★ 事業団便り


出資会社経営者研修会の概要


 去る10月4日、5日の両日、当事業団が出資をしている株式会社の経営者を対象に出資会社経営者研修会を開催しました。食肉センター、乳業会社等33社、66名の参加を得て、牛肉自由化後2年半を経過した状況下での、畜産の事情、特に牛肉輸入自由化における流通業界の動き、今後の経済見通しについて、その専門分野でご活躍されております先生方から講演をして頂きましたので、その概要を紹介します。
1 最近の畜産事情について、農林水産省畜産局食肉鶏卵課長小畑勝裕氏に講演し
 て頂きました。

 氏は、自由化後の牛肉需給の推移から、輸入牛肉は新たに開拓した外食産業を主
体とした分野で大幅な伸びを示したのに対し、国産牛肉は家庭内消費が漸増したこ
とにより従来型の需要がそのまま維持されている状況にある。次に、通関後の輸入
価格と仲間相場の推移についてみると、自由化した商品は思惑が働いて輸入が増加
するため、高値が出にくくなり、有利な商品でなくなってきているとしている。小
売価格の国際比較で見る限り国内での輸入牛肉価格は相当下がっているが、反面、
国産牛肉は輸入牛肉に比べて割高であるといえる。国産牛肉については、この価格
差がどこまで維持できるかが課題であり、これまで畜産は増産が主体であったが、
商品という立場から売れる商品として畜産を考える必要がある。また、輸入牛肉の
国際相場に対し、国産牛肉の価格設定が最大の課題となり、それにはコストの引き
下げが必要であり、生産から流通にわたる合理化は何を置いてもやらればならない、
との話しでありました。


2 次に、牛肉輸入自由化における流通業界の動きについて、潟_イエーのフーズ
 ライン商品本部ディビジョナルマーチャンダイズマネージャー山口英幸氏に講演
 して頂きました。

 氏は、48年以降の輸入牛肉を中心とした小売の変化について触れ、食品産業新聞
社発表による4月の消費の伸びと最近の動向を紹介しました。次いで、チェーンス
トア協会による牛肉の需給と販売促進に関するアンケートの結果について説明し、
また、国産牛肉の拡販対策についての考え、流通における多種類のスペック等コス
トアップ要因について話されました。


3 また、国内外の畜産事情について、農林水産省畜産局畜産経営課長信国卓史氏
 に講演して頂きました。

 氏は、OECDの農業政策及びマーケットに関する委員会に出席したときの内容を主
として、まず、外側から見た日本の特殊性と欧米のマーケット戦略の中に日本市場
が組み込まれて高い関心を集めていること。また、OECD事務局が試算している生産
者保護相当(PSE)を例に、品質格差等が欧米を中心とした枠組みの中で議論され
ている実態が紹介されました。

 次に、将来の需給予測に関し、肉類トータルの需要が頭打ち傾向の中で牛肉と豚
・鶏肉の競合関係が強まり、その関係に与える穀物価格の影響に留意すべきこと、
自由化及びその後の円高により需給事情が変化し、季節変動等がオープンシステム
に変化してきていること等について解説をされました。また、世界との競争という
ことはトータルとしてのコストの競争であるので、地域に根ざした畜産のシステム
化の必要性を話されました。


4 最後に、今後の経済見通しについて、日本経済新聞社編集局経済部長平田保雄
氏に講演して頂きました。

 氏は、現在の欧米各国とロシア、中国に政治・経済の情勢について触れ、中国の
故事に「農を以って工を促す」という言葉があり、国を建設していく上で農業が基
本的に重要であり、食糧の自給ができないと工業も成り立たないことを話され、次
いで、今年1月にイギリスのエコノミスト誌に掲載された「2992年からの回顧」と
いう論文の趣旨を話されました。次いで、日本経済の絶頂期であった1989年頃から
最近の不況に至るまでの過程、更に、減税問題から日米経済協議、国際情勢につい
て幅広く触れました。また、人口動態学について話され、若い人の減少と企業の在
り方を問い、企業が若い人を惹き付けるには企業ミッションを明確にすることが必
要である。終わりに、不況の中にあっても惑わされることなく冷静な目で経営をさ
れて欲しいと結びました。

 2日間の短い研修でしたが、出席されました食肉センター等の経営者の方々にと
りまして、この研修会が少しでもお役に立つことができれば幸いです。

(助成部 鈴木 隆)
 
 

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