◎地域便り


周年放牧への挑戦−放牧期間延長技術を生かして−

熊本県 那須利八

 九州の中央にそびえる活火山 「阿蘇」 の内側とそれを囲む外輪山 (カルデラ) 

は、 約46,000ヘクタールの山林原野を有し、 そのうち改良草地を含む約25,000ヘ

クタールが、 採草、 放牧に利用されている。 放牧は、 例年4月上旬から11月末ま

での約240日間行われ、 その放牧風景は観光資源として、 多くの人々の目を楽し

ませている。 



【地域の期待を担う肥後のあか牛】
 阿蘇地域は西南暖地ながら岩手県盛岡近辺の気候と類似した気象条件である。 低緯度ながら、 標高800メートル前後の寒地型牧草の生育適地であり、 東北、 北 海道の草地畜産地帯よりも牧草生育期間が40日以上も長い。 また2、 3日で融雪 するため根雪期間もほとんどない。 これらの特性を生かしながら、 放牧期間延長 技術 (A・S・P方式:夏から初秋にかけて、 牧草を立毛のまま備蓄し、 初冬から 冬にかけて放牧する。 ) を導入し、 従来の放牧日数よりさらに30〜50日 (1月下 旬頃まで) 、 放牧期間を延長している牧場が5牧場程度ある。 平成7年度はさら に周年放牧を実施しようと3牧場が取り組んでいる。  平成3年度に阿蘇農業改良普及所が実施した生産費調査の結果では、 阿蘇従来 型 (放牧240日間) を100とすると放牧期間延長型 (放牧265日間) が85%、 親子 放牧周年型が70%と生産コストを下げる結果となり、 所得率も従来型が16%に対 して、 放牧期間延長、 周年放牧型は35%〜38%と高いものとなっている。  また放牧期間延長や周年放牧は、 舎飼に比べ労働時間が約50%も少なくてすみ、 複合経営の多い当地域においては、 水稲・園芸等との労働競合も回避できるため、 複合経営の安定や草資源の有効利用等に大いに期待されている。  この飼養方式は今後の肉用牛経営の活性化につながるものと、 地域の期待を背 負いながら、 厳しい寒さの中でモーやるしかないと 「肥後のあか牛」 は草を食ん でいる。
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