◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

  経膣採卵による体外受精子牛の誕生

 

(鹿児島県 猪八重 悟)
  本年4月に全面オープンした鹿児島県肉用牛改良研究所では、 「超音波
経膣採卵機」 を用い生きた雌牛から卵子を取り出し体外受精させ、 別の
雌牛3頭に移植し、 その妊娠に成功した。 6月5日に最初の1頭が双子
を出産した。  生まれたのは、 雄が31.9s、 雌が20.9sで、 残りの2頭
は6月末から7月始めに分娩予定である。 
 
  超音波経膣採卵機とは、 長さ60センチ、 直径約3センチのスチール製
の棒で、 この棒を経膣から体内に挿入し、 その先端部から出る超音波に
よる卵巣の画像をモニターテレビで見ながら卵子を吸い出す装置である。 
 
  これまでの受精卵移植は、 人工授精した雌牛 (供卵牛) から約1週間
後に取り出した受精卵か、 又は、 と畜場で採取した卵巣中から卵子を取
り出し体外受精させた受精卵を、 受卵牛に移植する方法が通例である。 
 
  牛の卵巣内では常に数個の卵子が成長しており、 これを採取して受精
卵を得ることが可能となれば、 従来のように供卵牛に多排卵のための多
量のホルモン剤を投与する必要もなく、 また、 と体卵巣から1回だけ採
卵するよりも、 繰り返し (3〜4日間隔で) 多くの卵子を得られるメリ
ットがある。 
 
  この方法は高度な技術で、 今後更に研究を必要とする点もあり、 実用
化に向け引き続き鹿児島県大学農学部との共同研究を進める計画である。
  
 

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