★ 事業団便り


パソコンを活用した肉牛肥育経営−群馬県箕郷町小林牧場−


 高度情報社会の進展に伴い、農家経営にもパソコン等の情報機器を活用しようと
いう動きが強くなっています。特に経営内において生産管理、経営管理を行い、生
産性の向上を図るうえで、情報機器の活用は有効な手段といえるでしょう。今回、
パソコンを有効に活用している農家を訪問する機会を得ましたのでレポートします。

小林牧場の概要

 今回訪問した小林牧場のある箕郷町は群馬県の中西部に位置し、榛名山の南山麓
に位置する中山間地帯です。農家戸数は約1,500戸で畜産農家は約230戸ほどです。
昭和34年、お父さんの代に和牛肥育を導入したのが肉用牛経営の始まりで、47年に
は120頭を肥育する肉牛専業経営となりました。その後、50年から乳用種の肥育へ
転換し、現在の飼養規模は約400頭となっています。

パソコン導入への経緯

 規模の拡大と共に複雑になってきた経営を管理するために、58年から複式簿記を
導入しました。そして、肉牛生産費の分析を効率的に行うため、また、記帳時間の
短縮及び計算の正確を期すために、パソコンによる簿記記帳を開始しました。当時、
農業改良普及所開催のパソコン教室で勉強をしたそうです。

記帳へのパソコンの活用

 現金出納帳、買掛帳、預金通帳等のデータを農業経営簿記ソフトに入力すること
により、貸借対照表や損益計算書を作成し、損益分岐点の把握等の経営分析にも利
用しています。素牛導入時や肉牛出荷時の価格、体重等を基に行う生産管理につい
ては、従来手計算で行っていましたが、表計算ソフト(Lotus1−2−3)を導入
することにより、パソコン処理が可能となりました。

パソコン導入による効果

1 記帳計算時間が大幅に短縮されることから、空いた時間を肉牛管理労働に向け
 ることが可能となり、飼育管理の充実を図れること。

2 結果が迅速かつ正確なため、リアルタイムに試算表等の確認ができるようにな
 ったこと。

3 決算期中に経営成果の予測ができるようになったこと。

4 生産費等の分析チェック項目を増加することにより、きめの細かな経営管理が
 でき、経営方針の決定にも役だっています。

パソコン導入の環境整備を

 小林牧場では以上の様に、パソコンを充分に活用することにより、省力化を図る
とともに、合理的な経営が可能になりました。農家の経営意識や能力を高めるため
にパソコンの導入は大きな効果があるといえます。しかし、個々の農家がパソコン
を導入するに当たっては、操作法や農業簿記の講習会等パソコンを導入しやすくす
るような環境づくりも必要となります。この点、今回の小林牧場については、経営
者がパソコン教室へ通うといった本人の努力や、県普及所や県経済連による講習会
開催等のバックアップもあったそうです。今後パソコンの導入を考えている農家の
良い参考になるのではないでしょうか。

<参考>
  パソコンを利用して作成した例

1.出荷頭数表                自 S63.01.01  至 S63.12.31
  月日 生体 単価 金額 荷運 導入月日 生体 金額 肥育日数 DG 日当増価
1 S63.01.05 771 700 540,000 8,000 S61.05.27 70 96,000 588 1.192 741
2 S63.01.10 733 675 495,000 8,000 S61.05.17 65 92,000 603 1.108 655
3 S63.01.10 720 664 478,000 8,000 S61.04.28 65 90,000 622 1.053 611
4 S63.01.10 723 669 484,000 8,000 S61.05.05 65 90,000 615 1.070 628
5 S63.01.15 725 706 512,000 8,000 S61.05.07 60 83,000 618 1.076 681
6 S63.01.15 700 710 497,000 8,000 S61.05.30 70 97,000 595 1.059 659
7 S63.01.15 713 686 489,000 8,000 S61.06.02 50 88,000 592 1.120 664
8 S63.01.18 560 472 264,225 15,495 S61.07.07 60 94,000 560 0.893 276
9 S63.01.20 801 709 568,000 8,000 S61.05.12 60 86,000 618 1.199 767
10 S63.01.20 712 711 506,000 8,000 S61.05.11 60 87,000 619 1.053 664
11 S63.01.25 754 700 528,000 8,000 S61.08.08 70 112,000 535 1.279 763
 
2.肉牛販売損益目安表
日数 日当
費用
費用
合計
素畜費 素畜+費用 利益 素牛+費用
+利益
6ヵ月令180 464 83,520 150,000 233,520 24,480 258,000
7    210   97,440   247,440 28,560 276,000
8    240   111,360   261,360 32,640 294,000
9    270   125,280   275,280 36,720 312,000
10   300   139,200   289,200 40,800 330,000
11   330   153,120   303,120 44,880 348,000
12   360   167,040   317,040 48,960 366,000
13   390   180,960   330,960 53,040 384,000
14   420   194,880   344,880 57,120 402,000
15   450   208,800   358,800 61,200 420,000
16   480   222,720   372,720 65,280 438,000
17   510   236,640   386,640 69,360 456,000
18   540   250,560   400,560 73,440 474,000
19   570   264,480   414,480 77,520 492,000
20   600   278,400   428,400 81,600 510,000
21   630   292,320   442,320 85,680 528,000
22   660   306,240   456,240 89,760 546,000
筆者注: この農家は1の表で出荷時及び導入時の月日、生体重、金額等を入力す
    ることにより肥育日数やDG等を計算している。

     また、2の表の(素牛+費用+利益)と1の表の個体の金額を比較しな
    がら損益を判断しているとのことである。 
 畜産振興事業団監事 佐藤 武徳 儀

 平成5年6月22日(火)午前3時30分クモ膜下出血により永眠いたしました。ここに生前のご厚誼を深謝し謹んでご通知申し上げます。

 なお、葬儀は6月24日(木)町田市いずみ会館にて執り行われました

 平成5年6月



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