最近の畜産物の需給動向

  
国内の主要畜産物の短期需給動向を毎月トレースします。 原データは、 巻末の参考  
資料を御参照願います。 なお ( ) 内数値は、 対前年増減率です。また、 季節調整  
は、 米国商務省のセンサス局法 (X−11) によっています。  

                                   乳業部、食肉生産流通部、企画情報部

 〔牛  肉〕
ほぼ前年並みの推定出回り量
  6年4月の推定出回り量 (消費量) は、 8万7千590トンと前年をわずかに上回
った(1. 5%、 図1)。 
 
  4月末の推定期末在庫は、 高水準の輸入が続いていることにより8万4千839ト
ン(35.2%) となった (図2)。 内訳をみると国産品はほぼ前月並みの1万362トン、
輸入品は7万4千477トンと輸入品が88%を占めるに至っている。
生産量も前年並み
  4月の牛肉生産量は、 3万4千640トン(▲0. 9%)とほぼ前年並みとなった(図
3)。4月のと畜頭数を種類別で見ると、 和牛は去勢和牛、 めす和牛ともかなり増
加 (それぞれ7. 5%、 14. 1%) したため、 和牛計は5万1千331頭と前年をかな
り上回った(10. 6%)。 
 
  一方、 乳牛は乳めす牛がほぼ前年並みであったのに対し、 乳用肥育おす牛がか
なり減少したことから乳牛計で7万507頭と前年をかなり下回り (▲7. 0%)、 そ
の結果、 成牛全体では12万4千275頭とほぼ前年並みとなった (▲0. 8%)。 
 
輸入量は引き続き5万トン台
4月の輸入量は、 冷蔵品2万8千780トン、 冷凍品2万2千198トン、 その他 (煮沸
肉、 ほほ肉、 頭肉) 152トン、 合計5万1千129トン (▲18. 3%) と3月に引き続
き5万トン台となった (図4、 図5)。 
 
 事業団の独自の調査による5月の輸入見込数量は、 冷蔵品2万9千トン、 冷凍品
2万5千トン、 合計5万4千トン前後と見込まれ、 また、 6月については、 5月よ
りも減少し、 4万9千トン前後 (冷蔵品2万8千トン、 冷凍品2万1千トン) にな
るものと見込まれている。 
枝肉卸売価格は弱含み
 4月の省令価格(東京市場、 以下同じ)は、 980円/kgと前年をやや下回った(▲4.9
%、 図6)。 5月の価格 (速報値、 瑕疵のある枝肉を除く) は、 977円/kgと前月を
わずかに下回っている。 
 
  5月の和牛の主要クラスの価格は、 季節的に消費の端境期であることから前月よ
り値を下げ、 和去勢 「A−5」 が2, 564円、 同 「A−4」 は1, 885円となった。 
 
  一方、 4月から5月上期にかけての輸入牛肉価格 (国内仲間相場) は、 北米産冷
蔵品、 同冷凍品とも総じて前月並みか値を下げている。 豪州産については、 冷蔵品、 
冷凍品ともに値を下げているが、 特に冷凍品のかた系ともも系の下げ幅が大きい。 

 〔肉用子牛〕
黒毛和種の取引価格は低迷
  4月の黒毛和種の子牛取引頭数は、 3万4千頭で前年をやや上回ったが、 取引価
格は雌雄平均で前月を6千円下回る31万2千円/頭となった。 5月の速報値 (5月
31日現在、 以下この項で同じ)では、 雌27万2千円/頭、 雄35万2千円/頭、 平均
31万6千円/頭となっている (図7)。 

乳子牛価格は6万円台 (5月速報値)

  4月の乳用種の子牛取引頭数は、 3千918頭で前月よりわずかに下回った。 取引
価格は雄子牛が7万9千円と先月より3千円値を下げ、 雌雄平均でも7万1千円/
頭とかなり値を下げた。 5月の速報値では、 雌雄とも引き続き軟調であり平均6万
9千円/頭と引続き価格を下げている。 
 
  4月の乳用種のヌレ子の価格は、 5万4千円/頭と引き続き5万円台となったが、 
5月の速報値では4万9千円/頭と値を下げている (図8)。 


 今月のトピックス
輸入牛肉の購入価格帯は151円〜300円位
 が中心
季節別食肉消費動向調査報告−第30回消費者調査− ((財)日本食肉消費総合センタ
ー、 全国の主要都市2千世帯を12月に調査) によると、 1カ月間に輸入牛肉を 「買
った」世帯は42. 2%、 「買わなかった」 世帯が57. 3%となった。 購入世帯比率につ
いては、平成元年31. 9%、 2年32. 7%、 3年38. 1%、 4年が38. 4%と推移して
おり、 牛肉の輸入自由化が実施された3年には購入世帯がかなり増加している。 
 また、 購入価格については右表のとおりであり、 100g当たり 「201〜250円位」 が
33. 1%でトップとなっている。 
輸入牛肉100g当たりの価格(単位:世帯、%)
回答者数 844
100以下 4.4
101円〜150円位 11.7
151円〜200円位 20.5
201円〜250円位 33.1
251円〜300円位 24.1
301円〜350円位 8.9
351円〜450円位 14.7
451円以上 4.5
わからない 4.8
平均(円) 250.2
  
 〔豚  肉〕 
減少傾向で推移する生産量
  6年4月の国内生産量は、 8万2千471トンと前年をやや下回った (▲3. 4%
図1)。 
 農林水産省畜産局によると、 5月の肉豚出荷頭数 (概数) は前年とほぼ同じ146
万2千頭  (0. 3%)、 6月は前年をわずかに下回る151万頭 (▲1%) と見込んで
いるが、 7月及び8月はそれぞれ2%減少すると予測しており (肉豚出荷予測)、 
生産量は減少傾向で推移しそうである。 
 
大幅に増えた4月の輸入量
4月の輸入量は、 4万6千608トンと前年を大幅に上回った (27. 8% 図2)。 こ
の背景には、 4月から差額関税制度の基準輸入価格が16. 67円/kg(部分肉ベース)
引き下げられたために、 輸入を4月に繰り延べる動きが見られたことがある。 
 ただ、 輸入繰延べの影響を排除するため、 3月と4月の合計を前年同期と比べて
みても、 輸入量はかなり大きく増えており (13. 5%)、 この輸入増加の勢いが5月
以降も続くのかどうか、 注目される。 
 
前年度をわずかに上回る推定出回り量
4月の推定出回り量は (消費量) は、 国産品、 輸入品とも前年を上回り、 合計12万
7千392トンと前年をわずかに上回った (2. 7% 図3)。 
 推定期末在庫は、 輸入量の増加を受け、 輸入品が7万610トンと前年をかなり大き
く上回っている (12. 3%)。 
 
低水準が続く卸売価格
5月の枝肉卸売価格(速報値、 東京市場、 省令)は、 末端需要が引き続き弱かったこ
とと5月に入っても輸入量が減っていない (関係者) ことなどから前月より5円/
kg値を下げて、 433円/kg (図4) となった。 
 
  畜産局では、 6月の卸売価格 (東京・大阪市場、 省令) は、 肉豚出荷頭数が前月
を上回ると見込まれているものの、 季節的需給動向等からみて、 前月を上回る水準
で推移するものと見込んでいる。 

 今月のトピックス
お惣菜としての豚カツの利用のされ方
お惣菜や弁当などを買ってきて家で食べる 「中食」 という形態が注目されてい
るが、 お惣菜として豚カツが意外と利用されていることが(社)日本惣菜協会
の調査で分かった。 
 この調査は昨年12月に首都圏の女性を対象に行われたもの。 半年間の購入頻
度をみると40種類の惣菜のうち、 豚カツは15位で、 ハンバーグや、 海老フライ
よりも上位になっている。 購入先は精肉店が42%と最も多く、 普段のおかずと
して利用する以外に、 忙しいとき購入するとの答えが多かった。


 〔鶏  肉〕 
依然、 生産量は減少傾向
6年4月の生産量は、 10万9千678トン (農林水産省食肉鶏卵課推計) と前年
をやや下回った (▲5. 5%)。 生産量を季節調整済み値でみると、 依然、 減少
傾向で推移している (図1)。
 
 また、 4月のブロイラー用ひな出荷羽数は、 南九州など主産地で減産が進ん
だことから前年をやや下回った (▲5. 4%) 。なお、 農林水産省統計情報部に
よると、 5、 6、 7月のひな出荷羽数は、それぞれ対前年比で96%、 96%、94
%といずれも前年を下回ると見込んでいる。 
 
シェア拡大が進む中国産
4月の鶏肉の輸入量は、 わずかに前年を上回る3万111トンであった(2. 0%)。
ブロイラーの輸入量を国別にみると、 タイ9千695トン (輸入量に占める割合
33. 2%)、 米国8千683トン (同28. 8%)、 中国8千540トン(同28. 4%)と
なっている。 国別輸入量を季節調整済み値でみると、 特に、 中国では人件費
が安いことや日本への距離が近いことから日本向けの生産拠点の整備が進め
られており、 中国産のシェア拡大が続いている(図2)。 しかしながら、 冷凍
品より味の面で優れているといわれる冷蔵品は、  88トン程度で量的にはまだ
わずかである。 
 
8万トンを切った期末在庫
4月の推定出回り量 (消費量) は、 前年をやや上回る15万183トンであった (3.
 0%)。 特に、 国産品と比較して割安感が出てきた輸入品は、 加工メーカーが
 国産品から輸入品に切り替えている影響などから前年を大幅に上回った。 一
 方、 推定期末在庫は、 国内生産量が少なかったこと、 輸入品の消費量が多か
 ったことなどから、 国産品、 輸入品ともに在庫調整が進み、 7万2千272トン
 と前年を大幅に下回る水準となっている (▲16. 4%)。 
 
上昇基調にあった卸売価格も連休後から反落
4月のもも肉、 むね肉の卸売価格 (東京) は、 それぞれ577円/kg (4. 2%)、 
 309円/kg (▲8. 3%) となった。 5月に入ると、 連休前後はもも肉で600円
 /kg、 むね肉で340円/kgを超える水準であったものの、 連休後は反落した。
 
   6月に入っての価格も (農林水産省 「畜産物市況速報」、 8日現在)、 もも
 肉551円/kg、 むね肉328円/kgと、 梅雨入りで鶏肉の不需要期に入ることか
 ら、 さらに値を下げている。 なお、 と体 (大) とむね肉の卸売価格を季節調
 整済み値でみると、 図3のようになっている。 


 今月のトピックス
鶏肉の輸入価格にみる特徴
国別に鶏肉の輸入価格 (CIF、 骨つきもも肉) をみると、 タイ、 ブラジル、
米国の順になっている (図4)。 輸入量が増加傾向にある中国は、 毎月、 コ
ンスタントに輸入されていないため図には表示されていないが、 レベルと
してはタイとブラジルの中間に位置している。 これらの価格差は、 品質、 
飼料代、 人件費、 フレート等の要因により生じているが、 おおむね為替が
落ちついているもの、 価格が上昇傾向にある。 食肉輸出入協議会によると、 
米国はロシア向けの輸出、 ブラジルは生産減、 タイはコスト高などが価格
の上昇に影響しているようだ。 
 
 〔牛乳・乳製品〕 
生産量は前年を下回る
6年4月の生乳生産量は、 71万6千999トンと引き続き前年をやや下回った   
(▲3. 0%)。 北海道、 都府県別にみても、 前年を北海道はわずかに (▲2.   
7%)、 都府県はやや下回った (▲3. 3%)。 また、 生乳生産量を季節調整   
済み値でみると、 5年2月以降、 減少傾向で推移している (図1)。 
 
乳製品向け処理量はかなり大きく下回る
4月の飲用牛乳等向け処理量は、 42万7千102トンと前年をわずかに上回
った (1. 9%)。 これを季節調整済み値でみると、 4年末から減少し始め、
5年秋を底に上昇傾向で推移している (図2)。 
 
  また、 飲用牛乳の生産量は、 牛乳が前年並みであるのに対し、 その他の
製品は前年を上回った (加工乳4. 0%、 乳飲料6. 1%、 発酵乳27. 6%、 乳
酸菌飲料16. 6%)。 
 
  4月の乳製品向け処理量は、 飲用牛乳等向け処理量が前年をわずかに上
回るとともに、 生乳生産量が減少していることから、 27万8千272トンと前
年をかなり大きく下回った (▲10. 3%)。 

大幅に下回ったバターの生産量
4月のバター生産量は、 8万41トンと引き続き前年を大幅に下回った (▲
22. 2%、 図3)。 また、 脱脂粉乳も、 1万8千41トンと前年をかなり大き
く下回った (▲14. 1%、 図4)。 価格をみてみると、 バターは低下傾向、 
脱脂粉乳は横ばいで推移している。 
 
  また、 農水省畜産局によると、 バターの5年度期末在庫は5万3千トン
で需要の7. 5カ月分、 脱脂粉乳は6万トンで3. 4カ月分となっている。 
 今月のトピックス
国産ナチュラルチーズ生産量は、 過去最高
  5年度のチーズ需給表が公表された (農水省畜産局)。 これによると、 消費量 
は18万4千トンと前年をかなり大きく上回り (5. 3%)、 初の18万トン台を記録
し、 順調な伸びを示した。 その内訳をみると、 前年に引き続きナチュラルチーズ
 (9万2千トン) がプロセスチーズ (9万1千トン)をわずかに上回っている。 
  また、 国産ナチュラルチーズの生産量は、 3万2千トン (5. 1%)、 国産プロ
セスチーズの生産量は、 8万9千トン (4. 4%)と共に過去最高となった (巻末
資料参照)。 
 〔鶏  卵〕 
下げ止まりがみられるえ付け羽数
  6年1〜3月の3カ月間の生産量は、 63万8千273トンとほぼ前年並みであっ
た。 一方、 4月の採卵用ひなえ付け羽数は前年をかなり下回った (▲6. 0%)。 
 
  しかしながら、 え付け羽数を季節調整済み値でみると、 卵価低迷を受けて昨
年秋から減少傾向で推移していたが、 ここ数カ月は下げ止まり感がみられ、 今
後の生産量が注目される (図1)。 農林水産省統計情報部によると、5、 6、 7
月のえ付け羽数はそれぞれ97%、 99%、 98%と見込んでいる。 
 
  なお、4月の主要都市の鶏卵市場における入荷量は、 3万6千501トンと前年
をかなり上回った (6. 3%)。 

5月の卸売価格は荷余り感から下落
  4月の卸売価格 (東京平均) は、 3月より33円/kg値を下げたものの、前年
と同じ167円/kgとなった (図2)。 
 
  しかしながら、 5月の卸売価格 (全農東京M規格の平均価格) は、連休前に
産地で停滞していた鶏卵が集中的に出荷され、 荷余り感が急速に強まったこと
もあり、 前月より26円/kgも安い140円/kg (速報値) と大幅に下落した。 
 
  4月に引き続き、 5月も標準取引価格が補てん基準価格 (163円/kg) を下
回ったため、(社)全国鶏卵価格安定基金と(社)全日本卵価安定基金は20円/kg
の価格補てん金を交付することを決定した。 
 
 今月のトピックス
特売の目玉
  農林水産省食品流通局は、 量販店における生鮮食品7品目(牛肉、 鶏卵、 豚肉、
 輸入牛肉、 まぐろ、 えび、 塩さけ)の特売実施状況について調査している。平成
 5年度の結果をみると、 鶏卵は最も大幅な値引きを実施しているものの、実施率
 では円高還元セール等を行った輸入牛肉より低くなっている(図3)。
  スーパーなどの特売の目玉といえば、「卵」というイメージがあったが、もはや
 鶏卵だけではなくなってきているようだ。
 

元のページに戻る