料に比べ
60%くらいで生産されている。 
     経産牛の飼料給与量
              (kg/頭)
飼料名 原物 乾物 TDN
放牧草 14,127 2,572 1,807
乾草 1,963 1,653 824
牧草サイレージ 3,123 752 461
配合飼料 2,108 1,845 1,518
ビートパルプ 530 461 352
粗飼料 19,213 4,977 3,192
全飼料 21,851 7,283 5,062
   自給飼料の生産コスト
          (円/1kg)
飼料名 乾物 TDN
放牧草 12.7 17.9
乾草 25.3 45.3
牧草サイレージ 27.1 44.2
注:TDN(可消化養分総量)は、
  飼料の成分中消化吸収され
  る部分の総量をいう。
 牛乳1s当たりコストは全道水準よりかなり低く、収益性も高い。基幹従業者は
夫婦2人で、1人当たり年間労働時間は1,800時間程度である。

 このように、放牧により「ゆとり」「豊かさ」「夢」のある酪農経営を実現させ
ている。
 

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