◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

家畜ふん尿堆肥の新規需要の開拓

(愛知県 川村悌志)

 


  昨今、 「環境保全型畜産」 をキーワードとした政策が全国的な取り組みで展
開されている。 家畜ふん尿の堆肥化処理に重点を置いた従来の概念から、 堆肥
のリサイクル利用を行うもので、 そのテーマは地域社会の中での家畜ふん尿処
理システムの確立にある。 
 
  堆肥には需要期と不需要期があり、 最近のアンケートでも耕種農家が堆肥を
利用する時期は7〜8月 (約50%) に偏って、 不需要期の堆肥流通に苦慮する
畜産農家は多い。 畜産が盛んな市町村では言うまでもないが、 愛知県全体とし
ても、 家畜飼養頭羽数に対する堆肥還元耕地面積が十分でない。 こうした事情
から、 本県では堆肥利用 (流通) を重要な課題としており、 「広域流通」、 「新
たな利用分野の開拓」 の2本立てで解決の糸口を模索している。 ここでは、 今
後も持続した需要が期待できる 「新たな堆肥利用分野」 について事例を紹介し
たい。 
 
  山を切り開いて造った道路では、 土砂崩れを防止するためにその法面を補強
する必要がある。 従来は、 モルタルを吹き付けたり、 コンクリート・ブロック
を組む手法が主流であったが、 最近では法面を芝生で覆う手法が主流になって
いる。 バーク (樹皮) やピートモス (水ごけがたい積した泥炭ごけ) に家畜ふ
ん尿堆肥をブレンドし、 芝の種子を混合して道路の法面に吹き付けることによ
り、 道路脇の斜面に青々とした芝生が現れる。 都市部でも、 緑化運動を背景に、 
アスファルト道路の歩道、 中央分離帯への植樹が今も盛んである。 わずかな土
面に大きな木を植えるのだから、 その土壌には細心の注意を要する。 ここにも
堆肥の需要がある。 
 
  いずれも土木業界における事例だが、 この業界と畜産農家の橋渡しを行うの
が肥料業者である。 取材した肥料業者は、 入手したい家畜ふん尿堆肥として、 
低塩類濃度・無臭完熟堆肥を第1条件に挙げた。 製造者責任を負うため堆肥に
対する条件も厳しいが、 取引価格はまずまずとのこと。 業者も条件に合う堆肥
を生産する畜産農家を探しており、 この方面の潜在需要も大きいと思われる。 
また、 土木業界に納める堆肥製品についても、 現状では家畜ふん尿堆肥の混合
割合が10%そこそこだが、 堆肥品質の向上に伴ない混合割合を増加する意向が
あり、 さらなる需要が期待できる。 
 
  いい堆肥を作ることで、 家畜ふん尿堆肥のリサイクルはさらに推進できると
確信した。 
 

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