◎地域便り


環境保全への配慮とゆとりある養豚経営の実践

鹿児島県/上山 勝行
 鹿児島県肝属 (きもつき) 郡高山町で母豚120頭の養豚一貫経営を営む福元和
典さんは、 豚舎から排出されるふん尿の有効利用に努め、 環境保全型農業の実践
に積極的に取り組んでいる。 

 ふん尿は、 芝や甘藷、 飼料作物などを作付する近隣農家の畑にバキュームカー
で還元され、 作物に応じてバキュームカーの散布ノズルの調節により散布量を調
整したり、 酵素剤 (発酵を促進させ、 消臭効果のある土壌菌の一種) を添加する
などの工夫をしている。 芝やサトイモには10アール当たり10トンとやや濃く、 甘
藷や飼料作物には10アール当たり4トンとやや薄めに散布している。 散布後は農
家にすばやく耕うんしてもらい悪臭防止に努めている。 農家からは、 無料のうえ
作物の生育が非常に良いと評判で引き合いが多く、 今ではふん尿が不足している
状況である。 

 さらに福元さんは1週間の作業を綿密に計画し、 家族3人 (本人、 妻、 息子) 
で以下に示すウィークリー経営を実践し、 ゆとりある養豚経営を実現している。 

 1週間の作業工程は、 月曜日 「子豚移動」、 火曜日 「精液採取と肉豚出荷」、 水・
木曜日 「交配 (全頭人工授精) 」、 金曜日 「離乳・肉豚出荷」 で、 土・日曜日は
交代で休日としている。 週末には、 福元さんは趣味の庭木の手入れ、 奥さんは温
泉へ、 後継者の息子さんはドライブと多忙なようである。 また、 毎月20日にそれ
ぞれに給料が現金で支払われ、 ボーナスも年2回支給されている。 

 経営管理については、 奥さんが詳細に記帳したデータを息子さんがパソコンに
入力し、 月1回のミーティングで経営状況の把握と改善に努めている。 その甲斐
あって、 母豚1頭当たりの肉豚仕上頭数は22.4頭 (県平均20.2頭) と成績は年々
向上している。 

 福元さんは、 「ゆとりある畜産経営に加え、 経営管理のための記帳を重視し、今
の状態に満足することなく常に経営改善に努めること。 そして、 環境に配慮した
農業をしていかないことには、 これからは厳しいだろう」 と話す。 今後は、 経営
の法人化、 繁殖母豚の品種の改善、 これまで以上の環境保全対策 (酵素剤の効率
的利用) を考えている。 

 一番の問題は 「よかにせ (息子) の嫁探しだろうね」 と福元さんは笑いながら
話すが、 隣の 「よかにせ」 からは 「そんな心配はいらん」 と頼もしい答えがすぐ
に返ってきた。

【福元ファミリー】

【分娩豚舎と後継者(息子さん)】


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