◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

岩手県で初めての突然死型乳頭糞線虫症

(岩手県 細川 泰子)

 


  平成6年8月に、 岩手県二戸市の乳用おす牛肥育農家で、 3カ月齢の子牛8
頭が相次いで突然死亡した。 二戸家畜保健衛生所が検査したところ、 死亡した
子牛や同居牛のふん便から乳頭糞線虫の虫卵が多数検出されたことから、 岩手
県では初めての 「突然死型乳頭糞線虫症」 であることが判明した。 
 
  本症は、 6カ月齢以下の子牛が発病し、 突然倒れ数分で死亡するもので、 病
理解剖でも死因となる病変が認められず、 子牛のポックリ病とも言われている。 

  乳頭糞線虫は、 牛床に敷かれるオガクズの温湿度が上昇すると、 オガクズ内
の虫卵が孵化して感染能力をもつ子虫が発生することから、 関東以南の温かい
地域で発病することが多かった。 北日本のように夏でも冷涼な地域での発病は
まれで、 これまで北海道、 秋田県、 山形県でそれぞれ1件ずつ確認されたに過
ぎない。 今回の本県での発病は、 昨年夏期の猛暑で8月の平均気温が平年より
2. 2℃高い25℃になるなど虫卵が孵化しやすい条件が整ったためと家畜保健衛
生所では分析している。 
 
  今回の発症農家では、 死亡牛と同一牛房内で飼養されている牛全頭に駆虫剤
を投与するとともに、 オガクズを牛床に敷く前に乳頭糞線虫の子虫を殺す効果
がある消毒薬で牛床面を消毒し、 しかも短い間隔でオガクズを交換するなど衛
生管理の改善を行っており、 その後、 本症は発病していない。 


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