乳業部
先々月号、 先月号とこの調査のうち興味ある事項として、 酪農家の異動及びそ の原因、 経営者の年齢構成、 経産牛の飼養頭数分布、 今後の経営予定及び今後の 経営の重視事項等について、 アンケート集計及び分析を発表してきたが、 今月号 で行う2〜3年以内の資本投入計画についての集計分析をもって、 一応今回の調 査結果の概要を終わることとしたい。 1.アンケート集計結果(続き) (4) 2〜3年以内の資本投入計画について この2〜3年以内の資本投入計画についての回答は、 表の通りとなった。 回答があった酪農家のうち、 計画を持っている酪農家は457戸 (39. 4%) であり、計画をしていない酪農家531戸 (45. 8%) より6. 4ポイント下回 っている。 このことは、 調査時点を昨年の11月1日現在とし、 回答を12月中までに 求めたことから、 生乳の計画生産の強化 (制限) 及びガット・ウルグアイ ラウンド交渉の行方を見極めている時期と重なっていたことが、 このよう な結果となったものと思われる。 なお、 不明 (回答がなかった) が172戸 (14. 8%) もあったことも、 こ の時期になかなか先が見通せなかったことによるものと思われる。
<表:2〜3年以内の資本投入計画> (回答:単数) 回答のあった酪農家数1,160 →→ ・ 計画なし531(45.8%) (回答:複数) ・ 計画あり457(39.4%) →→ ・畜舎の増改築268(58.6%) ・ 不明172(14.8%) ・優良牛の導入103(22.5%) ・土地の購入108(23.6%) ・コンピュータの導入51(11.2%) ・機械設備360(78.8%) ・その他29(5.5%)
(回答:複数) (回答:単数) 機械設備 →→・畜舎関係189(52.5%) → → ・フリーストール68(36.0%) ・その他121(64.0%) ・搾乳関係132(36.7%) → → ・ミルキングパーラー52(39.4%) ・飼料作関係116(32.2%) ・その他80(60.6%) ・糞尿処理施設等環境設備関係204(56.7%) ・その他29(8.1%)
@ 資本投入計画の内容について 資本投入を計画している酪農家に対し、 その内容についても回答を求めた。 回答があった内容では、 一番多かったのは 「機械設備」 の360戸 (78. 8%) であり、 次が 「畜舎の増改築」 268戸 (58. 6%) となっている。 なお、 回答は複数回答記入方式で行っているため、 「機械設備」 と 「畜舎の 増改築」 の両方に回答した酪農家が多くあったことも表している。 この2つに回答した酪農家は半数を超えているものの、 「土地の購入」 (23. 6%)、 「優良牛の導入」 (22. 5%) 及び 「コンピュータの導入」 (11. 2%) は比較的少なかった。 A 機械設備の内容について 「機械設備」 に資本投入を計画している酪農家に対し、 アンケートはさらに その内容について回答を求めている。 回答があった内容では、 「糞尿処理施設等環境整備関係」 が204戸 (56. 7%) で一番多く、 先月号で分析した今後の経営にとっての重視事項でも 「糞尿処 理対策の充実」 が比較的回答率が高かったことと符合しており、 今後は、 酪 農の収益にとっては 「負 (マイナス)」 の要因 (コストの増加要因) に重点的 に資本投入をしなければならなくなってきていることを表しているものと思 われる。 次が 「畜舎関係」 (52. 5%) であり、 先の 「糞尿処理施設等環境整備関係」 との2つが複数回答方式で、 半数以上を超えている。 なお、 「搾乳関係」 は36. 7%及び 「飼料作関係」 は32. 2%であった。 B フリーストール、 ミルキングパーラーについて 昨今の酪農政策の中で、 飼養管理、 作業労働等の省力化の決め手として 「フ リーストール」 、 「ミルキングパーラー」 の導入等が提唱されていることから、 この2つのことについての計画に対する回答を併せて求めたが、 「畜舎関係」 に資本投入を計画している酪農家189戸のうち、 「フリーストール」 を計画し ている酪農家は68戸 (36. 0%) であり、 「搾乳関係」 に資本投入を計画して いる酪農家132戸のうち、 「ミルキングパーラー」 を計画している酪農家は52 戸(39. 4%) という結果であった。 「畜舎関係」 と 「搾乳関係」 の回答は複数回答で求めていることから、 結果 的には 「フリーストール」、 「ミルキングパーラー」 についても複数回答とな っており、 この両方を計画している酪農家はそれぞれ別にカウントされてい るが、 最大でも52戸ということになる。 したがって、 これらに資本投入を計画している酪農家は回答のあった1,160 戸のうち、 52戸であり比率的には4. 5%、 どちらか一方であれば最大68戸、 比率的には5. 9%であり、 広くいいはやされている割にはそれほど多くの酪 農家がこのことについての具体的な計画を持っていないともいえる。 (5)地域別、 年齢階層別及び飼養頭数規模別の資本投入計画 @ 地域別 (図−1参照) 資本投入計画があると回答した酪農家は、 全国ベースで39. 4%であり、 こ れを地域別に見ると、 近畿が44. 2%でやや高く、 東北が41. 9%及び北海道 が41. 6%で全国ベースより若干高い、 また、 中国・四国が31. 3%及び関東 が34. 6%とやや低いという結果となった。 都市近郊酪農地帯である、 近畿と関東が資本投入計画についての意向を異に することが注目される。 A 年齢階層別 年齢階層別の分析では、 27歳未満の層及び72歳以上の層の回答数が少ない (10件以下) ことから、 27歳以上72歳未満の層を対象とした。 結果は、 図−2の通りであり、 33歳から35歳の層を除くと、 27歳から47歳ま では 「計画している」 と 「計画していない」 はほぼ半々であるが、 48歳以降 になると 「計画している」 が年を経るごとに減少するという結果になってい る。 特に、 60歳以降 (69歳から71歳の層を除く) になると、 「計画している」 と 回答する割合が急減しているのは、 先月号で分析した今後の経営意向につい て、 「拡大していきたい」 という回答割合が急減することと同じ意味を持つ ものと思われる。 B 経産牛の飼養頭数規模別 (図−3参照) 飼養頭数規模別の分析では、 90頭以上の区分を除くと、 飼養頭数規模が大き くなるほど 「計画している」 という回答割合が高くなっており、 ほぼ完全に 規模に比例しているといえる。 なお、 「計画していない」 は全く逆の割合となっており、 この両方が丁度半々 で交差するところが 「30〜39頭規模」 のところということも注目される。
(6)年齢階層別、 飼養頭数規模別の資本投資計画の内容 年齢階層別、 及び飼養頭数規模別の資本投入計画内容の集計結果は図−4、 図−5の通りであった。 この中にあって唯一特徴的なことは、 飼養頭数規模が 「40〜49頭層」 以上の 規模では、 飼養頭数規模が大きくなるほど 「コンピュータの導入」 への回答 比率が急速に高くなっていることである。 その他の計画内容は、 10ポイントほどの変動はあるものの、 年齢や飼養頭数 規模の大小に関係なく 「機械設備」 「畜舎の増改築」 の2つが回答比率50% を超えている。
おわりに 酪農家動向等調査の集計結果について、 興味ある事項を中心に3月号から3 回にわたって発表してきたが、 調査内容には発表したもの以外に 「出荷乳量」 「乳牛の飼養方法、 搾乳方法」 及び 「乳牛の更新等」 等の項目もあり、 それ らについても集計分析の結果を発表すべきとも思うが、 紙面等の都合もあり 割愛させていただくこととした。 なお、 冒頭にも説明したとおり、 この調査は 酪農家の動向を反映した生乳生 産予測システム (政策導入等を検討するための) を構築するため、 基礎的デ ータ整備の一環として行っているものであり、 酪農家の経営に対する意向や 乳牛の更新等について経時的な変化をフォローして行くことを目的とし、 今 後も年2回 (5月1日、 11月1日現在時点) 調査を継続して行く予定であり、 ゆくゆくは定点観測的調査 (特定農家についての経時的調査) を行うことを 計画している。 したがって、 このように調査内容を集計分析して発表することは目的に反す ることではあるが、 これらの計画目的とは別に、 今後も調査を行った都度、 興味ある事項や調査に協力していただいた皆様のお役に立ちそうな事項につ いては、 今回と同様に 「畜産の情報」 等で発表していくこととしたい。 最後になったが、 調査にご協力をいただいた多数の酪農家の皆様や関係者の 方々に改めてお礼を申し上げるとともに、 今後の調査についてもご協力下さ るようお願い申しあげる。