地域別にみた食肉の家計消費の動き  

                                          農林水産省畜産局食肉鶏卵課  桑 原 芳 彦 


増加に転じた食肉の家計消費
  食肉の消費は、 家計消費、 加工仕向及び外食等と大きく3つに分けられる。 全国ベース
でみると、 家計消費が占める割合は、 牛肉で約5割、 豚肉で約4割、 鶏肉で約3割となっ
ている(表1)。 食肉全体 (牛肉、 豚肉及び鶏肉の合計) の家計消費量は、 昭和63年以降減
少傾向で推移してきたが、 平成4年に増加に転じた。 品目別の消費量についてみると、 牛
肉は増加傾向で推移し、 豚肉は減少傾向で推移してきたものが、 5年はわずかに増加した。
鶏肉については、 減少傾向となっている。 
 
  元年と5年の品目別の構成比をみると、 前述の牛肉の増加傾向を反映し、 牛肉は、 25.6
%のシェアが28.8%と高まったが、 豚肉は、 42.1%が40.3%と低下し、 鶏肉についても、
32.4%が30.9%と低下した (表2)。 
  
  近年の食肉全体の1人当たりの家計消費量が増加しているのは、 牛肉消費量の増加によ
るものであり、 その増加の要因としては、 牛肉の輸入自由化により牛肉輸入量が増加し、 
それに伴う牛肉価格の低下によるところが大きいと考えられる。 牛肉の購入単価 (牛肉の
1世帯当たりの支出金額/購入数量×100c)は、 牛肉輸入自由化前年の2年は329円/100
cであったが、 5年には290円/100cと低下している(表3及び図1)。 購入単価の低下は
通常の小売価格の低下によるものばかりでなく、量販店を中心とした牛肉の特売が盛んに行
われるようになったことに伴い、 消費者の購入がその時に集中する傾向が強まったことも
大きな要因であると考えられる。 
 
  牛肉の消費量が増加しているもう一つの要因として考えられることは、 これまで牛肉の
消費量が比較的少なかった東日本地域での消費が伸びてきているということである。 食肉
の消費については、 東日本は豚肉中心、 西日本は牛肉中心ということが言われる。 料理で
例えると、 肉じゃがの場合、 肉とは東日本では豚肉だが、 西日本では牛肉であり、 また、 
関西でカレーライスと言えばビーフカレーのことを意味するといった具合である。 
  
  このように、 食肉の消費動向は地域により異なるため、 全国ベースの消費動向を把握す
るときに、 地域別の食肉の1人当たりの家計消費量の推移及びその特徴について知る必要
がある。 ここでは、 地域としては東日本と西日本と大きく2つに分け、 東日本の代表的な
地域として東北及び関東地方、 西日本の代表的な地域として近畿及び中国地方についてそ
れぞれの地域の消費動向を見ていくこととする。 


牛肉の消費が伸びている東日本
  東北地方の場合、 食肉全体では増加傾向で推移している。 品目別についてみると、 牛肉 
は2年以降10%を超える伸びが続いており、 5年は20%を超えた。 豚肉は減少傾向で推移 
し、 鶏肉についても、 減少傾向で推移してきたが、 5年はやや増加した。 元年と5年を比 
べた品目別の構成比は、 牛肉は11.8%のシェアが19.6%と高まったが、 豚肉は59. 2%で 
あったものが53.0%と、 鶏肉についても、 28.9%が27.4%と低下した (図2及び図3)。 

  関東地方の場合、 食肉全体ではほぼ横ばいで推移している。 品目別についてみると、牛
肉は増加傾向で推移しているが、 豚肉及び鶏肉については減少傾向で推移している。 元年
と5年を比べた品目別の構成比は、 牛肉は20. 0%のシェアが24.6%と高まったが、 豚肉
は50.6%が47.3%と低下し、 鶏肉についても、 29.4%が28.1%と低下した (図4)。 
 
  このように、 近年、 東日本の食肉の家計消費量は、 全体としては横ばいないし増加傾向
で推移している。 品目別には、 牛肉については増加傾向で推移しているが、 豚肉及び鶏肉
については減少傾向となっている。 品目別の構成比については、 牛肉のシェアの伸びが続
き、 豚肉及び鶏肉のシェアは低下傾向で推移している。 
 
  消費量は、 全体の伸びは小さく、 牛肉は増加傾向、 豚肉が減少傾向で推移していること
から、 豚肉から牛肉へと消費がシフトしているものと考えられる。 
シェアが一定の西日本の食肉消費
 近畿地方の場合、 食肉全体では、 ほぼ横ばいで推移してきたが、 5年はわずかに増加し  
た。 品目別についてみると、 牛肉は2年以降ほぼ横ばいで推移している。 豚肉はほぼ横ば  
いで推移してきたが、 5年はやや増加した。 鶏肉は3年以降ほぼ横ばいで推移している。   
品目別の構成比については、 牛肉は、 2年以降38%台とほとんどシェアに変化が見られな  
い。 豚肉、 鶏肉についても、 元年以降30〜31%台で推移している。 このように近畿地方の  
場合、 食肉の構成比は、 牛肉が約4割、 豚肉が約3割、 鶏肉が約3割と近年ほぼ一定の割  
合で推移している。 

 近畿地方のもう一つの特徴として、 他の地域に比べ牛肉の購入単価が高い水準にあると  
いうことである。 全国的に購入単価の低下が続いている牛肉において、 5年は331円/100  
cと、 依然300円/100cを超える水準にある。 関西では、「輸入牛肉よりも国産牛肉」、「乳  
用種よりも和牛」 というように、 食肉の中では、 長年牛肉を中心としてきた食文化により、  
多分、 価格低下を犠牲にしても、 一定水準以上の肉質の牛肉 (美味しい牛肉) を購入する  
傾向が強いためと考えられる (図5及び図6)。 

  中国地方の場合、 食肉全体では横ばいで推移している。 品目別についてみると、 牛肉は、 
2年以降3年を除きほぼ横ばいで推移している。 豚肉は2年以降、 また、 鶏肉についても 
横ばいで推移している。 元年以降の品目別の構成比についてみると、牛肉は3年を除き36〜 
37%台で、 豚肉についても3年を除き29〜30%台で推移している。 鶏肉についても32〜33 
%台とほとんどシェアに変化が見られない。 このように、 中国地方においても、 近畿地方 
同様その構成比に大きな変化は見られない。 その構成比は、 牛肉が約4割、 豚肉が約3割、  
鶏肉が約3割と近年ほぼ一定の割合で推移している (図7)。  
  このように、 近年、 西日本の食肉の1人当たりの家計消費量は、 全体としては横ばいな 
いし、 わずかに増加傾向で推移している。 品目別の構成比について見てみても、 その構成 
比に大きな変化は見られれない。
西日本の牛肉消費は東日本の約2倍、
豚肉は逆に東日本が西日本の約1. 5倍
  東日本と西日本の食肉の年間1人当たりの家計消費量を比較すると消費量及び品目別の
構成比において大きな違いがある。 5年のデータで比較してみると、 食肉全体では東日本
が約10〜11s台であるのに対し、 西日本は約12〜13s台と、 2s程度上回っている。 また、 
全国平均との比較では、 東日本は全国平均を下回っているが、 西日本は上回る水準にある。 
 
  品目別の消費量については、 牛肉は、 東日本が約2. 0〜2. 8sであるのに対し、 西日本
は約4. 7〜4. 8sと2s程度 (約2倍) 上回っている。 全国平均との比較では、 東日本は
全国平均を下回り、 西日本は上回る水準にある。 しかし、 東日本の牛肉の消費量は増加傾
向にあり、 消費量も全国平均や西日本の地域に比べ未だ低い水準にあるため、 今後も増加
するものと見込まれる。 
 
  豚肉については、 東日本が約5. 4sであるのに対し、 西日本は約3. 5〜3. 9sと、 2s
程度 (約1. 5倍) 東日本が西日本を上回っているが、 東日本は豚肉の消費量が減少傾向に
ある。 また、 全国平均との比較では、 東日本は全国平均を上回る水準であり、 西日本は下
回る水準にある。 
 
  鶏肉については、 東日本が約2. 8〜3. 2sであるのに対し、 西日本は3. 9〜4. 0sと、 
1s程度西日本が上回っている (図8)。 
 
  品目別の構成比を5年のデータで比較してみると、 牛肉については、 東日本は約2割か
ら2割強という水準であるのに対し、 西日本は約4割を占めている。 しかし、 近年の東日
本の地域における牛肉のシェアは、 東北地方においては、 元年は12%であったシェアが5
年には20%に、 また、 関東地方においても、 同じく20%であったシェアが25%まで伸びて
きていることから、 今後の牛肉の消費量の増加に伴い、 東日本における牛肉のシェアは高
まっていくものと見込まれる。 
  
  豚肉については、 東日本は約5割を占めているが、 西日本の地域は約4割弱という水準
である。 しかし、 近年の東日本における豚肉のシェアは、 東北地方においては、 元年は59
%であったシェアが5年には53%と、 また、 関東地方においても、 同じく51%であったシ
ェアが47%と低下してきており、 今後の牛肉の消費量の増加に伴い、 東日本における豚肉
のシェアは低下するものと見込まれる。 
  
  鶏肉については、 東日本は3割弱を占め、 西日本においても3割強とほぼ同水準となっ
ている (図9)。 
食肉全体の消費量の拡大へ
  牛肉輸入自由化による牛肉価格の低下は、 これまで牛肉消費量の少なかった東日本にお
いては、 牛肉消費量の増加をもたらしたと見られるが、 食肉消費が成熟しているといわれ
る西日本においては、 牛肉の購入単価の低下も小さく、 食肉消費量全体に大きな変化は見
られない。 
 
  食肉全体としては、 食肉の家計消費量が全国平均を下回っている東日本地域でも横ばい
ないし増加傾向で推移しており、 今後、 東日本のみならず、 全国での消費量が増えること
を期待したい。 
 
  また、 品目別にみたとき、 大きな変化のない西日本に比べ、 東日本地域は牛肉対豚肉・
鶏肉という様相が見られ、 牛肉の輸入量の増大ともあいまって、 今後どのような変化を起
こしていくのか注目されるところである。 
 

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