平成6年度畜産局予算の概算要求の概要

農林水産省畜産局畜政課畜産振興推進室


 最近における畜産物の需給及び価格の動向、畜産経営の動向等我が国の畜産をめ
ぐる内外の諸情勢の変化に対処して、畜産物の安定的な供給と畜産経営の健全な発
展を図るため、次の事項に重点をおいて平成6年度の予算の概算要求額が決定しま
した。

@ 生産性の向上等経営体質の強化及び畜産物需給動向への的確な対応を主眼とし
 て地域の特性を反映させつつ、整合性のとれた総合的な生産・流通・消費対策を
 展開すること。

A 草地開発、畜産環境整備等草地畜産基盤の総合的な整備を@と一体的に推進す
 ること。

B 配合飼料価格の安定、外国産飼料用麦の買入れ・売渡しと飼料穀物の備蓄、国
 内産飼料用麦の生産・流通の促進等流通飼料対策の適切な推進を図ること。

C 加工原料乳、食肉、肉用子牛、鶏卵等畜産物の価格安定対策の適正な推進を図
 ること。

 特に、最近の畜産をめぐる情勢の変化に対応して、活力ある経営体の育成、酪農
労働時間の一層の短縮、肉用牛生産技術の利用促進、食肉処理体制の整備の推進、
環境保全型畜産の一層の推進等を図ることとし、関連施策を充実強化することとし
ております。

 なお、平成6年度の畜産局予算の概算要求額を総括して示すと表のとおりです。

 以下、その概要を紹介します(カッコ内は、5年度予算額)。 

      表 平成6年度畜産局予算要求総括表
事 項 5年度予算額 6年度予算額 対前年度比
(百万円) (百万円) (%)
(非公共) 143,755 143,970 100.1
1 畜産活性化総合対策 15,829 16,066 101.5
2 配合飼料価格安定対策 330 200 60.6
3 食管会計繰入れ 300 300 100.0
4 飼料用麦流通促進対策 914 914 100.0
5 加工原料乳不足払 26,915 26,677 99.1
6 学校給食用牛乳供給事業 5,323 5,231 98.3
7 鶏卵価格安定事業 1,236 1,236 100.0
8 肉用子牛等対策 100,608 別途検討
9 その他 12,974 13,412 103.4
(公 共) 28,725 30,179 105.1
1 飼料生産基盤整備 23,842 24,549 103.1
2 畜産環境総合整備 4,883 5,600 114.7
  ほかに、 (貸付枠) (貸付枠)  
畜産振興資金 23,000 22,700 98.7
(注)1 5年度予算額及び6年度要求額とも肉用子牛等対策費を含む。
  2 6年度の肉用子牛等対策費については、「平成6年度の概算要求について」
    (平成5年8月13日閣議了解)に基づき、予算編成過程において検討する。


1 畜産活性化総合対策 16,066百万円(15,829百万円)

 畜産主産地の活性化を図るとともに、畜産物の需給動向に的確に対応するため、
生産から流通・消費に至る各種事業を、地域の特性に即しつつ、総合的・有機的に
実施する。

<主な新規・拡充施策>

(1) 畜産経営技術高度化支援指導事業 322百万円(新規)

 畜産をめぐる情勢の変化に対応し、経営感覚に優れ生産性の高い畜産経営体を広
範かつ早急に育成するため、畜産経営体同士の切磋琢磨の中で自ら経営改善に取り
組む意欲・努力を助長するとともに、幅広い分野の専門家からなるコンサルタント
団の設置や畜産試験場の活用等による指導体制及び指導手法・内容の充実を図るこ
とにより、畜産経営体の経営・生産技術の高度化に対する支援・指導を総合的に推
進する。

(2) 乳用牛飼料新給与システム普及推進事業 165百万円(新規)

 酪農労働時間の1/4を占める飼料の調理、給与に係る労働時間を短縮するとと
もに、乳用牛の遺伝能力に見合った栄養管理を通じて生産性の向上を図るため、
TMR(完全混合飼料)の生産・供給センターをモデル的に設置するとともに、TMRの
給与技術について、技術の収集・分析、技術の改善・標準化等を行い、地域の諸条
件に適した新飼料給与システムの普及を推進する。

(3) 家畜雌雄産み分け技術利用促進事業 66百万円(新規)

 家畜受精卵を活用した雌雄産み分け技術の利用の促進を図るため、施設等の整備
及び技術者の養成を行うとともに、雌雄産み分け技術による生産をモデル的に実施
する。

(4) 肉用牛品質向上対策事業 306百万円(新規)

@ 肉用牛群資質向上対策 263百万円(新規)

 資質の高い和子牛生産を増加させるため、繁殖雌牛改良組合を組織化し、肉用子
牛生産者補給金制度の個体識別システムを活用して枝肉成績を組織的に取りまとめ、
繁殖経営にフィードバックするとともに、枝肉成績等に基づき資質の高い繁殖雌牛
群の整備を推進する。

A 交雑種肉用牛品質向上対策 43百万円(新規)
 交雑種肉用牛(F1 牛)の肉質の向上、斉一化を促進するため、交雑種肥育牛
の産肉性を調査することにより、交雑種生産用として高能力を発揮する種雄牛を効
率的」かつ早期に選定し、優良交雑種素牛を生産するための体制を整備する。

(5) 国産食肉産地体制整備事業 872百万円(新規)

 牛肉の輸入自由化後、輸入牛肉との競合が強まっている状況にかんがみ、需要者
ニーズに即し、輸出国に劣らぬ処理コストで、斉一性・利便性の高い国産牛肉を供
給する効率的な処理体制を確立するため、地域の特性に応じた産地づくりの構想を
作成するとともに、省力化を飛躍的に進め得る機械を装備した大規模な食肉センタ
ーの整備を推進する。 

(6) 自給飼料生産拡大対策事業 583百万円(505百万円)

 自給飼料生産基盤の拡大を図るため、粗飼料生産組織体を育成し、この下で、転
作田、水田裏、耕作放棄地等での集団的飼料作物生産、飼料生産利用機械施設の整
備等を引き続き推進するほか、新たに、草地における草種・草生の改良等による作
期調整を通じ、作業体系の改善を図るための新生産システムを確立する。

(7) 環境保全型畜産確立対策事業 2,268百万円(2,155百万円)

 家畜ふん尿の総合的な利用体制を確立し、環境保全型農業の推進を図るため、家
畜ふん尿の堆きゅう肥処理施設の整備、利用促進等を引き続き総合的に推進すると
ともに、新たに、特定の湖沼、内海等の閉鎖性水域周辺や水道水源周辺地域におい
て、高度な家畜ふん尿処理施設を緊急に整備する。

(8) 鶏卵等衛生対策事業 99百万円(新規)

 鶏卵等の衛生的な生産・供給体制を確立するため、鶏卵の生産段階におけるモニ
タリング衛生検査体制を整備するとともに、鶏卵等の流通段階において衛生的流通
・処理体制の整備を推進する。


2 飼料基盤・畜産環境整備対策(公共事業) 30,179百万円(28,725百万円)

(1) 飼料生産基盤整備 24,579百万円(23,842百万円)

 畜産活性化総合対策(非公共)との一体的な連携の下、草地の造成整備の計画的
な推進を図る。

(2) 畜産環境総合整備 5,600百万円(4,883百万円)

 家畜排せつ物の土地還元、公共牧場の緑資源の地域住民への提供等により、畜産
環境の総合的整備を促進する。うち、草地畜産活性化特別対策事業(新規)におい
て、中山間地域における草地景観を活用した都市住民との交流拠点の整備と草地基
盤整備及び生活環境整備を一体的に推進するほか、畜産環境整備特別対策事業を拡
充し、ふれあい農園等の整備に係る工種を追加する。


3 流通飼料対策

(1) 配合飼料価格安定対策事業 200百万円(330百万円)

  配合飼料価格の大幅な変動が畜産経営に与える影響を緩和するための価格差補て
 ん金(異常補てん)の原資を造成する。

(2)	飼料穀物の輸入・備蓄(食糧管理特別会計輸入飼料勘定繰入れ)
   300百万円(300百万円)

  外国産飼料用大麦及び小麦の買入れ、保管及び売渡し並びに飼料穀物(とうもろ
 こし・こうりゃん、大麦)の備蓄を行う。

  飼料穀物備蓄量:とうもろこし・こうりゃん 80.0(80.0)万トン
          飼料用大麦        40.0(39.7)万トン

(3) 飼料用麦流通促進対策事業 914百万円(914百万円)

  飼料用麦流通促進を図るため、飼料用麦流通促進奨励補助金の交付を行う。

  対象数量:4万トン


4 畜産物価格安定対策等

(1)指定生乳生産者団体補給交付金 26,677百万円(26,915百万円)

     加工原料乳についての不足払いを行う。
   平成5年度補給金単価 11.49円/s、限度数量 235万トン

(2)学校給食用牛乳供給事業交付金 5,231百万円(5,323百万円)

     学校給食用牛乳の供給日数の拡大に応じた助成を行う。

(3)鶏卵価格安定事業 1,236百万円(1,236百万円)

     鶏卵価格の低落時に交付する価格差補てん金の原資の造成を行う。


5 畜産振興基金

 (農業経営基盤強化措置特別会計(貸付枠 22,700百万円(23,000百万円))

   農業改良資金のうち畜産振興資金については、酪農又は肉用牛生産の生産行程
  の総合的な改善を行う生産方式の導入を図るため、引き続き、施設・機械の購入
  ・設置、繁殖牛、肥育牛及び優良乳用牛の購入・育成等に必要な無利子資金の貸
  付を行うとともに、酪農関係の施設・機械の貸付対象にフリーストール・パーラ
  ー等の省力化施設・機械を加える。


6 その他

   家畜伝染病予防対策、家畜改良センターにおける対策、動物検疫所の整備、畜
  産技術協力推進事業等国が主体的に実施する施策を行う。

   以上が平成6年度畜産局予算の概算要求額の概要です。

   なお、肉用子牛等対策費については、「平成6年度の概算要求について」(平
  成5年8月13日閣議了解)に基づき、予算編成過程において検討することとされ
  ております。

   平成6年度予算編成作業は、税収の伸び悩み等により平成4年度決算において、
  決算上の不足が生じるという財政事情の深刻な状況等を背景に、例年以上に極め
  て厳しい折衝となっていますが、新政策で示した方向等を踏まえ、最近の畜産を
  めぐる情勢の変化に対応した関連施策の充実強化を図るため、予算確保に努力中
  です。


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