家庭での食肉消費の特性に関する調査報告

金沢経済大学経済学部助教授
小林 雅裕


 当事業団では、畜産物の新たな需要の開発を促進するため、畜産物需要開発調査研究事業を実施しているところでありますが、今回、平成4年度の調査研究テーマの中から、金沢経済大学経済学部小林雅裕助教授の調査結果をご紹介します。

 なお、掲載に当たっては、ご本人に本誌掲載用に要約、編集していただきました。
はじめに

 一般によく知られているように、西日本は牛肉消費が多く、東日本は豚肉消費が
多い。また、九州は鶏肉の消費が多い。それに、これらの地域内の諸都市において
もそれぞれの食肉の消費量や形態にいくらかの差異が認められる。こうしたことは
総理府の「家計調査報告」をみてもある程度は見当をつけることができる。

 今年の1月から2月にかけて、畜産物の消費、特に食肉が家庭の食事の中でどの
ように購買されどのように食べられているのかを、青森市、山形市、前橋市、和歌
山市と宮崎市の5都市の消費世帯と食肉専門店に対してサンプル調査をした。その
結果を報告したい。


食肉の好みと購買の環境

 食肉の好みについて調査すると、肉と代替関係にある魚との選好については、肉
より魚の方を好むかまたは同じと回答した世帯が多い。ただ、和歌山市だけが魚よ
り肉の方が好まれている。他の4都市では好みには差がないというのが最も多い回
答であった。多くの人は肉と魚どちらも好きだが、どちらかといえば魚が好きとい
う選好関係である。そして、献立を決める理由は家族の好みと栄養を第一と考え、
料理の時間は考慮しないとの結果は調査各都市で共通である。しかし、とくに仕事
を持っている場合は料理時間を考えないわけにはいかないから、この調査では献立
を考える際、最優先に家族の好みと栄養を考えるとしたほうがよいだろう。

 食肉間の選好関係を調べた。集計結果から選好順序を確定すると、豚肉と牛肉の
選好関係は、各都市で前述した結果が得られているが、鶏肉が牛肉や豚肉よりも好
まれる都市があった。このことは健康指向の傾向や他の食肉の価格関係によっては、
鶏肉の選好が豚肉や牛肉よりも高くなることも予想される。

 どの食肉がどのような要因で購入されるかを調査した。都市・食肉別によって購
入要因が分かれた。牛肉、豚肉とも好みと値段によって購入が決められ、栄養が追
加的要因として入ってくる。そのうちで、和歌山市だけは値段の要因が下位に位置
し、牛肉選択は値段の要因より嗜好性の方が強かった。豚肉や鶏肉は好みや値段と
いった要因だけでなく、栄養や特に健康といった要因が重要なものとして選択され
ている。ただ、鶏肉の購入要因は牛肉や豚肉より幾分多様性を持っている。

 家庭で主に誰を念頭において献立を決めているかを調べると、すべての都市で配
偶者を第一に考えている。家族構成によって子供が追加されるだけであった。

 食肉の購入先はスーパーマーケットが圧倒的な位置を占めている。スーパーマー
ケットで購入する理由は、値段が安いことと特売があることでほぼ決定された。ま
た、スーパーマーケットでは同時にいろいろ買い物ができるという利点が第一にあ
げられているが、店舗についての調査では、他に衛生的、品質が良いから購入する
といった要因も強く出ていた。この衛生的、品質が良いという回答は、食肉専門店
の営業の実態との関連で十分検討されるべき課題であると思われる。 


食肉の購買行動

 牛肉はほぼ100グラムあたり300円から500円のものが最も購入されている。値段
が高くなると順位は下がってくる選好関係が現れた。その中でも和歌山市では高い
値段の肉でも購入されており、牛肉嗜好の強さがうかがわれる。国産牛肉を好むか
どうかも調査した。国産牛肉を好むという結果は明確だが、しかし食肉消費が最も
少ない前橋市では、牛肉の国産・輸入に対しては無差別であり、しかも国産牛肉に
対する選好は低いこともしめされた。豚肉については100円から200円といった値段
の肉が最も購入されている。ただ、牛肉よりは値段の幅が小さいこともあって、2
50円から300円といった値段の肉も同時に購入されている。鶏肉については豚肉の
選好関係より多様性がある。100円から200円の肉が最も購入されているが、あまり
値段を考慮せずに購入されているものと考えられる。

 牛肉の購入にも幾分か現れたことだが、特に豚肉の購入価格に対する選好順序の
非連続性が観察された。財が同一の品質であれば、価格と需要との関係は通常の右
下がりの需要曲線の関係を持つ。価格の高いものほど選好の順序は低くなる。価格
と品質との関係で最も購入される価格帯の豚肉と比べて、それより下位の選好関係
にある豚肉の価格帯はより高いはずである。実態は、低い価格帯の豚肉が最も購入
されている値段よりも下位の選好関係にあらわれ、高い価格帯の豚肉がその次にあ
らわれる。これを、最も購入される価格帯の肉が購入習慣として固定されていると
みるか、あるいは調査の「誤差」である可能性もある。この調査が実態を幾分か捉
えているのであれば、食肉は価格が高いものは良い品質のものであり、消費者が購
入する食肉は選好関係が非連続である価格帯で多くの量が購入され、それ以上の価
格帯での消費の拡大は価格と品質との関係に大きく影響されることを意味している。
特に価格とそれにみあった品質とに、需要が大きく規定されていると考えられる。
しかし、この選好関係の確認には別の調査と考察が必要である。

 購入形態を調べると、牛肉、豚肉とも7割から8割が料理の都度購入し、形態は
スライスで300グラム前後から450グラム前後の購入量である。まとめ買いでは600
グラムから1, 000グラムと購入量は多くなる。ほとんどスライス肉であるが、豚肉
では牛肉と比べてブロックでの購入も多い。鶏肉では6割から8割が料理の都度に
購入し、購入量は350グラムから450グラム前後で正肉での購入が多い。食肉の購入
部位を調べると、購入するとき部位を選ぶ調査世帯は7割台であった。牛肉につい
ては、前橋市から北は、ばら、かたロース、もも、ヒレであり、和歌山市と宮崎市
は、かたロース、ばら、もも、サーロインであり、前橋市、和歌山市、宮崎市にお
いては購入部位の選好順序は特定化されているのに対し、青森市、山形市において
は多くの部位が並立して好まれている。豚肉についてはロース肉がいずれの都市に
おいても好まれている。特に和歌山市ではロース肉に嗜好が集中している。他の調
査都市では、ロース、ばら、ヒレ、ももといった選好順序である。鶏肉は正肉のも
もとむね肉、ささみが主である。牛肉、鶏肉消費がきわめて少ない前橋市では鶏肉
部位の選好関係の特定化ができなかった。食肉の部位に関して消費者の知識をより
高める政策が望まれる。


食肉販売店での購入行動

 この調査では消費世帯はスーパーマーケットでの食肉購入が圧倒的に大きかった。
したがって、この節での調査結果は食肉専門店での販売行動しか含まない部分的な
ものであることをおことわりしたい。

 調査した食肉販売店の店舗の概要は、関東・東北が専門店として多く展開し、和
歌山市と宮崎市の店舗では、デパートやスーパー、市場内のテナントとしての出店
形態も多かった。販売形態はほとんど対面販売で、セルフサービスを併用している
店舗も幾分かはあった。従業員は小売りのみの店舗では2〜3人、卸売り併用の店
舗では3〜4人といったところである。店舗の規模をしめす1日当たりの売上高は、
10万円までの店舗が大部分である。来店客はほとんど固定客であり、食肉専門店で
は買い物のついでの客よりも固定客が多いことがわかる。

 この食肉専門店の調査でも、青森市、山形市、前橋市等の牛肉の嗜好の低い都市
では、牛肉を最も多く販売する値段からその順位を下げていったとき、値段の高い
方へ順次推移していくのではなく、一度最も安い値段の牛肉へ移り、それから順次
高い値段の牛肉へ販売量が推移していくことをしめした。牛肉消費量の多い和歌山
市では、牛肉販売価格は安い牛肉から高いそれへと順次推移していくのと対象的で
ある。宮崎市では和歌山市ほど明確にはしめされなかったが、世帯に対する調査で
は特に豚肉購入にしめされた同様の傾向が牛肉購入でも読み取れた。

 食肉の部位別販売量の順位は、牛肉では都市別に幾分差異が見受けられるが、も
も肉の販売が多く、順次かたロース肉、ばら肉、かた肉と販売部位の選好が推移し
ていく形態である。豚肉については、ロース肉が最も嗜好され、次いでもも肉、ば
ら肉と選好が順次推移していく。鶏肉はもも肉を中心として、むね肉、ささみ肉と
順次選好が推移していく。食肉の形状別の販売量の順序は、牛肉と豚肉ともうす切
りついで焼き肉用・ソテー用が主な形状である。他都市ではステーキ用が販売され
ているのに対し、牛肉消費の多い和歌山市、宮崎市では挽き肉や小間切れ肉が多く
販売されているのが特徴的である。鶏肉は正肉のもも、むね肉が全都市で大部分を
占めている。


食事の中の食肉

 表1は調査世帯で1993年に入ってから食べた肉料理を調べたものである。肉の料
理方法を、焼く、煮る、その他(揚げる、蒸す等)に分けて調査した。それぞれの
世帯で記入した料理名で2つ以上になったものについてその実数と割合とをしめし
た。調査した各都市で共通している料理は、焼き肉、すき焼き、トンカツといった
料理である。調査した各都市とも、煮る料理形態の料理数の豊富さが共通している。
この調査で1日当たりの炊飯量も調べた。この炊飯量と関連づけて考えてみよう。
炊飯量の多かった和歌山市と前橋市では、この表であげた料理の種類に多様性がみ
られる。ここではある一つの料理だけが回答されているのではなく、複数の調査世
帯から回答された料理が多い。ご飯を多く食べれば多くの料理の種類を望むという
結果であろう。料理法で共通しているのは、煮る料理でも煮込む料理ではなく、単
に煮る料理の種類が豊富だということである。焼いたり、揚げたりといった料理法
は種類も多くはなく、その料理形態は「煮る」料理と比べて同時に多くの他の野菜
等の食材をあまり料理に使わない。また、煮る料理は味付けは和風に変えやすくご
飯食にも合う。ご飯と共に食事に出される料理がほとんどを占めている。

 表2は、調査世帯でご飯とあう肉料理をその好む順序で調べたものである。各料
理の右側の数字は回答数である。各都市とも、焼き肉、すき焼きといった料理が順
位が高く、ご飯と合う料理としてあげられている。その次にご飯と合うとされる料
理は、前表のトンカツではなくて青森市では肉じゃがであり、山形市ではカレーで
あり、前橋市と和歌山市でも肉じゃが、宮崎市では野菜との煮物である。トンカツ
はそれらの料理よりは下位に置かれるのだが、ご飯に合わないとされているのでは
なく、嗜好としては煮る料理の方が上位にくるということである。

 主食の好みについては、ご飯が大部分ではあったが、パン食と無差別とするのも
関東・東北でも10から30%もあった。1日の食事でご飯の回数は2回から3回が大
部分である。一般にご飯のほうがパンよりは好きだが、3度3度ご飯を食べている
のではないということである。食事での肉と魚料理の好みは、関東・東北の各都市
で魚料理の方を好むほうが多いが、和歌山市、宮崎市と比較してみるとご飯と魚料
理の好みとが結び付くわけではない。和歌山市は明らかに魚より肉の料理の方を好
むが、ご飯の嗜好がきわめて強い。パン食−肉料理という単純な関係でもないよう
である。

 献立を考える際、肉料理を考える場合にそれと比べる魚料理を調べた。設問の意
図が理解されるか心配であったが、理解した多くの調査対象世帯が回答してくれた。
牛肉を使う料理を考えるときに比べる魚料理は、高級魚の「さしみ」や「焼き魚」
が多い。その中でもさしみが多いことが特徴である。豚肉との場合は中級魚の「焼
き物」が多いことである。鶏肉との場合は、中級魚や大衆魚の「焼き物」とその
「加工品」が多いことが特徴である。また魚種はサケ、マス、タラはせいぜい前橋
市までで、特に青森市の場合は比較する魚の種類がきわめて多いこと、山形市や前
橋市でも魚と料理の種類が和歌山市等と比較して多いことが特徴的である。これら
のことは、ある程度は「家計調査」の資料を使ったデータ分析でも計算されるが、
この調査でも同様のことが、料理の種類と共に明らかになったといえる。

 肉の調理形態は、焼く(炙る)、煮る、揚げる、蒸す等に大きく分けられる。こ
の点はより考察が望まれるが、われわれ日本人には、煮る料理の形態がきわめて豊
富であり、またその料理を好むのに対して、焼く(炙る)料理、油で揚げたり焼い
たりする料理は煮る料理と比べて種類は多くないが、思いうかばないということで
はないかと考えられる。

表1 肉料理の種類
  焼 く 煮 る その他
青森 焼き肉 (22) 9.5% すき焼き (23) 9.9% からあげ (11) 4.7%
ステーキ (14) 6.0% カレー (16) 6.9% トンカツ (11) 4.7%
ハンバーグ (9) 3.9% しゃぶしゃぶ (10) 4.3% 蒸し物 (3) 1.3%
焼き鳥 (7) 3.0% 肉じゃが (10) 4.3% 揚げ物 (2) 0.9%
野菜炒め (7) 3.0% シチュー (8) 3.4% コロッケ (2) 0.9%
しょうが焼き (6) 2.6% 煮物 (7) 3.0% ギョウザ (2) 0.9%
焼きそば (4) 1.7% 豚汁 (6) 2.6% 酢豚 (2) 0.9%
テリ焼き (3) 1.3% どんぶり (4) 1.7% グラタン (2) 0.9%
バーベキュー (2) 0.9% 鍋物 (3) 1.3% ギョウザ (2) 0.9%
スパゲッティ (2) 0.9% ロールキャベツ (2) 0.9%   
   肉うどん (2) 0.9%
角煮 (2) 0.9%
合計 36.6% 45.5% 19.8%
山形 焼き肉 (16) 7.2% すき焼き (25) 11.3% トンカツ (14) 6.3%
ハンバーグ (8) 3.6% カレー (15) 6.8% からあげ (9) 4.1%
しょうが焼き (8) 3.6% 煮物 (11) 5.0% コロッケ (2) 0.9%
野菜炒め (8) 3.6% 肉じゃが (11) 5.0% 茶碗蒸し (2) 0.9%
ステーキ (6) 2.7% シチュー (9) 4.1% シューマイ (2) 0.9%
焼き鳥 (5) 2.3% どんぶり (7) 3.2% あえ物 (2) 0.9%
テリ焼き (5) 2.3% 酢豚 (6) 2.7%   
オムレツ (3) 1.4% 豚汁 (4) 1.8%
味噌漬焼き (3) 1.4% 芋煮 (4) 1.8%
バター焼き (3) 1.4% 肉うどん・そば (3) 1.4%
ソテー (2) 0.9% しゃぶしゃぶ (3) 1.4%
   モツ煮 (2) 0.9%
合計 34.4% 49.3% 16.3%
前橋 焼き肉 (16) 8.9% すき焼き (23) 12.8% トンカツ (7) 3.9%
ハンバーグ (7) 3.9% 肉じゃが (13) 7.2% からあげ (6) 3.3%
野菜炒め (6) 3.3% カレー (11) 6.1% ギョウザ (6) 3.3%
しょうが焼き (6) 3.3% どんぶり (7) 3.9% フライ (3) 1.7%
焼き鳥 (5) 2.8% シチュー (6) 3.3% サラダ (2) 1.1%
ステーキ (4) 2.2% 鍋物 (5) 2.8%   
鉄板焼き (3) 1.7% しゃぶしゃぶ (4) 2.2%
鶏塩焼き (3) 1.7% 豚汁 (3) 1.7%
   煮物 (3) 1.7%
ワンタン (2) 1.1%
角煮 (2) 1.1%
水炊き (2) 1.1%
筑前煮 (2) 1.1%
ロールキャベツ (2) 1.1%
合計 33.9% 51.1% 15.0%
和歌山 焼き肉 (14) 8.0% すき焼き (13) 7.4% トンカツ (9) 5.1%
ステーキ (11) 6.3% カレー (10) 5.7% からあげ (7) 4.0%
野菜炒め (9) 5.1% シチュー (10) 5.7% ギョウザ (2) 1.1%
ハンバーグ (7) 4.0% 肉じゃが (7) 4.0% ビーフカツ (2) 1.1%
しょうが焼き (5) 2.9% しゃぶしゃぶ (6) 3.4% 鶏てんぷら (2) 1.1%
お好み焼き (3) 1.7% 豚汁 (4) 2.3% フライ (2) 1.1%
グラタン (3) 1.7% 水炊き (4) 2.3%   
焼き鳥 (2) 1.1% 煮物 (3) 1.7%
オムレツ (2) 1.1% 鍋物 (3) 1.7%
テリ焼き (2) 1.1% ハヤシライス (3) 1.7%
チキンチャップ (2) 1.1% 角煮 (2) 1.1%
   ロールキャベツ (2) 1.1%
筑前煮 (2) 1.1%
どんぶり (2) 1.1%
八方菜 (2) 1.1%
酢豚 (2) 1.1%
合計 39.4% 45.1% 15.4%
宮崎 焼き肉 (10) 7.9% すき焼き (13) 10.2% トンカツ (11) 8.7%
しょうが焼き (7) 5.5% 煮物 (12) 9.4% からあげ (8) 6.3%
ステーキ (6) 4.7% 肉じゃが (7) 5.5% チキン南蛮 (3) 2.4%
ハンバーグ (4) 3.1% シチュー (6) 4.7% チキンカツ (2) 1.6%
野菜炒め (4) 3.1% カレー (5) 3.9%   
串焼き (2) 1.6% しゃぶしゃぶ (3) 2.4%
味噌味焼き肉 (2) 1.6% 水炊き (2) 1.6%
テリ焼き (2) 1.6% 鍋物 (2) 1.6%
オムレツ (2) 1.6%   
合計 33.1% 44.1% 22.8%
表2 ご飯と合う肉料理
  @ A B
青森 焼き肉 7 すき焼き 4 ハンバーグ 3
すき焼き 6 焼き肉 4 焼き肉 2
肉じゃが 3 トンカツ 3 カレー 2
トンカツ 2 しょうが焼き 2 どんぶり 1
ハンバーグ 2 肉じゃが 2 肉じゃが 1
炒めもの 2 カレー 2 ステーキ 1
ステーキ 1 牛どん 1 肉野菜煮物 1
しゃぶしゃぶ 1 からあげ 1 スペアリブ 1
カレー 1 煮物 1 コロッケ 1
しょうが焼き 1 揚げ物 1 トンカツ 1
豚汁 1 野菜炒め 1 チキンライス 1
     ステーキ 1 からあげ 1
山形 焼き肉 7 焼き肉 4 肉じゃが 3
すき焼き 4 カレー 4 ハンバーグ 2
牛どん 2 トンカツ 3 焼き肉 2
トンカツ 2 からあげ 2 牛どん 2
肉野菜煮物 2 肉野菜煮物 2 カレー 2
野菜炒め 1 ステーキ 1 すき焼き 1
ステーキ 1 すき焼き 1 トンカツ 1
しょうが焼き 1 鍋物 1 肉野菜煮物 1
カレー 1 炒めもの 1 からあげ 1
肉炒め 1 チキンフライ 1 しょうが焼き 1
チャーハン 1 ハヤシライス 1 コロッケ 1
  鉄板焼 1 ステーキ 1
豚汁 1 焼き鳥 1
  モツ鍋 1
前橋 焼き肉 7 すき焼き 3 焼き肉 3
すき焼き 5 ステーキ 2 すき焼き 4
肉じゃが 3 トンカツ 2 ハンバーグ 2
トンカツ 3 しょうが焼き 2 カツどん 1
しょうが焼き 2 ハンバーグ 2 肉じゃが 1
鉄板焼き 1 肉じゃが 2 豚汁 1
ハンバーグ 1 焼き肉 2 肉野菜煮物 1
カレー 1 ギョウザ 2 角煮 1
カツどん 1 カツライス 1 コロッケ 1
牛どん 1 カレー 1 トンカツ 1
まぜご飯 1 鍋物 1 バーベキュー 1
  ハムエッグ 1 からあげ 1
野菜炒め 1 油炒め 1
テリ焼き 1 カレー 1
オムライス 1  
和歌山 焼き肉 7 肉じゃが 4 ステーキ 2
すき焼き 5 カレー 3 焼き肉 1
肉じゃが 3 すき焼き 2 すき焼き 1
野菜炒め 2 しょうが焼き 2 ハンバーグ 1
どんぶり 1 野菜炒め 2 肉うどん 1
  角煮 1 肉じゃが 1
水炊き 1 しゃぶしゃぶ 1
  鉄板焼き 1
シチュー 1
角煮 1
鶏ソース煮 1
宮崎 焼き肉 4 焼き肉 2 トンカツ 3
すき焼き 4 テリ焼き 2 すき焼き 1
肉野菜料理 3 すき焼き 1 からあげ 1
豚汁 2 ステーキ 1 しょうが焼き 1
しょうが焼き 1 肉じゃが 1 ハンバーグ 1
カレー 1 うま煮 1 シチュー 1
からあげ 1 チキン南蛮 1 鶏モツ煮込み 1
チキンカツ 1 ハンバーグ 1  
炒め物 1 肉野菜料理 1
  焼き鳥 1
野菜炒め 1
食肉消費の世代別の相違

 これまでの都市別の集計を世代別に整理・集計した。日本人は年令が高くなると
食物の嗜好が淡泊なものに推移していくらしいことはよく知られている。例えば、
若者はステーキが好きだが老人はすき焼きが好きだとか、年をとるにしたがい肉か
ら魚へ嗜好が変わる、といったことである。整理する年令を20才から35才までと、
55才から70才までの二つの集団とに分けた。

 「若い世代」は「焼く」と「煮る」が全く同率となったが、「年をとった世代」
は「焼く」料理よりは、「煮る」料理の方を多く食べている。「焼く」料理形態で
は、若い世代は焼き肉、しょうが焼き、ステーキ、ハンバーグ、野菜炒め等を食べ
ている。年をとった世代は焼き肉、野菜炒め、しょうが焼き、ステーキ等で、若い
世代のハンバーグを除き順位が異なるだけで料理の種類は変わらない。「煮る」形
態では、若い世代はカレー、すき焼き、肉じゃが、シチュー等で、年をとった世代
はすき焼きが断然多く、次いで肉じゃが、カレー、煮物、シチューといった料理の
種類である。「煮る」形態では順位はあまり差がないことがわかる。「その他」の
形態では、からあげとトンカツで順位が変わるだけであった。

 ご飯と合う肉料理も世代別に整理した。世代別に好む順序は、若い世代は焼き肉、
すき焼き、ハンバーグの順である。対して年をとった世代は、すき焼き、カレー、
肉じゃがの順であり焼き肉も嗜好が強いことがわかる。このふたつの世代ともステ
ーキを選好してはおらず、ご飯とステーキよりは他の料理の組み合わせを選択し、
同じ食卓にのせる順序は低い。

 牛肉料理を考えるとき比較する魚料理の種類は、若い世代は牛肉料理とさしみ、
あるいは寿司、焼き魚等があげられている。対して年をとった世代は魚種を特定し
た多くのさしみと焼き魚、あるいは煮魚である。豚肉と比べた場合は、若い世代は
焼き魚が断然多く、あとはフライパンを使った魚料理である。対して年をとった世
代は、さしみ、焼き魚と煮魚、鍋物である。鶏肉の場合は、若い世代は焼き魚、フ
ライ、煮魚と比較している。対して年をとった世代は数種類の魚のさしみと焼き魚、
煮魚、テンプラである。それぞれの食肉とも、年をとった世代は比較する魚の種類
が豊富である。また、油を使った料理を比較の対象とすることはきわめて少ないこ
とがわかる。

おわりに

 肉料理の嗜好について世代別の相違は明確に存在するが、実際に肉料理を食べる
か、選択するというときそれほど多くの種類の料理を念頭においているわけではな
いようだ。個々の家庭や個人で肉料理を食べるとき、その種類は家庭によっておお
むね定まっていることが多いと思われる。肉の料理のしかたや料理の種類は、世代
をつうじて変化していくが、日本人の料理に対する基本的な嗜好と大きく離れてい
くわけではあるまいと思われる。この調査結果でも肉料理の嗜好について世代別の
相違は明確に存在するが、その相違は連続的なものであり世代間に断層や越えられ
ない相違があるわけではないと考えられる。食事をつくる人を年代別に世帯で嗜好
を整理したが、世代を越えて焼き肉や肉じゃが、すき焼きがご飯といっしょに食べ
たいとする肉料理であり、年をとるにしたがい野菜との煮物や炒めものを嗜好して
いる。食事の「外部化」や「無国籍化」でこの形態が今後どのように変わっていく
か関心が持たれる。

 肉と米の消費との関連でいえば、まず肉の調理形態である。嗜好の強い肉料理は、
「煮る」形態をとっているものが多いことである。焼き肉やハンバーグ等も強い嗜
好性を持つが、焼いたり揚げたりする形態は煮る料理と比べて料理の種類は多くは
ない。「煮た」肉料理とご飯の消費とは増減の方向を共にすると考えられる。また、
家族数の多い調査世帯では、好みの肉料理あるいはご飯とあう肉料理は「煮る」形
態のものが多く、料理の種類も豊富になってくる。これは、老人同居の世帯ばかり
でなく、子供の多い世帯でも全く同様であった。


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