◎地域便り


牛胚の性判別の実用化に向けて

岩手県 小野寺勉

 牛の雌雄産み分け技術は、 生産能力の高い雌牛から確実に後継牛を生産し、 こ

れ以外の後継牛を得る必要のない雌牛からは肥育効率が高い雄牛等を計画的に生

産することを可能にすることから、 酪農・肉用牛経営上のメリットが極めて大き

い技術である。 



 このため、 岩手県では平成6年度から国庫補助事業を導入し、 県畜産試験場が

農家の協力を得て牛の雌雄産み分け技術の開発普及に取り組んできた。 



 牛胚の性判別は、 特定の遺伝子断片を短時間に増幅するPCR法で畜産試験場が

診断しており、 これまで72個の胚について診断し、 うち70個が性判別でき、 97%

と高い判別率を確保できた。 



 また、 性判別できた胚のうち品質の良い胚22個を県内農家で飼養されている受

胚牛に移植した結果、 受胎率は68%と高く、 実用性の高い凍結胚においても新鮮

胚と遜色なかった。 更に、 生産された子牛の性と移植前に雌雄判別した性の一致

率は、 86%と高い値であった。 



 このような好成績から、 性判別技術を利用した酪農家は、 自己の牛群改良、 低

コスト生産等の点で、 今後のフィールド普及の拡大に期待を寄せている。 



 また、 畜産試験場では、 現在、 本技術の一層の実用化を目指して、 雌雄判別さ

れた胚を凍結する手法の開発に取り組んでいるところである。 


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