★事業団レポート


最近の豚肉需給動向

    企画情報部  


 
 94年は豚価が、 大きく動いた1年であった。 その最大の要因は猛暑にあるが、 
また、 チルドの輸入が大きく伸びて、 そのユーザーが広がった年でもあった。 94
年の動きを概観し、 さらに今年の方向を探ってみたい。 
1 大きく動いた豚価
 94年1月の豚肉卸売価格 (東京市場、 省令) は、 415円でスタートしたが、 その
後は月を追うごとに上昇し、 さらにその後、 猛暑による生産量の大幅な落ち込みに
より急騰し、 8月には573円と2年ぶりの高値を記録した。 
 
  9月5日には、 年間の最高値623円を記録したが、 その後生産量の回復と輸入チ
ルドの出回り増加等から急速に値を下げ、 10月25日には328円 (年間最低値) にま
で値を下げた。 10月28日 からは前年に引き続き調整保管が発動され、 連続で調整
保管が発動され、 その後価格は落ちついた動きとなった。 
 
  1年間の最高値から最低値になるまでの日数は9月5日から10月25日のわずか
50日余りで、 この短期間に47%も下落し、 前年に比べ卸売価格が大きく動いた1
年であった。 
 
 
2 猛暑の後遺症が残る国内生産
  国内の生産量は、 中小経営の廃業等による母豚の減少 (94年2月現在、 ▲3.3
%) から出荷頭数が減少したことに加え、 猛暑による肥育豚の発育不良、 枝肉重
量の減少が重なり、 7月には▲10. 2%と大きな落ち込みを記録し、 推計96万648
トン (▲3.7%) と100万トンを切った。 
 
  1月以降も母豚の減少による出荷頭数の減少は続くが、 育成率が悪かった昨年
7月から9月の猛暑の時期に分娩された肥育豚が出荷を迎える2月から3月にか
けては、 出荷頭数がさらに落ち込むことが見込まれる。 
 
  子豚用配合飼料の出荷量は下表のとおり前年を下回って推移しているが、 7月
から8月にかけてさらに大きく落ち込んでおり、 この春の出荷頭数の減少見込み
を裏付けてる。


子豚用配合飼料出荷量の対前年同月比

94年4月  94. 6%
  5月   94. 8
  6月   95. 6
  7月   85. 5
  8月   92. 1
  9月  95. 8
  10月   94. 7

 さらに、 昨夏の猛暑で繁殖率も低下しており、 今年の6月以降の出荷頭数に影
響が出るものと思われる。
 
3 50万トンに迫る年間輸入量と チルド輸入の拡大 
 猛暑による生産量の減少と大方の予想を越えた高値の卸売価格は、 ユーザーを
輸入品の利用に向かわせた。 輸入量は8月以降、 上昇する豚価を追いかける形で
増え続け、 11月には過去最高の5万1千トンを記録し、 年間の輸入量は過去最高
の50万トンに迫ると見込まれる。 
 
  特に注目すべきはここ2、 3年伸びてきた輸入チルドのユーザーの広がりと定
着である。 従来の大手スーパーから中小のスーパーへ、 都市部から地方へとその
ユーザーは着実に広がっているようだ。 9月には過去最高の1万4千トンに達し、 
年間の輸入量も13万4千トン程度と見込まれ、 過去最高となることは間違いない。 
  
  国別に見てみると、 米国産が瞬間的ではあるが11月には5千300トンと台湾産
の5千700トンと肩を並べるほど輸入量が増えたのが、 大きな特徴である。 米国
では大手パッカーが対日輸出に力を入れており、 国内相場に影響を与えるチルド
輸入の動向を注視すべきであろう。 
 
  また、 ウルグァイラウンド合意に基づく本年4月からの関税引下げも輸入動向
に影響を与えるものと考えられる。 
 
4 ほぼ前年並みの推定出回り量 (消費量)
  図2は、 推定出回り量 (季節調整済値)の動きを国産品と輸入品別にしたもの
で、 推定出回り量は各月とも12万トン強でほぼ一定であることが分かる。 ただ、 
その内訳を見ると、 国産品は減少傾向で、 逆に輸入品は増加傾向にある。 
 
5 テーブルミート市場のパイの減少  
  推定出回り量が前年とほぼ同量 (0. 7%)で推移した中で、 家計消費量は前年
をわずかに下回っている (1月から10月までの累計▲2. 3%)。このことは加工・
外食等消費量が増加したことを示しており、 特に加工品仕向量は前年をやや上回
っている (1月から10月までの累計3. 5%)。 
 
  テーブルミートの市場は家計消費量が減少し、 パイが小さくなる中での競争で
ある。 チルドの輸入が加傾向の中で、 国産豚肉はいかに商品を差別化するかにあ
る。 差別化の一つの方向である銘柄豚肉は、 豚価が全体的に低下傾向にある中で、 
また、 価格、 品質に対する量販店の要求が厳しさが増す中で、 どれだけ売り込み
に際して有利となるか、 プレミアムを取れるかが大きなポイントとなる。 また、 
最近広がりを見せているSPF豚肉についてはどのような販売戦略で望むかが鍵
となろう。 
 
  量販店の力が強くなる中で、 国産についてもセット販売からパーツ対応へ、 さ
らに量販店と提携し、 アウトパック化 (店舗外でのコンシューマーパック化) を
進め、 付加価値を高めるなどの対応が求められている。 生産でも流通でも、 きめ
細かい対応がこれからも求められるだろう。 


 (注)
  
1.数量はすべて部分肉ベース、 比率はすべて対前年同期比である。
 
2.94年12月の生産量は、 次により推計した。 
  
    92,284t (93.12生産量) × 1,662, 500頭 (94.12と畜頭数)/1,743,900頭
   (93.12と畜頭数) = 87,976t

3.94年12月の輸入量は、 次により推計した。 
  
    132,410t (93.12出回り量) − 87,976t(94.12生産見込み量) = 44,434t 
   うち、 チルド輸入量
  4,434t × 26.8% (94.1〜11のチルド比率) = 11,908t

4.95年1月〜3月の生産量は、 次により推計した。 
   (94年月別生産量) × (月別肉豚生産出荷予測)/(94年月別と畜頭数) 
  肉豚生産出荷予測 (94年9月27日 農林水産省畜産局発表) 
    
    95年1月  1,521千頭 (▲3%) 
        2月    1,466千頭 (▲2%) 
        3月  1,557千頭 (▲6%) 
            
 (安井  護) 

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