◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

  「世界初の無麻酔による頸管経由の受精卵移植に成功」    

(鳥取県 山崎 和夫)
 豚の受精卵移植は、 豚のバイオテクノロジーでは最も基本的な技術であり、 豚
の慢性疾病の予防及び衛生的な種畜の導入のために重要である。 
 
 豚の場合は、 外科手術をして、 子宮に直接受精卵を移植するため、 施設、 労力、
経費の問題があり、 技術普及の障害となっている。 
 
 手術しないで頸管から移植する技術の開発がかねてから待望され、 国内外の多
くの研究者がこれに取り組んできた。 豚の受精卵の頸管経由による移植の成功例
の報告は、 国内で2例あったが、 いずれも1回の成功で再現性に乏しいものであ
った。 
 
 国外では、 昨年の秋、 ドイツで複数の成功例の報告があったが、 これは麻酔を
した上で子宮頸管経由による受精卵移植であった。 
 
 このたび、 鳥取県中小家畜試験場 (西伯町) 研究員米村功氏は、 麻酔を使わず
に鼻を保定するだけで、 2頭の雌豚に受精卵を頸管経由で移植したところ、 2頭
とも受胎し、 今年1月に分娩させた。 
 
 米村研究員は 「今後、 移植例数を増やし、 最適な移植卵数の検討などを行う。 
また、 受精卵の凍結保存技術を修得し、 将来的には非外科的な採卵技術も確立し、
無麻酔の実用化に向けての試験研究に取り組みたい。 」 と語っている。 
 
 なお、 米村研究員は平成6年3月23日、 鳥取県の西尾知事から研究業績の向上
に貢献したとして表彰を受けた。  
  

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