最近の畜産物の需給動向

  
 国内の主要畜産物の短期需給動向を毎月トレースします。 原データは、 巻末の
参考資料を御参照願います。 なお ( ) 内数値は、 対前年増減率です。また、 季
節調整は、 米国商務省のセンサス局法 (X−11) によっています。  

                                   乳業部、食肉生産流通部、企画情報部

 〔  牛  肉  〕
生産量はやや増加
 11月の牛肉生産量は、4万1千643トンと前年同月よりやや増加した(5.8%
、図1)。その内訳をみると、去勢和牛とめす和牛は、それぞれ1万501トン(9.2
%)、7千556トン( 14.7%)とかなり増加し、乳用肥育おす牛と乳用めす牛は、
それぞれ1万2千343トン(0.8%)、1万206トン(1.3%)とわずかに増加した。
11月輸入量は大幅に増加
 11月の輸入量は、5万8千97トンと大幅に増加した(40.0%、図2)。内訳
をみるとチルド、フローズンともにかなり増加し、それぞれ3万2千367トン(25.9
%、図3)、2万5千471トン(63.1%)となった。特にフローズンの輸入量増加に
ついては、関係者によると年末需要を見込んだ動きではないかとのことである。
 
 12月の輸入量を事業団は約4万9千トン(チルド約2万8千トン、フローズン
約2万1千トン)また1月を約4万4千トン(チルド約2万5千トン、フローズン約
1万9千トン)と見込んでいる。
 
期末在庫量はやや増加
 11月の推定出回り量は、国産品(4万636トン、3.0%)、輸入品(5万4千26
トン、17.6%)ともに増加し、合計では8万9千473トンとかなり増加した。(10.9
%、図4)。
 
 また、推定期末在庫量は、生産量及び輸入量が前年を上回ったことから9万2千
558トンと4ヵ月ぶりにやや増加(3.0%、図5)したが、その内訳をみると、国産
品は1万1千509トン(2.1%)、輸入量は8万1千49トン(3.1%)となっている。
 
11月、12月の省令価格はかなり前年を下回る
 11月の省令価格(東京市場)は、1,026円/kgと前年をかなり下回った(▲6.5
%、図6)12月の(同速報値、瑕疵のある枝肉を除く)も、1,035円/kgと前年を
かなり下回った。
 
 12月の去勢和牛の枝肉価格は(東京市場、速報値)は、A5が2,684円(▲2.4
%)、A4が2,023円(▲7.6%)、A3が1,546円(10.9%)、A2は1,032円(▲17.0
%)となった。特に3、2クラスについては出荷量の増加(それぞれ7.8%、47.5
%)が影響しているものと思われる。
 
 12月上期の輸入牛肉の仲間相場は、11月下期に比べ全体的に豪州産チルドは
値を下げたが米国産チルドは値を上げた。これは主に豪州産牛肉の残留農薬問題に
より豪州さんを買い控える動きがあったため米国産の需要が増えたためとみられる。
 
 
〔  肉 用 子 牛  〕
 
黒毛和種の取引価格は36万円台(12月速報値)
 11月の黒毛和種の子牛取引頭数は37万5千604頭(102.6%)、取引価格
(雌雄平均は32万7千円/頭(106.0%、図7)となった。
 12月の取引価格(速報値、1月17日現在)は、36万5千円/頭となっている。
  
乳用種取引価格は前月同(12月速報値)
 11月の乳用種の子牛取引価格(雌雄平均)は、5万4千円/頭となった(図
8)。12月の同価格(速報値、1月17日現在)は、5万4千円/頭となった。
 
 11月の乳用種のヌレ子価格は4万9千円/頭(▲9.9%)、12月の同価格
(速報値、12月12日現在)は、5万1千円/頭と前月よりわずかながら値を
上げている。 
 今月のトピックス
黒毛和種の子牛価格は底値脱出か
 平成3年以降黒毛和種牛取引価格は、景気の後退、牛肉輸入量の増加等に伴う
枝肉価格の低下に連動する形で低下傾向を示していた。特に6年度の第1四半期
から制度発足以来初めて保証基準価格( 30万4千円)を下回るなど低迷を続けて
いたが、9月以降回復の動きをみせている。これは、枝肉価格がやや持ち直して
きていることと導入時の子牛価格が低下したものが出荷されていることにより、
肥育経営の収益性がやや改善されつつあり肥育農家の子牛導入意欲がやや強いた
めとみられる。また、大手量販店等の和牛志向の高まりや景気の回復等プラス要
因もみられるが、依然として牛肉の輸入量は増加傾向にあるなど、この回復基調
が今後も続くのか予断をゆるさない状況である。
 
 
〔  豚 肉  〕
 
前年をわずかに下回った生産量
 11月の国内生産は、母豚の飼養頭数の減少などから、と畜頭数が168万9
千672頭(▲2.8%)、生産量が8万9千953トン(▲2.7%)と前年同月をわ
ずかに下回った(図1)。
 
  12月のと畜頭数(速報値)は、166万2千500頭と前年同月をやや下回っており
(▲5.0%)、農林水産省畜産局では、1月についても、152万1千頭と前年同月
をやや下回るものと見込んでいる(▲3%)。
過去最高の輸入量
 11月の輸入量は、5万1千156トンと前年同月をかなり大きく上回り(13.5
%)、過去最高となった(図2)。内訳を見るとフローズンは加工仕向けの需要
の伸びから3万9千449トン(13.4%)、また、チルドは台湾産が現地高から
前年同月並みであったものの、米国産が大幅に伸びたこと等から1万1千707ト
ン(14.6%)となった。
前年をわずかに上回った推定出回り量
 11月の推定出回り量は、国内品が生産量の減少分を在庫取り崩しで埋め前年
同月とほぼ同量であったものの、輸入増から輸入品が増えたため、合計では13
万8千906トンとなった(2.7%、図3)。
 推定期末在庫量は、国産品が前年同月を大幅に下回ったものの、輸入量の増加
を受けて輸入品がかなり上回ったため、合計では8万7千776トンとなった(2.5
%)。
弱含みで推移した卸売価格
 11月の枝肉卸売価格(東京市場、省令)は、生産量が前年を下回ったものの、
チルド輸入が続き高水準で推移したことなどから弱含みの展開があったが、10月
28日から実施された調整保管により、404円(▲0.7%、図4)と前年同月とほぼ
同じであった。

  12月の卸売価格は、下旬に年末年始の休市前の在庫補充手当てから一時的に
値を上げたものの、上旬、中旬は総じて弱含みであったことから 413円と前年同
月をやや下回った(▲4.4%)。

  1月の卸売価格(東京・大阪市場)について畜産局では、肉豚出荷頭数が12
月を下回ると見込まれてるものの、季節的な需要動向等からみて、ほぼ12月並
の水準で推移するものと見込んでいる(12月27日公表)。
 今月のトピックス
堅調な輸入豚肉の加工品仕向量
 6年10月の豚肉の加工品仕向量は3万6千797トンと前年同月をかなり上回っ
た(7.1%)。国産品は、2.2%の増加にとどまったが、輸入品が2万1千553ト
ンと前年同月をかなり上回っている(10.9%)。
 
  輸入品のうちフローズンが前年をかなり上回って輸入されている一因には、こ
のような加工品仕向量が順調なことがあるようだ。
  

 

〔  鶏  肉  〕 

 

前年並みとなった生産量
 11月の生産量は、11万1千379トンとほぼ前年並みであった(0.5%)。
6月から、夏の猛暑の影響もあり、前年を下回って推移してきたが、年末の需
要期にむかって生産は回復してきた(図1)。
 
  また、今後の生産指標となる11月のブロイラー用ひな出荷羽数は、5千372
万羽と前年同月をわずかに上回った(1.0%)。
 
  農林水産省統計情報部によると、6年12月、7年1月、2月のブロイラー
ひな出荷の見通しを、それぞれ前年に比べて 97%、99%、100%と見込んでい
る。
5万トンを記録した輸入量
 11月の輸入量は、5万1千841トンと前年同月を大幅に上回り(27.2%)、
8月から4ヵ月連続して過去最高の記録を更新した(図2)。
 
  これは、業界によると、特に加工・外食用の需要が高まっていることと、最
近の円高を背景にクリスマスや年末の需要向けの輸入が増加したことによる。
9万トンを上回った推定期末在庫量
 11月の推定出回り量は、15万8千133トンと前年同月をやや上回った(3.5
%)。

  11月の推定期末在庫量は、5月より増え続け、特に最近の輸入量が大幅に
増加したことから、9万1千354トンと10ヵ月前の水準までに戻ったが、在庫
水準が高かった前年同期に比べると大幅に下回った(▲18.9%、図3)。 
 
11月の卸売り価格は強含みで推移
 11月のもも肉、むね肉の卸売り価格は、それぞれ、528円/kg(6.9%)、
314円/kg(9.0%)となった(図4)。
 
  最近の価格動向をみると、11月中旬からは、なべ物需要等により、特にも
も肉が堅調に推移し、12月に入ってからは、クリスマス・年末の最需要期を
迎えたことからむね肉も上伸し、年末にはもも肉、むね肉の卸売り価格はそれ
ぞれ640、370円台と値を上げた(農林水産省「畜産物市況速報」)。
 
 今月のトピックス
急ピッチで増加した輸入量 

 昨年の1月から11月までのブロイラー輸入量は、5年の総輸入量39万318
トンを上回る40万1千20トンとなった。

  部位別に見ると、骨付きのもも肉の輸入が前年に比べてかなり減少した(
▲8.8%)。主要輸入相手国別では、タイは5月まで好調であったが6月から
減少し、一方、中国は6月以降好調であったことから、一番の輸入相手国が
入れ替わるのは確実となった。

ブロイラーの輸入量(単位:トン)
  うち中国 米国 タイ
91年 347,313 31,895 117,832 128,914
92年 393,964 58,567 111,699 142,323
93年 390,318 82,806 117,064 122,986
94年 401,020 112,188 110,161 104,244
注:94年は1〜11月の合計

 

 

 〔 牛乳・乳製品〕 

生乳生産はわずかに下回る
 11月の生乳生産量は、64万9千276トンと前年同月をわずかに下回った(▲
2.4%)。また、一日当たりの生乳生産量の推移を季節調整済み値でみると、
5年春以降、ゆるやかな減少傾向を示している(図1)。
 
飲用牛乳等向けは引き続き増加
 11月の飲用牛乳等向け処理量は、気温が平年より高かったこともあり、
43万3千134トンと前年同月をやや上回った(3.9%)。
 
  最近の1日当たりの処理量の推移を季節調整済み値でみると、5年秋以降、
増加傾向で推移している(図2)。
 11月の乳製品向け処理量は、生乳生産量の減少、飲用牛乳等向け処理量
の増加から、20万5千426トンと前年同月をかなり大きく下回った(▲13.4%)。
 
低迷するバターの価格
 11月のバター及び脱脂粉乳の生産量は、それぞれ4千787トン( ▲33.3
%、図3)、1万2千329トン(▲17.9%、図4)と引き続き大幅に前年同月を
下回った。11月のそれぞれの大口需要者価格を見ると、バターは依然とし
て在庫が高水準であることから低価格で推移し、前年を下回った。脱脂粉乳
は生産量が減少していること等から、需要がひっ迫し、引き続き上昇傾向で
推移しており、1万3千491円/25kgと安定指標価格を5.1%上回った。
 
 今月のトピックス
牛乳・乳製品需給情報交換会議の開催
 昨年12月16日に事業団による第3回牛乳・乳製品需給情報交換会議が開催
された。要点は以下のとおり。
 
  この夏の猛暑による需要の急伸は落ち着いてきたが、10月以降も、気温の
高い日が続いたため、飲用向け需要は引き続き伸びた。
 
  脱脂粉乳は生産減のため大量に不足しているので、1万3千トンが緊急輸
入され、6千500トンが12月に、残量が1月以降に放出され一息つけるが、
生乳生産の回復は進んでいないことから、脱脂粉乳の需要は相変わらず強い
と考えられる。

  一方、バターは業務用無塩バターの在庫が引き続き過剰であるが、お歳暮
等の年末需要期にはフレッシュものは不足気味。

 

 

〔  鶏  卵  〕 

 

8ヶ月連続して前年を下回ったひな出荷羽数
  11月のひな出荷羽数は、長期的な卵価低迷の影響から834万3千羽と前
年同月をわずかに下回った。(▲1.4%)

  ひな出荷羽数と生産量を季節調整済み値でみると、卵価の低迷とともにひ
な出荷羽数と生産量の傾向に乖離が生じており、生産者の苦しい経営事情か
ら、ひなの導入の代わりに強制換羽の実施が多くなったことや、飼育期間の
延長によるものとみられる(図1)。
 
  農林水産省統計情報部は、6年12月、7年1月、2月のひな出荷羽数の
見通しは、前年に比べてそれぞれ100%、98%、91%と見込んでいる。
強含みで推移した11月の卸売り価格
 11月の卸売り価格 (東京平均) は、 特に下旬からはなべ物需要等により
強含みで推移し、平均では185円/kg(17.1%)となった(図2)。
 
  12月の卸売り価格(全農東京M規格)は、なべ物需要に加え、クリスマ
スケーキや、伊達巻等の加工向けの季節的需要から、219円/kgと上伸した。
 
 
 今月のトピックス
昨年より高い水準で幕開けした本年の卵価格
 1月6日の初市は、最需要期を過ぎた一方で、年末・年始の休市の影響に
よる一時的な入荷量の増加から、例年と同様に需給は急激に穏和し、150円/
kgまで値を下げた。
 
  しかしながら、最近の初市価格の推移をみると、過去最安値を記録した昨
年の110円/kgより大幅に高い水準であり、この価格を始点として今後どのよ
うに卵価が推移するか関係者の注目するところだろう(図3)。
  

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