◎地域便り


新しい豚の育種技術開発の試み

群馬県/湊 和之
 群馬県畜産試験場では農水省畜産試験場との共同研究で、 「DNAマーカーを用い
た新しい育種技術の開発試験」 を平成6年度から実施している。 これは、 「マイ
クロサテライト」 とよばれるDNA上にあるマーカーと、 豚の経済形質に関係する
遺伝子との関連性を検討するものである。 マーカーと経済形質に関する遺伝子と
の関係が確認されれば、 それを今後の育種技術に利用する計画である。 

 この研究を始めるには、 まず対象となる経済形質を決めることが重要になる。 
本県では肉の脂肪の品質等を対象とした。 資源家系を作るため、 ランドレース種
と以前から凍結精液や肉質などの研究で取り組んでいた 「イノシシ」 を用いた。 
なお、 同じような共同研究をしている他の県では、 狙いとしている経済形質が異
なり、 子がたくさん生まれる形質を持つ 「中国豚」 や肌質が人間に近い 「ミニブ
タ」 を用いて家系を作出している例がある。 

 平成6年6月からイノシシの凍結精液を用いてランドレース種への交配を開始
し、 平成7年初めには雑種第一世代 (F1) を、 平成8年の春からF1同志のかけ
あわせによる雑種第二世代 (F2) の生産を開始した。 現在まで8腹のF1のかけ
あわせによる子豚 (F2) が得られたが、 写真のように今年7月に生まれた兄妹
交配産子では、 イノシシ様の毛色をした子豚も見られた。 

 今後は、 できるだけ多くのF2を生産して、 DNAサンプルからマーカーの分析を
行い、 発育、 肉質、 脂肪の各種検査も行いながら、 DNAマーカーと発見された経
済形質の関連性すなわち 「連鎖」 を検討していく計画である。 これが実用化され
れば、 有益な経済形質を操作することにより、 一層味のよい豚肉の生産が可能に
なると考えている。

【白豚の中にイノシシ模様の子豚が一匹】


元のページに戻る