最近の畜産物の需給動向

  
国内の主要畜産物の短期需給動向を毎月トレースします。 原データは、 巻末の参考  
資料を御参照願います。 なお ( ) 内数値は、 対前年増減率です。また、 季節調整  
は、 米国商務省のセンサス局法 (X−11) によっています。  

                                   乳業部、食肉生産流通部、企画情報部

 〔牛  肉〕
生産量はほぼ前年並み
 5月の牛肉生産量は、3万2千201トン(0.3%)とほぼ前年並みとなった
(図3)。種類別のと畜頭数を見ると、和牛は去勢和牛、めす和牛ともかな
り増加(それぞれ7.9%、16.0%)したため、和牛計は4万6千19頭と前年
をかなり上回った(11.8%)。 一方、乳牛は乳用めす牛がほぼ前年並みで
あったのに対し、乳用肥育おす牛がかなり減少したことから乳牛計で6万7
千114頭と前年同月をやや下回り(▲4.0%)、その結果、成牛全体では
11万5千405頭と前年よりわずかに増加した(1.5%)。
輸入量は引き続き5万トン台
 5月の輸入量は、冷蔵品2万7千940トン、冷凍品2万8千583トン
、その他(煮沸肉、ほほ肉、頭肉)131トン、合計5万6千654トン
(23.3%)と4月より約5千500トン増加し3ヵ月連続で5万トン台とな
った(図4)。事業団の独自の調査による6月の輸入見込数量は、冷蔵品3
万1千トン、冷凍品2万トン、合計5万1千トン前後と見込まれ、また、7
月については、6月よりも減少し、4万8千トン前後(冷蔵品2万8千トン、
冷凍品2万トン)になるものと見込まれている。

推定出回り量は大幅に増加
 6年5月の推定出回り量(消費量)は、輸入品の出回り量が増加したこと
に伴い、全体で7万5千847トンと前年同月を大幅に上回った。(16.1%、
図1)。
 
  5月末の推定期末在庫は、高水準の輸入が続いていることにより4月より
約1万3千トン増加し9万千843トン(29.7%)となった(図2)。内訳
をみると、輸入品在庫が前月より約1万2千トン増加し、8万6千95トン
(32.8%)となった。

枝肉卸売価格は上昇(6月)
 5月の省令価格(東京市場、以下同じ)は950円/kgと前年同月をやや
下回った(▲3.5%、図5)。6月の価格(速報値、瑕疵のある枝肉を除く)
は、971円/kgと前年をやや上回っている。
 
  6月の和牛の主要クラスの価格は、お中元の手当が始まったこと等から前
月より値を上げ和去勢「A−5」が2,671円、同「A−4」は1,969円となっ
た。

 一方、5月下期から6月上期にかけての輸入牛肉価格(国内仲間相場)は、
北米産についてはロイン系を除き冷蔵品、冷凍品ともに前月より値を下げて
いるが、特にもも系の下げ幅が大きい。
 
 〔肉 用 子 牛〕
 
黒毛和種の取引価格は低迷
 5月の黒毛和種の子牛取引頭数は、4万1千頭( ▲1.6%)と前年をわず
かに下回ったが、取引価格は雌雄平均で30万円/頭(▲9.1%)とかなり値
を下げた。6月の速報値(6月30日現在、以下この項で同じ)では、雌23
万6千円/頭、雄31万6千円/頭、平均27万9千円/頭とさらに下げている
(図6)。
乳子牛価格は5万円(6月速報値)
 5月の乳用種の子牛取引頭数は、4千38頭(29.8%)で前年同日を大幅
に上回った。取引価格は雌雄平均で6万7千円/頭(▲27.2%)と大幅に値を
下げた。6月の速報値では、雌雄とも引き続き軟調であり平均5万9千円/頭
と価格を下げている。

 5月の乳用種のヌレ子の価格は、4万9千円/頭となり、6月の速報値でも
4万8千円/頭と引き続き4万円台となっている(図7)。
 
 今月のトピックス
牛肉価格の季節変動について

 乳去勢(中央卸売市場、卸売価格平均)と豪州産冷蔵品(フルセット)の
価格(仲間相場)について毎年現れる規制的な季節変動(図8)をみると、
前者は年末需要を迎える12月にピークを迎える。後者は2月にピークを迎
えるが、これはクリスマス休暇により豪州のハッカーが休業することにより、
2ヵ月後の輸入量が減少するためと考えられる。
 
 〔豚 肉〕
 
前年をわずかに上回った生産量
 6年5月の国内生産量は、7万8千621トンと前年同月をわずかに上回
り、(2.2%)季節調整済みの動きも微増傾向で推移していることが分かる
(図1)。6月のと畜頭数(速報値)は、152万頭と前年同月と同じ水準
であるが、農林水産省畜産局は、7月が前年同月をわずかに下回る150万
7千頭(▲2%)と見込み、8月及び9月についても2〜3%減少するものと
予測している。
前年を同水準の5月の輸入量
 5月の輸入量は、対前年同月比で28%増となった4月より6千トン下回る
4万538トンで、前年同月と同じ水準であった(図2)。このうち、チルド
は9千949トンで2か月ぶりに1万トンを割った。 

 6月の輸入数量については、関係者によると5月の水準を下回ったものと
見られている。
前年度をやや上回る推定出回り量
 5月の推定出回り量(部分肉ベース)は、4月の輸入増大の影響が残った
ことなどから、輸入品が前年同月を大幅に上回り(16.2%)、国産品と併せ
ると10万9千451トンになり、前年同月をやや上回った(5.9%)。推定
末期在庫は、国産品、輸入品とも前年同月末をやや上回り、9万8千943
トンとなった(4.2%)。
強含みで推移した卸売価格
 4月よりも5円値を下げ433円/kg(▲9.4%)となった5月の枝肉卸売価格
に対し、6月の価格(平均値)は、1日当たりの全国と畜頭数が7万頭を下
回る日が多かったことと、輸入が5月に引き続いて絞られたと見られること
から、需給が引き締まり、前月より66円高の499円/kg(図4)となった。7
月の卸売価格(東京・大阪市場、省令)について畜産局では、肉豚出荷頭数が
前年をわずかに上回ると見込まれるものの、季節的需給動向からみて、6月
と同じ水準で推移するものと見込んでいる。なお、豚価安定のため昨年度に
買い入れられた調整保管在庫は、6月までにすべて放出された。

 今月のトピックス
海外への直接投資の動き
 豚肉は、これまで、牛肉や鶏肉と異なり、商社等による海外直接投資は限ら
れていたが、このほど、ある大手の商社とハムメーカーは共同で米国の豚肉生
産工場を買収し、日本向けのチルド豚肉の輸出を開始した。

  また、大手食肉ディスカウント・ストアもカナダからの直接輸入に乗り出し、
自社ブランドの開発に取り組むと発表している。ガット・ウルグアイ・ラウン
ド決着による豚肉の関税引き下げを先取りした動きとの観測がある。 
 
  〔鶏 肉〕
増加傾向に転じた生産量
 6年5月の生産量は、11万3千184トン(農林水産省食肉鶏卵課推計)
と前年同月をわずかに上回った(2.4%)。一方、5月のブロイラー用ひな出
荷羽数は、前年同月をかなり下回った(▲6.1%)。季節調整済み値をみると、
出荷羽数は横ばい推移しているものの、生産量は増加傾向に転じた。
なお、農林水産省統計情報部によると、6、7、8月のひな出荷羽数は、それ
ぞれ対前年比で96%、94%、94%といずれも前年同月を下回ると見込ん
でいる。
輸入量は中国産を中心に急増
  5月の鶏肉の輸入量は、3万2千883トンと前年を大幅に上回った(36.8
%)。これは、在庫水準の減少に伴って中国産を中心に増加したことのほか、
前年同月の輸入量が少なかったことが影響しているようだ。また、ブラジル産
が前年同月で229.3%と大幅増となったが、これはブラジルからの輸入量が船
便の関係で不安定であるため、単発的に増えたものと考えられる。なお、ブロ
イラーの輸入量を季節調整済み値でみると、今年に入って増加傾向にある。
輸入量を中心に出回り増
  5月の推定出回り量(消費量)は、割安感が出た輸入品を中心に消費が増え
たことから、14万3千30トンと前年同月より大幅に増加した(17.4%)。
しかしながら、これは前年同月の出回り量が非常に低い水準であったことが影
響しており、消費が回復したとはいいがたい。
夏場の需要が期待される卸売価格
  5月のもも肉、むね肉の卸売価格(東京)は、それぞれ579円/kg(1.8%)、
319円(▲5.3%)となった。6月に入ると、梅雨入りで鶏肉の不需要期に入っ
たことからもも肉が反落する一方、価格水準が低くなったむね肉が量販店の特
売が増えたこと等から堅調であった。7月に入っての価格も(農林水産省「畜
産物市況速報」、7日現在)、もも肉495円/kg、むね肉332円/kgとなっている。
しかしながら、輸入動向に懸念材料はあるものの、昨年のような冷夏はないと
みられ、夏の行楽用や業務用の需要が期待される。なお、と体(大)とむね肉
の卸売価格を季節調整済み値でみると、図3のようになっている。

 
 今月のトピックス
主産地ではブロイラーの規模拡大進まず
 農林水産省「食鳥流通統計」(速報値)によると、平成6年2月1日現在の
ブロイラー飼養戸数は4千140戸、飼養羽数は1億2千700万羽で、前年に比べそ
れぞれ7.0%、5.8%減少した。この結果、1戸当りの飼養羽数は、前年に比べ
400羽増加し、3万800羽と規模拡大が進んだ。

  ただ、宮崎県、鹿児島県といった南九州の主産地では、飼養戸数以上に飼養
羽数が減少し、一戸当たりの規模は縮小した。  

 

 〔牛乳・乳製品〕

 

生産量は前年を下回る
   6年5月の生乳生産量は、75万2千712トンと引き続き前年をやや下回った
(▲3.1%)。北海道、都道府県別にみても、両者とも前年同月をやや下回った
(それぞれ▲3.2%、▲3.0%)。また、生乳生産量を季節調整済み値でみると、
5年春以降、減少傾向で推移している(図1)。
乳製品向け処理量はかなり大きく下回る
  5月の乳用牛乳向け処理量は、45万3千44トンと前年同月をわずかに上回
った(2.0%)。これを季節調節済み値でみると、4月末から減少し始め、5
年秋を底に上昇傾向で推移している(図2)。
 
  また、乳用牛乳の生産量は、牛乳が前年をわずかに上回ったのに対し、その
他の製品は前年を大幅に上回っており、特に乳酸菌飲料の伸びが著しい(加工乳
6.1%、乳飲料21.0%、発酵乳19.5%、乳酸菌飲料29.1%)。

 5月の乳製品向け処理量は、飲用牛乳等向け処理量が前年をわずかに上回ると
ともに、生乳生産量が減少していることから、28万7千448トンと前年同月
をかなり大きく上回った(▲11.0%)。
大幅に下回ったバターの生産量
  5月のバターの生産量は、7千680トン(▲25.9%、図3)、脱脂粉乳は、
1万7千219トン(▲16.9%、図4)と共に前年同月を大幅に下回っている。価
格をみてみると、バターは引き続き低下傾向であるが、脱脂粉乳は4月に続いて
1円/25kg値を上げた。
 今月のトピックス
夏の天気に期待
 酪農・乳業界にとって、今年の夏の天候は最も気になるところである。長雨、
冷夏が続いた昨年と異なり、今のところ今年の夏は雨が少なく、猛暑が続いてい
る。4年春頃から低下傾向にあった脱脂粉乳の価格も、今年の4月にはわずかな
がら反転し、徐々に修正されてきている。夏場の需要期に向けて牛乳・乳製品の
売れ行きに期待がかかるところだ。
 
 

 〔鶏 卵〕

 

前年をかなり下回ったえ付け羽数
 6年5月の採卵用ひなえ付け羽数は、前年同月をかなり下回った(▲5.1%)。
農林水産省統計情報部によると、6、7、8月のえ付け羽数はそれぞれ100%、
96%、98%と見込んでいる。
 
  鶏卵の生産量とえ付け羽数を季節調整済み値でみると、昨年の春以降、え付け
羽数は横ばい又は減少傾向にあるものの、生産量は抑制された気配があまり感じ
られなかった(図1)。これは、強制換羽により稼動羽数が減っていないためと
みられる。しかし、今年に入ってからは、老鶏に淘汰等から生産量は減少傾向で
推移している。
梅雨の影響等から卸売価格は弱含み
 5月の卸売価格(東京平均)は、4月より25円/kg値を下げ、142円/kgと
前年同月をかなり下回った(図2)。さらに、6月の卸売価格(全農東京M規格
の平均価格)は、梅雨入りの影響で需要が減退することなどから、前月より6円
/kg安い134円/kg(速報値)となった。

  このため、前年に引き続き、6月も標準取引価格が補てん基準価格(163円
/kg)を下回り、(社)全国鶏卵価格安定基金と(社)全日本卵価安定基金は22円
/kgの価格補てん金を交付することを決定した。 
 
 今月のトピックス
  主要国の一人当たり鶏卵消費量をみると、米国、英国などが減少する中で日本
だけは伸びており、世界のトップレベルとなっている(図3)。
  
  この要因として、卵の加工品が伸びて、卵の消費を増加させていることのほか
先進国はのきなみコレステロール問題で卵の消費が減少しているのに対して、魚
の消費が多い我が国では、健康問題が卵の消費に与える影響が少ないことがあげ
られている。ちなみに、最近の1人当たり魚類の消費量は、米国5.7kg(1992年、
国際農林水産統計)、英国8.4kg(同)であるのに対して、日本は36.3kg(1992
年度、食糧需給表)となっている。 

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