◎地域便り


灸で繁殖改善に取り組む和牛研究会

鳥取県/朝日 等治 (とうじ)
 鳥取県中部の山あいの町東伯郡関金 (せきがね) 町は、 良質米をはじめ梨、 酪
農、 肉用牛、 養豚など多彩な作目を生産する農畜産の町だ。 

 JA関金 (せきがね) 町和牛部 (部員数72名) のうち15名の部員で組織する和牛
繁殖研究会は、 NOSAI鳥取 中部基幹家畜診療所 木原獣医師の指導を受け、 受
胎率の向上を図るため灸の利用に積極的に取り組んでいる。 

 これは、 町内の繁殖牛飼養農家から 「発情が微弱ではっきりしない」 や 「エサ
の食いが悪い」 また、 「分娩後、 牛が起立しない」 など繁殖障害、 食欲不振を訴
える声が高まったため、 研究会員が疾病ごとのツボを習得、 治療を実行している。 
その結果、 順調に発情し、 種付けが行われるようになった。 

 使用するもぐさは、 薬局などで市販されているもので、 大きさは丸めてピンポ
ン玉より一回り小さくする。 重さにして2〜2.5グラム。 ツボにはみそを塗り、 
その上にもぐさの玉を乗せて火をつける。 灸をする時間は1回で10分ほど。 後は
牛の様子を見ながら回数を調整する。 

 町内でも経験豊かなのは、 繁殖雌牛70頭を飼養する県内No.2の大規模農家、
蔵富登喜夫さん (59才)。 蔵富さんは奥さんの善子 (よしこ) さんと夫婦二人で
和牛経営に取り組んでいる。 

  「以前から牛の疾病治療に 『灸』 はどうかと、 興味をもっており、 実際にや
ってみると意外と簡単でした。 初めての時は暴れた牛も、 2回目ともなるとおと
なしくしているので、 私たち農家でも容易にできます」 と話している。 

 和牛繁殖研究会の日山会長も 「牛によって個体差はありますが、 どこが疾病の
ツボなのか一度覚えてしまえば何も難しいことはない。 簡単な治療法として町内
の和牛農家に普及させたい」 と述べている。

【お灸治療のベテラン蔵富さん夫妻】


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