◎地域便り


名牛 「糸北鶴号」 葬送慰霊祭しめやかに

鳥取県 西谷公志



 11月16日早朝に死亡した鳥取県の県有種雄牛 「糸北鶴号」 の葬送慰霊祭が11月23
日に鳥取県畜産試験場で行われ、 農家をはじめとする約150人の和牛関係者が出席
して功績をたたえるとともに、 冥福を祈った。 

 糸北鶴号は、 島根県の 「第7糸桜号」 を父として、 昭和55年鳥取県倉吉市で誕生
した。 

 生涯に生産した凍結精液は、 約7万本、 生産した子牛は、 約2万頭に上っており、 
現在も子牛の生産は続いている。 精液の採取は、 平成4年12月が最後で、 その後は
畜産試験場の牛房で余生を送っていた。 

 糸北鶴号は、 肉質の改善能力が抜群で、 その産子の肉質等級4以上の割合は7割
を越えている。 鳥取県の和牛生産に果たした功績は極めて大きなものがあり、 牛肉
の輸入自由化後、 肉質重視の流れの中で、 鳥取県が和牛産地としての地位を維持で
きたのも、 糸北鶴号の肉質改善能力のおかげと言っても過言ではない。 

 葬送慰霊祭は、 神式で行われ、 試験場長が糸北鶴号の功績を紹介した後、 関係者
代表らが追悼の言葉を述べ、 出席者全員が玉串を捧げて冥福を祈った。 

 当日は、 慰霊祭が始まるまでは、 好天であったものが、 式典が始まると同時に、 
冷たい風雨が吹き荒れ、 空も糸北鶴号の死を悼んでいるかのようだった。 

 牛の葬送慰霊祭が県内で行われることは初めてであり、 翌日の新聞では広く紹介
された。 

 糸北鶴号の肉質向上能力を受け継いだ後継種雄牛や繁殖雌牛は、 鳥取県の財産と
して活用し、 鳥取県の和牛生産の発展を図らなければならないと、 関係者は決意を
新たにしているところである。 

 なお、 糸北鶴号の骨格は、 本県和牛界の宝として、 標本にして永久保存される。 

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