◎地域便り


もも太郎誕生!

鳥取県 澤田寿和



  「がんばれ〜!ももちゃん」 子供たちが祈りながら応援した。 10月27日午後8時
28分鳥取県東泊郡泊村立泊小学校3年生34名が見守る中、 ももちゃんは出産した。 

 泊小学校は全クラスが総合学習に取り組んでおり、 3年生は牛の世話をテーマと
している。 今の3年生が1年生の時には乳牛の去勢子牛 (もーちゃん) を、 昨年は
春から乳牛の雌子牛 (ももちゃん) を県立農業大学校から借り受け、 校内隣の牧場
で一生懸命世話をした。 ももちゃんは昨年秋の鳥取県畜産共進会に出場し特別賞に
輝いた。 

 ももちゃんは今年1月に農業大学校で種付けされ、 6月からは再び子供たちが世
話をしている。 今年はおなかに赤ちゃんがいるので昨年にもましてじっくり観察す
るようになり、 ブラッシングも毎日欠かさず行った。 子供たちの今年の目標は出産
に立ち会い元気な赤ちゃんを産むようにももちゃんを応援することだ。 

 予定日の10月27日の朝、 いよいよ出産兆候が現れた。 午後3時には泊小学校3年
生全員が農業大学校に泊まり込み覚悟で駆け付け、 そわそわしているももちゃんを
励ました。 ももちゃん同様子供たちも落ち着かない様子だった。 

 午後7時、 陣痛が始まり、 8時10分破水。 思ったより子牛が大きく難産となった
ため、 校長先生や農大生徒が出産介助を行い8時28分、 遂に子牛を出産した。 分娩
室を取り囲んだ子供たちは 「やった〜!」 と大喜び。 子牛をタオルでふいたり、 初
乳を飲ませたりと分娩に関わる作業を体験した。 子牛は雄で体重35kg、 出産40分後
には立ち上がり元気な姿を披露した。 


 【たくさんの育ての親に囲まれて】



 子牛は 「もも太郎」 と名付けられ、 11月13日からは泊小学校で哺育育成を始めた。 
もも太郎のための牛舎も完成し、 子供たちは哺乳ミルクの作り方や温度管理を勉強
し来春まで世話する予定である。 



 【母親ぶりを発揮するももちゃん】



 牛を中心とした総合学習は去勢子牛、 雌育成牛、 妊娠牛の世話そして出産、 子牛
の哺育と展開してきた。 もともと畜産農家がない泊村なので近所で牛を見ることも
なく、 自分たちで世話をすることなど夢のまた夢であった。 3年の間に牛に触れ、 
世話をして 「もーちゃん、 ももちゃん、 もも太郎」 から様々なことを学んできた。 
これらの活動は畜産関係者の我々から見ると 「畜産業への理解やPR、 広い意味での
後継者対策」 としても十分効果があったと思うが、 そんなことより子供たちが自分
たちで考え、 実行する力や単なる知識に留まらない生き物の命の尊さを学んだこと
が一番の成果である。 


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