◎地域便り


子牛の早期出荷によるコスト低減

(鹿児島県 池田 勝)


 鹿児島市周辺と日置地区を管内とする鹿児島中央畜産農業協同組合連合会では、
牛肉の輸入自由化を契機に市場への子牛出荷月齢の短縮化に取り組んでいる。

 古くから肉用牛(黒毛和種)の肥育が盛んで、繁殖部門も取り入れた子牛生産
から肥育に至る地域内一貫生産体制に取り組んでいる地域であり、平成5年度は
子牛出荷頭数3,800頭、肉牛出荷頭数6,900頭が見込まれ、肥育牛が11, 000頭程
度飼養されている。

 これまでは、少しでも子牛を高く販売しようとする余り、子牛出荷月齢を長く
し他の人の子牛より大きく見栄えを重視した子牛育成が行われ、いわゆる過肥な
子牛(肥育素牛)が肥育農家に供給されてきた。

 牛肉が輸入自由化され国際的にも国内的にも産地間競争が激しくなる環境の中
で、肉用牛の産地として打ち勝っていくためには、より一層のコスト引き下げと
高品質化を推進する必要があった。そこで、地域のリーダー的立場の繁殖農家16
戸を子牛適正出荷(生後255日以内の子牛出荷)の展示農家に指定し、定期的に
体高等の測定や飼養管理指導を行い、平成4年9月の子牛せり市からその子牛が
市場へ出荷されるようになった。5年9月からは地域全体での実施に拡大し、現
在では適正出荷の子牛が市場取扱い頭数の2割強にもなり、最近の子牛出荷月齢
は全体的に若くなりつつあり、300キロを超える肥り過ぎの去勢子牛の出場が少
なくなってきている。

 今年1月までに出荷された適正出荷子牛の出荷成績は、出荷日令が239日(7.8
月)、体重256kg、販売価格は401千円となっており、一般出荷子牛と比較してみ
ると日令が33日短縮され体重が11キロ小さくなったものの販売価格は適正出荷子
牛の方が41千円高く取引され、56千円程度の所得増となっている。

 このような取組みを開始するにあたって、肥育農家の理解を得ることも必要で
あったため、管内で上質肉を生産する肥育農家5戸を産肉性の実証農家に指定し
積極的な導入を依頼したが、最近では地域外の多頭肥育農家の購入が多くなりつ
つある。

 今後は、子牛生産農家も肥育農家も互いの経営を理解し合い、お互いに手を取
り合って産地作りに取り組むことが望まれる時代ではなかろうか。


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