最近の畜産物の需給動向

  
 国内の主要畜産物の短期需給動向を毎月トレースします。 原データは、 巻末の
参考資料を御参照願います。 なお ( ) 内数値は、 対前年増減率です。また、 季
節調整は、 米国商務省のセンサス局法 (X−11) によっています。  

                                 乳業部、食肉生産流通部、企画情報部

 〔  牛  肉  〕
1月の生産量 ほぼ前年並み
 1月の牛肉生産量は、3万1千18トンと前年同月並みとなった(▲0.5%、
図1)。
 その内訳をみると、去勢和牛は、6千825トン(▲0.1%)、めす和牛は5千
431トン(7.4%)となり、乳用肥育おす牛と乳用めす牛は、それぞれ1万110
トン(▲2.1%)、7千943トン(▲4.9%)と減少した。
1月の輸入量 前年を大幅に上回る
 1月の輸入量は、前年の輸入量が少なかったこともあり、4万3千203トン
と前年を大幅に上回った(20.3%、図2、3)。内訳をみると、チルドは2万
3千498トン(7.4%)フローズンは1万9千494トン(40.9%)であり、フロ
ーズンの中では加工用牛肉や「ばら」が特に伸びている。
 事業団は、2月の輸入量を約3万9千トン(チルド約2万2千トン、フローズ
ン約1万7千トン)、3月を約4万5千トン(チルド約2万6千トン、フロー
ズン1万9千トン)と見込んでいる(詳細については、参考資料の「品目別輸
入動向調査」の項を参照)。
1月末在庫量 前年よりわずかに増加
 1月の推定出回り量は、7万2千25トンとかなり増加(8.4%、図4)し
たが1月の推定期末在庫量は、輸入量の増加及び国内出回り量が減少(3万1
千27トン、▲4.6%)したことにより、8万4千685トンとやや増加(3.4%、
図5)した。

1月の省令価格 前年をわずかに下回る
 1月の省令価格(東京市場)は、1,048円/kgと前年をわずかに下回った(▲
2.4%、図6)。去勢和牛の枝肉価格(東京市場)については、景気回復が遅
れ、需要が低迷しているにもかかわらず、Aクラスの各等級別の頭数が前年同
月よりも減少していることから、全体的に前年同程度の水準であった。
 2月の省令価格(東京市場速報値、瑕疵のある枝肉を除く。)は、1,019円
/kg(▲7.4%)と前年をかなり下回った。去勢和牛の枝肉価格(東京市場、
速報値)は、去勢和牛 A5が2,488円/kg(▲4.2%)、A4が1,813円/kg(▲
4.3%)、A3が1,436円/kg(▲4.2%)、A2で1,079円/kg(▲4.0%)と全
体的に値を下げた。
 2月上期の輸入牛肉の仲間相場は、1月下期に比べ北米産チルド、フロー
ズンともロイン系が値を下げ、フローズンはショートプレート等焼き肉商材
を中心に値を上げた。
 豪州産はフローズンは値を下げたが、チルドについては現地が夏期休暇に
入ったこと等により品薄感が強く全ての品物で値を上げた。

〔  肉 用 子 牛  〕
黒毛和種の取引価格 (2月速報値)
 1月の黒毛和種の子牛取引頭数は3万3千476頭(▲3.2%)、取引価
格(雌雄平均)は35万7千円/頭(7.5%、図7)となった。
 2月の取引価格(速報値、3月10日現在)は、35万7千円/頭と前月
同月を10.9%上回った。これは、主に価格の低落後に導入した素牛の出荷
時期を迎えていることにより、肥育経営の収益性が改善され、同経営の導入
意欲が強いためと思われる。 
乳用種取引価格 (2月速報値)
 1月の乳用種の子牛取引価格(雌雄平均)は、5万8千円/頭となった(図
8)。2月の同価格(速報値、3月10日現在)は、5万8千円/頭となっ
た。
 1月の乳用種のヌレ子価格は5万円/頭(▲6.7%)、2月の同価格(速
報値、3月10日現在)は、5万7千円/頭となった。 
 今月のトピックス
6年のチルド輸入量はかなり増加
 大蔵省は2月28日に6年12月分の輸入通関統計を公表したが、6年1月
から12月までの牛肉の輸入量は、58万9千104トン(14.9%)と60万
トンに迫る数量となった。内訳をみると、チルドは33万5千73トン(22.6
%)、フローズンは25万1千920トン(6.3%)となり、特にチルドは伸び
の高かった前年(27万3千276トン、33.3%)をさらに大幅に上回った。
 また、総輸入量のうちチルドの占める割合は、56.9%と前年(53.3%)より
拡大した。

〔  豚 肉  〕
1月の生産量 前年同月をやや下回る
 1月の国内生産は、母豚の飼養頭数の減少などから、と畜頭数が149万6
千971頭(▲4.6%)、生産量が7万9千975トン(▲3.8%)と前年同月を
やや下回った(図1)。
 2月のと畜頭数(速報値)は、144万7千頭と前年同月をやや下回っており(▲
3.2%)、農林水産省畜産局では、3月についても、155万7千頭と前年同月を
かなりに下回るものと見込んでいる(▲6%)。
1月の輸入量 チルドの伸び止まらず
 1月の輸入量は、3万41千291トンと12月に続き、前年同月とほぼ同
水準であった(▲0.8%、図2)。ただ、内訳を見ると、フローズンが前年同
月を下回っているものの(▲5.4%)、チルドはかなり大きく伸びており(15
.9%)、昨年8月以降連続して2桁の伸びを示している。
 
1月の推定出回り量 前年同月をわずかに下回る
 1月の推定出回り量は、輸入品が前年同月をわずかに上回ったものの、国産
品がやや下回ったため、合計では11万783トンと前年同月をわずかに下回っ
た(▲2.3%、図3)。
 1月の推定期末在庫は、生産量の減少を受けて引き続き、国産品が前年同月
を大幅に下回っており(▲21.7%)、合計でも8万5千86トンと前年同月をわ
ずかに下回っている(▲2.7%)、合計でも8万5千86トンと前年同月をわず
かに下回っている(▲2.7%)。

 
1月の卸売価格 弱保合で推移

 1月の卸売価格(東京市場・省令)は、総じて弱保合で推移し、調整保管の
実施により、406円と前年同月をわずかに下回った(▲2.2%、図4)。
 2月の卸売り価格は、と畜頭数は前年を下回ったものの輸入チルドの出回り
が引き続き前年同月を上回ったと見られることなどから、409円(速報値)と前
年同月をかなり下回った(▲6.8%)。
 3月の卸売価格(東京・大阪市場)について畜産局では、肉豚出荷頭数が2
月を上回ると見込まれるものの季節的な需要動向等から、2月を上回る水準で
推移するものと見込んでいる(2月28日公表)。
今月のトピックス
対日輸出に各国が強い関心
 3月上旬、千葉県の幕張メッセで開催された国際食品・飲料展(FOODEX95)
には、台湾、デンマーク、米国の対日輸出上位3ヵ国以外にも、韓国や豪州など、
豚肉の輸出関心国がこぞって出展し、各国の輸出意欲が強いことが伺われた。
 米国のある業者は、チルドをメインに据え、生産から出荷まで一貫した管理
の下で、商品を日本向けに厳選していること、日本向けの規格で商品づくりを
していることなどをビデオを用いてPRしていた。

 
〔  鶏  肉  〕 
月の生産量 前年同月をわずかに上回る
 1月の生産量は、10万4千303トンと、前年をわずかに上回った(1.9%、
図1)。
 また、今後の生産指標となる1月のブロイラー用ひな出荷羽数は、5千645万
羽とほぼ前年並みであった(0.5%)。農林水産省統計情報部によると、2
月、3月、4月のブロイラー用ひな出荷羽数を、それぞれ前年の同月と比べて99
%、96%、98%と見込んでいる。
1月の輸入量 依然前年同月を大幅に上回る
 1月の輸入量は、4万130トンと前年同月を大幅に上回った(51.1%)。
最近の輸入量の推移をみると、6年4月から10ヶ月連続して前年を大きく上
回っている(図2)。
 
1月の在庫量 前年同月をかなり下回る
 1月の推定期末在庫量は、8万6千276トン(▲8.5%、図3)となった。
このうち、輸入品在庫はこれまで在庫水準の高かった前年を大きく下回って
推移してきたが、最近の輸入量の急増から、前年の水準に近づき、前年同月
をわずかに下回る程度となった(▲1.2%)。


1月の卸売価格 弱含みで推移
 1月のもも肉、むね肉の卸売り価格(東京・平均)は、鶏肉需要が最需要
期を過ぎたことから、弱含みで推移し、それぞれ、前年同の582円/kg、むね
肉が前年をかなり下回る313円/kgとなった。
 2月に入っても、需要の増加等相場を強くする材料がないことから1月に
引き続き弱含みで推移したが、下旬からはほぼ保号で推移し、月末には、も
も肉が509円/kg、むね肉が272円/kgとなった(農林水産省「畜産物市況速
報」)。(図4)
 今月のトピックス
急増する冷蔵鶏肉の輸入 

 昨年秋以降、円高等を背景に急増してきた輸入鶏肉であるが、その中で、
量はまだ少ないものの、中国からの冷蔵(チルド)の輸入量がかなり増加
してきており、平成6年の輸入量は、2千146トン(対前年比339.7%増)
となった。
 輸入鶏肉は、冷蔵鶏肉が主で全体の消費のうち、約7割を占める加工・
業務用等向けであるが、冷蔵鶏肉に比べて、フレッシュの面で優位性のあ
る冷蔵鶏肉の輸入が今後も増加していけば、国産鶏肉が中心である家計消
費にも浸透していくことが予想される。
 

 〔 牛乳・乳製品〕 

1月の生産量 引き続き前年同月を下回る
 1月の生乳生産量は、69万1千433トンと前年同月をわずかに下回った(
▲1.4%)。また、1日当たりの生乳生産量の推移を季節調整済み値でみ
ると、5年春以降、ゆるやかな減少傾向を示している(図1)。
1月の飲用牛乳等向け処理量 引き続き増加
 1月の飲用牛乳等向け処理量は、40万4千38トンと前年同月をやや上
回った(4.0%)。冬期に入っても飲用向け処理量は、高い伸びを示して
いる。この要因としては、暖冬であること以外に、骨粗鬆症防止にCa吸
収率のよい牛乳がいいというPRや消費者の健康志向の高まりによって飲
むヨーグルト等が伸びていることも影響しているようだ(巻末資料3の
(7)乳製品等の小売動向を参照)。
 同月をやや上回った(4.3%)。最近の1日当たりの処理量の推移を季
節調整済み値でみると、5年秋以降、増加傾向で推移している(図2)。
 12月の乳製品向け処理量は、生乳生産量の減少、乳用牛乳等向け処理
量の増加から、25万7千946トンと前年同月をかなり下回った(▲10.0%)。
 
  
1月のバター価格 底保合
 1月のバター及び脱脂粉乳の生産量は、それぞれ7千662トン( ▲17.8
%、図3)、1万6千698トン(▲11.9%、図4)と引き続き大きく前年同
月を下回った。在庫が減少傾向にあるバターの1月の大口需要者価格は、
3ヵ月連続で950円/kgと底保号となった(▲3.7%)。また、1月下旬に
予定されていた脱脂粉乳の放出が、阪神・淡路大震災の影響で延期された
こともあって、脱脂粉乳の1月の同価格は、引き続き高値で、1万3千520
円/kgと安定指標価格を5.3%上回った。
 
 今月のトピックス
付加価値を求めるドリンクタイプヨーグルト
 この「畜産の情報」では巻末資料にPOS情報による乳製品等の小売動
向を掲載している。生産量の伸びが大きいはっ酵乳(ヨーグルト)の小売
動向(購買数量)を見ると、従来、主流であったハードタイプは、昨年秋
から伸び悩んでいる。
 一方、ドリンクタイプの伸びが著しく、最近では20〜30%の伸びを示し
ている。
 店頭や展示会等を見ていると、さらなるドリンクタイプの消費を促すた
めに、カルシウム等を強化した付加価値商品に力を入れてきているようだ。
 また、絶対量は小さいものの、フローズンタイプの小売動向(同)を見
ると、前年比200%の伸びを示している。

 

〔  鶏  卵  〕 

 10〜12月の鶏卵生産量 前年同期並み
  10〜12月の四半期の生産量(兵庫県分を除く。)は、62万5千285
トンとほぼ前年並みとなった(▲0.7%、図1)。
 一方、1月のひな出荷羽数は、812万2千羽とほぼ前年同月並みとなった
(▲0.8%)。
 農林水産省統計情報部によると2月、3月、4月のひな出荷羽数を前年
の同月と比べてそれぞれ99%、96%、98%と見込んでいる。
 

1月の輸入量 ほぼ前年同月並み
 1月の輸入量(殻付き換算)は、4千693トンと前年同月をかなり上回
った(11.6%)。1月までの6年度の累計をみると、前年同期に比べやや
増加しているが(4.5%)、輸入品目別にみると、主に菓子類の原料に使
われる卵黄粉や、マヨネーズの原料等に使用される凍結卵黄等の輸入が増
加している。
1月の卸売価格 堅調に推移
 1月の卸売り価格は、中旬以降、入荷量が前年に比べ少なかったことや、
関係者によれば、年始の滞貨が例年より若干早く消化されたことから、堅
調に推移し、184円/kgとなった(26.9%)。
 2月の卸売り価格(東京全農M規格・速報)は、阪神・淡路大震災の影
響により、宴会や外食が自粛されていること、また、年末に強制換羽が行
われた成鶏が、卵を生み始めることから、初旬から中旬にかけて一時的に
弱含みとなったが、下旬からは一転して堅調に推移し、190円/kgとなった
(図2)。
 今月のトピックス
特売の回数は少なかった鶏卵
 農林水産省食品流通局調査による平成6年の食品の特売実施率(量販店
のみ)をみると、公表されている畜産物の食品の中では、鶏卵が一番低か
った。畜産物のうち生鮮食料品については、輸入牛肉が一番高く(単純平
均で39.5%)、次いで国産牛肉(34.6%)と豚肉(34.2%)、鶏卵(28.
9%)の順であった(図3)。
 また、畜産物のうち加工食品の特売実施率については、卵を原料とする
マヨネーズが高く(56.0%)、牛乳(45.0%)を大きく上回っている。

  

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