◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

健全な公共放牧地の経営を目指して

(岩手県 笹村 正)

  岩手県一関市にある須川牧場は岩手県南部の西磐井地域唯一の公共牧場であ
る。 
 
  この牧場は、 昭和39年に開設され、 当地域の1市2町と各農協の共同で運営
され、 乳用牛と肉用牛を放牧しているが、 昭和60年当時は、 放牧頭数の減少が
著しく赤字経営にあえいでいた。 
 
  放牧による生産コストの低減と乾草供給による飼養規模の拡大が、 地域全体
の畜産の活性化の要であり、 それには公共牧場の経営の健全化が第一であると
の考えから、 平成元年度より地域畜産総合活性化対策事業に取り組んできた。 
 
  放牧初期の事故を低減するためには放牧前の農家での飼養改善が重要と考え、 
運動のためのパドックと粗飼料確保のための簡易サイロの設置を推進した。 次
に、 牧場に牛を観察できる追い込み場を整備し、 繁殖成績の向上と事故防止の
ため毎月の定期検診等を実施すると共に、 これらをコンピューター管理した。 

 また、 牧養力と乾草供給能力の向上のため、 土層を切り出し反転する作業機
(プラウ)を装備した大型トラクターを導入し、 毎年計画的に草地の簡易更新を
実施してきた。 さらに、 これらの取り組みの集大成として意欲ある農家に対し
、 増頭用の簡易ビニールハウス畜舎の導入を推進している。 

 この結果、 管内農家の理解も深まり、 最近では放牧頭数が大幅に増加すると
共に牧場の経営も著しく好転し、 各市町からの補助金等に依存している現状は
変わらないが単年度では赤字を解消するに至っている。
 
 今後は、 牧場管理員の確保のため、 周年雇用を実現すべく、 冬期預託事業や
不妊牛のリハビリ預託等を充実させていく計画である。

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