★農林水産省から


「肉用子牛生産者補給金制度の運用改善について」

 

 農林水産省 畜産局  食肉鶏卵課  西山 信雄


はじめに 
  肉用子牛生産者補給金制度(以下「制度」という。)は、発足以来5年間を経過し、平成7
年度からは新しい業務対象年間に入りました。
  
 新しい業務対象年間においては、本制度の的確かつ円滑な運営と制度の安定化を図るため、
本年3月までに、これまでの運用上の問題点等を踏まえ、次の事項について制度運用の改善を
実施したところです。(詳細については本誌平成7年4月号を参照)

*政令改正
 ・販売月齢の引き上げ(満4月齢→満6月齢)
 ・合理化目標価格の特例措置の適用期間の延長(5年延長)

*省令改正
 ・指定肉用子牛の価格見直し(交雑種子牛を追加)

*運用通達等の改正
 ・生産者積立金の単価改定
 ・生年月日の判定基準の導入
 ・乳用種の雌子牛に盲乳の措置の導入

 さらに、今回「肉用子牛生産者補給金制度業務運営円滑化推進検討会」等における意見をも
踏まえ、生産実態を適正に反映した平均売買価格が算出されるよう、以下に示す省令の一部改
正(平均7年11月14日公布)を行い、平成7年度第2四半期の平均売買価格の算出から適用す
ることとしました。



 
今回の制度運用改善について
−肉専用種以外の品種の平均売買価格の算出方法−



1 平均売買価格算定の基本的考え方

(1)肉用子牛生産安定等特別措置法の規定
   肉用子牛の平均売買価格については、生産者補給金の算定の前提となる肉用子牛の市場
    実勢価格として、省令で定める規格に適合する子牛の、農林水産大臣の指定する家畜市場
    における売買価格の四半期ごとの平均額として算出し、農林水産大臣が告示するものとさ
    れています。

  (法第5条第3項及び第9項、政令第3条、省令第1条及び第2条)

(2)平均売買価格の算出方式
   具体的な算出方式としては、従来、各品種区分毎に当該四半期の全指定市場における売
    買価格の総計と全指定市場の取引頭数の総数で平均する方式をとっていました。
2 「肉専用種以外の品種」の平均売買価格の算出

(1)肉専用種以外の品種」については、指定市場におけるホルスタイン種(雌を除く。
     いわゆる「F1」、以下「乳・交雑種」という。)との売買価格の平均により算出して
    いましたが、指定市場における乳・交雑種の取引頭数割合が急激に増加し、制度に加入し
    ている肉用子牛(ホルスタイン種(雌を除く。)と乳・交雑種)の個体登録頭数割合との
    乖離が大幅に拡大してきました。(P34の5参照)

(2)この結果、指定市場における両品種の比率をそのまま用いた従来どおりの方式により算
    出した場合、生産実態と著しく乖離した平均売買価格を算出することとなります。

(3)このため、「肉専用種以外の品種」の平均売買価格については、本年度第2四半期から、
    ホルスタイン種と乳・交雑種の生産実態(個体登録頭数の割合)を適正に反映しうる方式
    により算出することとし、その算出方式を農林水産省令に規定することとしました。
   
   具体的な算出方法は、指定市場で売買された同一品種区分に属する2以上の品種の頭数
    の割合が、本制度に係る生産者補給金交付契約における個体登録頭数の割合と比較して著
    しく乖離すると認められる場合には、その契約の割合により加重平均する方法に改善した
    ところです。

(4)改正した方法により算出される平均売買価格は次のとおりとなります。



平均7年度第2四半期における「肉専用種以外の品種」の平均売買価格(既数)
          区分
算出方法
平均売買価格 生産者補給金 交雑種割合
従来方式による場合 120千円 37千円 43%
改定方式による場合 98千円 57千円 25%
注)従来方式は、指定市場における乳・交雑種(雄)の取引割合に基づき算出
  改定方式は、個体登録における乳・交雑種(雄)の割合に基づき算出
3 肉用子牛生産安定等特別措置法施行規則の一部を改正する省令新旧対照表

肉用子牛生産安定等特別措置法施行規則の一部を改正する省令新旧対照法
改正後 現行
(平均売買価格の算出)

第2条 法第5条第3項に規定する平均売買価格は、同項により農林水産大臣が指定する家畜市場(以下この項において「指定市場」という。)で売買された同項に規定する指定肉用子牛の売買価格を合計したものを指定市場で売買された指定肉用子牛の頭数を合計したもので除して得た額とする。
ただし、法第5条第4項に規定する保証基準価格等が肉用子牛の品種別に定められ、当該保証基準価格等に係る品種の区分が2以上の品種を含む場合であって、かつ、肉用子牛生産安定等特別措置法施行令(昭和63年政令第347号。以下「令」という。)第3条で定める各期間において指定市場で売買された当該品種の区分に属する品種の指定肉用子牛の頭数に占める当該2以上の品種の指定肉用子牛それぞれの頭数の割合が、当該期間における法第6条第1項に規定する生産者補給金交付契約に係る当該品種の区分に属する品種の肉用子牛(前条に規定する種別に属する肉用子牛に限る。)の頭数に占める当該2以上の品種の肉用子牛の頭数のそれぞれの割合(以下この項において「生産者補給金交付契約に係る割合」という。)と比較して著しく差異が生じた場合においては、指定市場における当該2以上の品種の指定肉用子牛の売買価格をそれぞれ合計したものを指定市場で売買されたそれぞれの頭数で除して得た額に生産者補給金交付契約に係る割合を乗じて得た額を加えた額とする。

2 法第5条第3項の平均売買価格を算出する場合において、その金額に50円を満たない端数を生じたときはこれを切り捨て、50円以上100円に満たない端数を生じたときはこれを100円に切り上げるものとする。

(会社である肉用子牛の生産者の要件)

第2条の2 令第6条第1号イの農林水産省令で定める件は、農地法(昭和27年法律第229号)第2条第7項に規定する農業生産法人に当該する会社であることとする。

附則
 この省令は、公布の日から施行し、平成7年7月1日から9月30日までの期間に係る平均売買価格の算出から適用する。

(平均売買価格の算出)
 
第2条 法第5条第3項の平均売買価格を算出する場合において、その金額に50円以上100円に満たない端数を生じたときはこれを100円に切り上げるものとする。

 

 

 

 

 




(会社である肉用子牛の生産者の要件)

第2条の2 肉用子牛生産安定等特別 措置法施行令(昭和63年政令第347号。以下「令」という。)第6条第1号イの農林水産省令で定める件は、農地法(昭和27年法律第229号)第2条第7項に規定する農業生産法人に該当する会社であることとする。





制度の運用改善にいたった交雑種の生産動向について
1 枝肉価格の動向

 乳用種枝肉価格は、輸入牛肉との強い競合関係の中で、円高の進行もあって大きく低下。一方、
交雑種枝肉価格は、低下傾向にあるものの市場ニーズを反映して比較的堅調に推移。最近は前年同
水準で推移。

                                                                      (単位:円/kg)
  2年度 3 4 5 6 7(4〜9月) 7/5(前年度比) 7/6(前年度比)
乳用種・交雑種 1,181 1,031 965 955 911 875 92% 96%
乳用種のみ - - - 845 745 697 83% 92%
交雑種のみ - - - 1,187 1,103 1,107 93% 101%
2 子牛価格の動向

 乳用種子牛価格は、枝肉価格と連動して低下。一方、交雑種子牛価格は、枝肉価格が比較的堅調
に推移し、収益性が改善されたこと等から、6年度以降大幅に上昇。その結果、子牛の価格差は拡
大。


3 初生牛価格の動向

 乳用種初生牛価格は、3年度以降5万円前後で推移。直近では、交雑種子牛価格を平均売買価格
の算定に包含したことにより、大幅低下。一方、交雑種初生価格は、子牛価格に連動して上昇。そ
の結果、初生牛の価格差は拡大。


                            (単位:千円/頭)
  2年度  3 4 5 6 7(4〜7月) (8〜9月)
@乳用種初生牛
A交雑種初生牛
88
53
108
44
52
54
67
50
96
59
121
31
104
価格差(A−@)
価格比(A/@)

-
-

55
2.0
8
1.2
13
1.2
46
1.9
62
2.1
73
3.4

4 交雑種の個体登録頭数の割合
 こうした状況の下で、交雑種の生産割合(個体登録頭数割合)は増加傾向で推移。

5 乳用種・交雑種の個体登録頭数と家畜市場取引頭数の実態
 
 乳用種・交雑種の個体登録頭数に占める交雑種の割合と家畜市場取引における乳用種・交雑種頭
数に占める交雑種の割合の格差が拡大してきており、家畜市場の取引実態が生産実態を的確に反映
していない実状。

                                      (単位:%)
  6年度 7年度
2四半期 3四半期 4四半期 2四半期
@乳用種・交雑種の個体登録頭数に占める交雑種の割合 15.6 22.5 19.0 25.0
A市場取引における乳用種・交雑種頭数に占める交雑種の割合 21.3 25.1 27.6 40.2

A−@

5.7 2.6 8.6 15.2
6 契約肉用子牛の販売頭数に占める家畜市場販売頭数の割合

 肉専用種以外の品種については、家畜市場での取引割合が低いが、内訳をみると交雑種が乳用種
よりも高い状況。

                                    (単位:千頭、%)
    黒毛和種
(雄・雌)
褐毛和種
(雄・雌)
その他肉専用種
(雄・雌)
肉専用種以外
(雄)
乳用種 交雑種 合計
5年度 販売頭数 353 24 14 351 298 53 742
うち家畜市場 346 24 8 51 34 17 429
シェアー(%) 98 97 57 14 11 32 58
6年度 販売頭数 373 22 12 406 354 52 813
うち家畜市場 365 21 7 70 53 17 526
シェアー(%) 98 97 47 17 15 33 65
資料:畜産振興事業団



(注)和牛は、血統、形質等が重視され、家畜市場での1頭毎の取引が一般的であるのに対し、乳
      用種は市場外での複数単位取引が多い。近年、生産が増加してきた交雑種は、和牛同様、形
   質重視の1頭毎取引が志向され、市場での取引が多い。
 

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