★事業団レポート


大きく変動した平成6年の鶏卵需給

企画情報部


 平成6年の鶏卵の需給は、 卸売り価格が初市で史上最安値を記録する波乱含み
の幕開けとなる一方で、 夏季以降は猛暑の影響による生産量の減少から、 一転し
て堅調に推移するというように大きく変動した1年であった。 
 
 統計がまだ公表されていない部分もあるが、 6年の需給動向をまとめてみたい。 

 
猛暑の影響が転機となった生産量
  6年の生産量は、 5年夏以降ひな出荷羽数は減少傾向にあったものの、 卵価低
迷による経営状況の悪化により、 一部の生産者が強制換羽や、 飼育期間の延長を
実施したことから、 稼働鶏の淘汰は進まず、 前半は前年を上回る水準で推移した
(図1)。  
 7月からは例年にない猛暑の影響から、 生産各地で採卵鶏に被害が生じ、 飼料
摂取量の減少による産卵率の低下や、 卵重の低下等により生産量は著しく低下し
、 7〜9月にかけては一転して前年を下回って推移した。 10〜12月の生産量は現
在のところ公表されていないが、 6年の総生産量は、 ひな出荷羽数が前年を下回
って推移していることから、 5年の総生産量259万5千181トンを下回るものと見
込まれる。 
 
前年を上回る輸入量
 輸入量は、 為替や生産の動向により変動すると言われており、 6年前半は卵価
格の低迷もあって前年を下回る水準であったが、 後半は、 前年に比べて卸売り価
格が堅調に推移したことから、 前年を上回って推移した。 12月の通関統計は現在
のところ公表されていないが、 6年の総輸入量は前年を上回ることが、 ほぼ確実
と見込まれる (図2)。
 
 鶏卵の品目別輸入量をみると、 特に卵黄はいずれの形態 (卵黄粉、 凍結卵等) 
によるものも、 前年を大きく上回っている。 
 
家計消費量は前年を下回って推移
 消費量全体の5〜6割とみられる家計消費量は、 1〜10月まで前年を下回って
推移しており (前年同期比95. 9%)、 年末の需要が平年並みに戻ったとしても、 
年計ではやや前年を下回ると見込まれる (図3)。 
 
 一方、 推定出回り量 (生産量+輸入量) から家計消費量を差し引いた量を、 単
純に、 加工・業務用務向けの処理量と推測すると、 前半は、 前年より多い水準で
推移した (加工向けに主として使われる液卵在庫の増減は含んでいない)。 加工
向けのうち統計があり、 液状卵黄が主に使用される加工品としてドレッシング類
 (マヨネーズ等) があるが、 この原料として使用される卵の消費量は7〜10月ま
で前年を上回って推移している (図 4)。 
 
猛暑の影響から一転して堅調となった卸売り価格
 6年の卸売り価格は、 年初から110円/sと史上最安値を記録する波乱含みと
なった。 価格の低迷は4年から続き、 5年3月から11カ月間連続して価格補てん
が実施され、 6年1月には5年度分の価格補てん金が底をつく事態となった。 
 
 その後1月中旬から2月にかけて価格は持ち直したものの、 生産過剰の状況は
改善されず、 卵価は前年を下回って推移した。 6年度の補てん基準価格は163円
/sと前年度に比べ10円/s値を下げたが、 4〜8月までは市場価格が補てん基
準価格を下回り補てん金が交付された。 また、 7月に入って猛暑の影響による生
産量の減少がみられたが、 同時に需要の減退もあり、 引き続き価格が低下し、 小
玉の生産割合が増加したことから、 7月末には椛S国液卵公社が過剰感のあるM
規格以下の小玉を中心に液卵の買入れを行い、 市場隔離が実施された。 
 
 8月下旬以降は暑さが一段落し、 需要は回復に向かったと思われ、 生産量は猛
暑の影響を受け引き続き減少したことから、 8月以降、 価格は前年を上回って推
移した。 12月の価格は年末需要が堅調であったことからさらに上伸し、 240円/
sまで値を上げた。 1年を通してみると、 初市の最安値110円/sから止市の年
間最高値240円まで激しく値が変動した年となった (図5)。 
                               (白土郁哉) 
 

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