★ 巻頭言


年頭あいさつ

 ― 安定的・効率的な経営体の育成を目指して ― 
 

農林水産省畜産局長        高 木 勇 樹


 平成7年を迎えるに当たり、 新春のお慶びを申し上げますとともに、 我が国畜産
をめぐる情勢と課題などにつき所感の一端を申し述べ、 新たな事態に対応した畜産
行政の展開に全力投球してまいりたいと思います。 
 
  御承知のとおり、 我が国畜産は、 国民食生活の高度化、 多様化等による需要の増
大を背景として順調な発展を遂げ、 今や我が国農業の基幹的部門となっております
が、 近年需要の伸びが総じて鈍化し、 需給の不均衡、 畜産物価格の低迷といった事
態を招来しやすい状況となっており、 また、 本年4月から乳製品の関税化及び畜産
物の関税引下げが実施段階に入る等新たな国境措置の下におかれることとなります。
 
  このような新たな事態に対処して、 今後将来にわたり我が国畜産業の自立と安定
的発展を確保し、 流通、 加工関連産業の展望を切り開いていくことが強く求められ
たところであります。 昨年8月の 「新たな国際環境に対応した農政の展開方向」 の
取りまとめ、 10月の緊急農業農村対策本部における 「ウルグァイ・ラウンド農業合
意関連対策大綱」 と総事業費6兆100億円の6年間に講ずべき 「関連対策」 の決定
がなされましたが、 これらの中で畜産対策も適切に位置付けられ、 関係者の多大な
御支援のもと所要の予算額と金融・税制措置も確保し得たところであります。 また、 
昨年末の臨時国会においてはWTO協定を実施するための加工原料乳生産者補給金
等暫定措置法の一部を改正する法律が成立を見たところであります。 
 
  本年は、 ウルグァイ・ラウンド農業合意の実施期間である平成12年までの6年間
における国内対策に着手する重要な年であり、 各般の施策の推進に遺憾なきを期し
てまいる考えであります。 
 
  具体的には、 生産性の高い安定的・効率的な経営体の育成を図るため、 事業の統
合メニュー化を進めつつ、 地域の特性に即し、 生産から流通・消費に至る地域畜産
構造の再編のための総合的な施策を実施する畜産再編総合対策を新たに実施すると
ともに、 畜産経営の安定にとって重要な畜産環境問題に地域の実情に応じた対応を
行いうるよう公共、 非公共事業における畜産環境対策の充実強化を図るほか、 特に
飼養管理面での生産の効率化、 労働時間の短縮に必要な機械・施設の整備をリース
事業により積極的に進めていくこととしております。 
 
  また、 乳製品については、 カレント・アクセス相当分を事業団により適切に管理
することとするとともに、 計画生産の下で生乳生産の大宗を育成すべき酪農経営体
に早急に集中し、 生産構造を改善する酪農経営体育成強化緊急対策事業を創設する
こととしております。 
 
  牛肉については、 肉用子牛の不足払い制度等の適切な運用を図るとともに、 緊急
調整措置の適時の発動により国内の需給と価格の安定を図ることとしております。 
 
  豚肉については、 基準輸入価格の計画的な引下げのもとで養豚経営の安定を図る
ため、 都道府県単位で実施される価格差補てん制度の安定的運営を支援する地域肉
豚生産安定基金造成事業を創設することとするほか、 緊急調整措置の適時の発動に
より国内の需給と価格の安定を図ることとしております。 
 
  さらに、 畜産経営にとって大きなウエートを占める生産資材費の低減と飼料原料
の供給ソースの多元化を図り経営感覚を発揮する一助として、 本年4月から単体飼
料用丸粒とうもろこしを無税で輸入しうる制度を創設するとともに、 動物用医薬品
の承認・許可制度の見直しなどを進めていくこととしております。 
 
  以上のような6年間の枠組みをもとに畜産行政の着実な展開を図ることとしてお
りますが、 一方畜産特に投資規模が大きくその回収に長期を要する大家畜生産農家
からは、 経営体としての自立と安定的発展の観点から、 この6年間の先をも視野に
入れた展望を示して欲しいという強い要請があります。 このような要請にこたえる
べく昨年末より平成17年度を目標年度とする新しい酪肉近代化基本方針の策定作業
に着手したところであります。 本年秋口頃を目途に基本方針を策定し、 その中で中
長期的な政策展開の方向を示すほか、 必要な措置を講じてまいりたいと考えており
ます。 
 
  我が国畜産が国際化の進展の中で自立し、 効率的、 安定的な経営体がその生産の
大宗を担い、 やりがいを持って経営にいそしめるよう、 また、 国内生産の維持・拡
大を柱に、 流通加工関連産業の発展を期し、 関係各位ともども頑張ってまいります。  
  
  何とぞ関係各位の御理解、 御協力を切にお願いいたしますとともに、 本年の弥栄
を祈念し、 新年のごあいさつといたします。  

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